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国連広報センター・根本所長が明かすSDGsの現在 コロナ禍で余儀なくされた「後退」と「大転換」への決意

国連広報センター・根本所長が明かすSDGsの現在 コロナ禍で余儀なくされた「後退」と「大転換」への決意

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持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」をリスナーとともに学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』の第5弾が放送され、国連広報センター(UNIC)所長の根本かおるさんが有識者ゲストとして出演。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsについて、国連としての取り組みや新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受ける現状、今後の展望をニッポン放送の新行市佳アナウンサーが聞いた。



国連広報センターとは、国連の活動全般にわたる広報活動を行うため世界の約60か国に設置されている組織で、通称はUNIC(ユニック)。日本には1958年4月に東京に設置され、日本のセンターは1958年4月に設置され、日本語資料の作成、記者会見やメディア・インタビュー設定、イベントの企画・開催など幅広い広報活動を展開している。ここで現在、所長を務めるのが根本さんだ。

兵庫出身で東大法学部を卒業後、テレビ朝日のアナウンサー、報道記者を経て、米コロンビア大で国際関係修士号を取得。1996年から2011年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員としてトルコ・ネパールなどで難民援助の最前線で支援活動にあたり、ジュネーブ本部での制作立案・民間部門からの活動資金調達なども手掛けた。国連世界食糧計画(WFP)の広報官などを歴任し、フリージャーナリストを経て2013年から現職と国際舞台で活躍している。

新行 「もともとはテレビ局のアナウンサーだったんですね。アナウンサーになろうと思った理由はなんだったのでしょう」

根本 「大学時代に文化放送のDJの仕事をすることがあったのですが、そこで自分を表現する仕事というものがあるのだと身をもって体験したわけです。それが最初のキッカケで、まずはマスコミに就職したというところです」

新行 「報道記者勤務を経て、米国のコロンビア大に留学されたということですが、この経緯は」

根本 「私は関西出身で、アナウンサーとして関西イントネーションを抜くのにすごく苦労して、自分はアナウンサーに向いていないなと思ったんです。それと同時に、自分自身は足で稼いで取材して、それを自分で伝える。こっちの方が向いているなと思って、希望して報道局に異動させてもらいました。ただ当時、日米貿易摩擦が非常に重要な政治課題になっていて、それを担当記者として取材していたのですが、アメリカのことを専門に勉強した訳でもないし、あまり知らない自分がしたり顔で解説している。そうした状況にもどかしさを感じ、アメリカで暮らして勉強して、専門性をつけて、記者として、あるいは報道で頑張っていきたい思いがあって、休職させてもらって留学をしたんです。留学期間中に国連の難民支援の仕事と出会って、こういう仕事があるのかと思って、それで一念発起して国連に入る試験を受けて、テレビ朝日側には謝って転職をしたという経緯があります」

新行 「最初、その国連で働かれていた時はどういったお仕事を」

根本 「国連難民高等弁務官事務所が私の振り出しだったんですけれども、トルコのアンカラという町で、自分を難民として守ってほしいと近隣国からやってくる難民申請者の話を聞き取り調査して、国際難民法でいうところの難民として保護するに値するかどうか審査をする。そういう仕事が始まりでした」

新行 「そして、現在は国連広報センターでお仕事をされている。ここではどういったことを」

根本 「平たく言うと、ニューヨークにある国連本部にとっての日本における大使館のような役割ですね。国連の活動であったり、国連の場で議論されている地球規模課題であったりを日本語で日本の方々に分かりやすく伝えて、日本の方々にも国連での議論に関わってもらう。そういう橋渡し的な役割をしています。国連には英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、中国語の6つの公用語があり、これらの言葉であれば自動的に国連の公式文書などが訳されて発信されます。日本語は残念ながら公用語ではないので、私たち国連広報センターが、これこそは知ってもらいたい、知らなきゃいけないという重要なものをピックアップして、日本語に訳して発信する。非常に重要な役割だと思っています。同時に日本国内に拠点を構えている29の国連の事務所を広報面で調整して、メッセージを発信していく旗振りの役割もあります」

その「これこそは知ってもらいたい、知らなきゃいけない重要なもの」の一つが193の国連全加盟国が2015年に採択したSDGsといえる。その発信のため国連と協力関係に入るメディアを対象に「SDGメディア・コンパクト」という枠組を2018年9月に制定作った。ニッポン放送も今年4月に合意文書に署名した。

そもそもSDGsは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、17のゴール・169のターゲットから構成されるもの。根本さんは 「2016年1月から実施され、今年で5年目。ゴールイヤー、最終年まであと10年しかないということで今年の初めからSDGs実現のための『行動の10年』というものが始まりました」と説明する。しかし「10年」のスタートは想定外の危機で大きく揺れることになる。

根本 「SDGsの達成状況、推進状況については新型コロナウイルス感染症が拡大する前から大きく軌道を外れてしまっていました。もちろん前進もありましたが、気の遠くなるような格差や、どんどん悪化する一方の気候変動、気候危機、それから資金不足もある。こういったことが重なって、大きく実現に向けた軌道から外れてしまっていました。だからこそ、昨年9月の国連総会で、2020年の初めから行動の10年でアクセルをグッと踏み込もうと言っていたわけです。それが、今年に入ってから新型コロナウイルス感染症が世界的にどんどん拡大してしまって、多くは後退せざるを得なくなってしまった。今回のコロナウイルス感染症で、もちろん多くの人たちが打撃を受けたわけですけれども、特に直撃しているのは、これまでギリギリの生活をしていた人たちです。その人たちをコロナは容赦なく襲っている。そういう状況の中でSDGsの『誰人取り残さない』という大原則が、お題目ではなく、本当に実社会で大切なんだと目に見えて分かったと思うんです。これまでのような積み上げ型で物事を変えていく形ではなく、大転換する、ひっくり返すくらいの思いで大胆に転換する。そういう機運が日本でも、世界でも生まれつつあります。もちろん今はピンチです。大ピンチです。でも、ピンチをピンチとして終わらせてしまうのではなくて、ピンチをチャンスに変える。そのチャンスに変える中で、そもそもおかしかったシステムも全部ひっくるめて大転換する。そういうことで乗り越えていければというところがあります」

新行 「ピンチをチャンスに変えるといった意味で、これはチャンスになるかもしれないという部分は根本さんから見てどのようなことがありますか」

根本 「一つは日本でも働き方改革、在宅勤務が推奨されて、デジタル・トランスフォーメーションが一気に進んだことです。学校では休校措置が長引く中で、出来る学校はオンライン授業に切り替えたりしていきました。ただ、全ての学校、全ての家庭がそれに切り替えられるわけではない。そういうご家庭の、教育現場の事情も踏まえながら、大きく子供たちの教育のデジタル化を進める。これがピンチをチャンスに・・・のいい例ではないかと思います。昔の当たり前だった暮らし、あるいは経済の在り方にそのまま戻ることはあり得ない。国連では“オールドノーマル”といっていますが、これに戻ることは許されない。なぜなら“オールドノーマル”こそがコロナ危機、ギリギリの生活をしていた人たちを一気に困窮に陥れたわけですから。身近な生活様式だけではなく “ニューノーマル”に大転換していかなければいけないと考えています」

一方で、日本国内でもSDGsの進捗について危機感があることを根本さんは明かす。

「SDGsの推進に全閣僚が関わり、安倍首相を本部長にして進めている会議体として『SDGs推進本部』というものがあります。この『SDGs推進本部』に対して助言などをする有識者レベルの『SDGs推進円卓会議』のメンバーは私も含めて大変強い危機感を持ちました。コロナ対策、コロナからの復興において“誰も置き去りにしない”ということも含めて対策・戦略が必要だという思いから7月30日に緊急提言をまとめて政府側に提出したところです。世界の途上国での感染拡大を抑え込まないと、コロナはまわりまわって日本を含めてまた先進国に戻ってきてしまいますから、感染対策での国際協力の必要性もあります。そういったところを今一度しっかり考えて、アクションプランに入れてほしいと言っています」

政府のSDGs推進本部が昨年12月20日に改定した「SDGsの実施方針」では「地球規模で人やモノ、資本が移動するグローバル経済の下では、一国の経済危機が瞬時に他国に連鎖するのと同様、気候変動、自然災害、感染症といった地球規模の課題もグローバルに連鎖して発生し、経済成長や社会問題にも波及して深刻な影響を及ぼす時代になってきている」と、まさにコロナ禍を“予言”するかのように、感染症への危機感が示されていた。SDGsの定める「17のゴール」の中には「3.すべての人に健康と福祉を」といった直接的にSDGsに関わる項目も存在する。しかし、それでも対応しきれなかった想定外の事態。SDGsのゴールが互いにつながりを持つように、コロナ禍には、1つのゴールだけを見ていても対応できないことを根本さんは強調する。

「元々、コロナは健康・保険・医療の分野での危機だったわけです。SDGsの『17のゴール』でいえば、ゴール3のグローバルヘルスに関係するところだと思いますけれども、ここが立ち行かなくなった。そうすると、他のゴールに関係する分野、私たちの社会・経済に関係する暮らしの成り立ち全部に打撃を与える人類の危機になったわけです。一つが全てに繋がっているんだということが露呈した危機だと思うんです。ですので、目の前の分野だけを見るのではなく、いろいろなところへの波及効果も念頭に置きながら、幅広い対応が必要になる。こういうところが基本になるかと思っています」

さらに、根本さんは今後の国連の動きについて説明した。

「9月は国連にとって、とても大切な月です。新しい国連総会の会期が始まる9月は、普通であれば世界の首脳、大統領や首相がニューヨークに集結して、演説合戦をする『ハイレベルウィーク』というものがありますが、今年はコロナの影響でほとんどがバーチャルになります。ただ、今年の国連創設75周年という非常に重要な節目を記念する上でも、この『ハイレベルウィーク』は大切になってきます。そしてSDGsのことを考える様々な会合が同時に開かれます。SDGsを進める上でも国連のこれまでの75年の歩み、これからさらに創設100年へと齢を重ねる上でも、今年は非常に重要になります。10月24日は国連創設の日、記念日で国連デーです。ややもすると一国主義あるいは二国間で物事を決めてしまおうという動きが強まってきましたが、多国間で物事を決める、多国間で共通の価値、世界の平和、世界の繁栄のために力を合わせるという意識の結集、努力の結集ということが、この75周年という節目で出来ればと思います。コロナは大変な苦しみを私たちに与えましたけれど、同時にこれではいけないという共通認識ももたらすようになりました。ですからピンチをチャンスにして、このタイミングを機会として捉えて、ぐいぐい引っ張っていきたいと思います」

そして、最後に根本さんは日本からの国連への声に期待していることも明かした。

「創設75周年ということで国連はアンケートを実施しています。世界中から回答が集まっていますが、国別でいうと日本が世界で最も多く回答数が寄せられている国々の一つです。国連広報センターのWEBサイトを見ていただくと、日本語でお答えいただけるアンケートがあります。ぜひ、皆さんの声も寄せてもらいたいなと思います」

新型コロナウイルスの影響で世界が危機的状況にある中、国連はSDGsの精神とともに“ニューノーマル”な世界への転換・復興を強力に進めようとしている。

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