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地球規模の気候変動を身近なこととして捉えるには?適応策の重要性

地球規模の気候変動を身近なこととして捉えるには?適応策の重要性

#OPINION
  • 住み続けられるまちづくりを
  • 気候変動に具体的な対策を

みなさん、気候変動問題と言われると何をイメージしますか?「地球温暖化」、「海面上昇」といったワードを思い起こす人が多いかもしれません。しかし、気候変動は予想以上に私たちの生活に影響を及ぼしています。

――自殺率にも影響を与える気候変動問題

米バーモンド大学が実施した調査では、低所得国に住む10万人以上の5歳未満児の食事について、「気温上昇」が食事の質を著しく低下させていることが分かっています。また、米カリフォルニア大学による研究者による論文では、インドで農家を営む人の自殺率が温暖化によって上昇しているという研究結果も。さらには、異常気象や大気汚染を通じた健康への影響に対して警鐘を鳴らす研究もあり、気候変動と私たちの生活は密接につながっていることが見て取れます。

――気候変動対策には「緩和策」と「適応策」がある

ここで、気候変動による影響について整理してみましょう。気候変動の影響は、気候外力(気温上昇、豪雨の増加といった現象)・抵抗力(気候外力に対する対応力)の関係性によって決定されます。
気候変動に対する対策には2種類あります。1つ目が、気候外力を緩和する緩和策、2つ目が脆弱性(抵抗力)を改善する適応策です。緩和策は、温室効果ガスの排出削減を目指した対策で、例えば排出量を削減する国際的な取り決め、省エネルギー技術、二酸化炭素固定技術があります。これらは、「気候変動対策」と聞くと耳にすることが多いかもしれません。
一方で適応策は、沿岸地域で温暖化による海面上昇へ対応するための堤防の設置、暑さに対応するための熱中症対策、災害が起こった場合に対応するための事業継続化計画、天候不順に対応するための農作物の品種改良、災害が起こった場合に被害を最小限にするためのハザードマップの活用、干ばつ等が起こった場合に対応するための灌漑設備の導入が挙げられます。適応策の効果として、例えば堤防を設置することで、住民への被害を最小化することができる可能性があります。また、事前に猛暑になることが分かっていれば、薄着で過ごすよう心がけたり、体調の異変にいち早く気づいたりすることができます。農作物を将来の気候の変化に合わせて改良すれば、想定よりも早く変化が訪れた場合にも円滑に対応することができます。

――2018年までは日本になかった?「気候変動適応法(適応法)」の誕生と世界の取り組み

適応策は、7分野にわたります。「農業、森林・林業、水産業」、「水環境・水資源」、「自然生態系」、「自然災害・沿岸域」、「健康」、「産業・経済活動」、「国民生活・都市生活」です。さらに適応策自体の方法について、「政策形成」、「インフラ整備」、「普及啓発」、「金融包摂」、「人材育成」などハード面からソフト面にわたり幅広くあります。
日本だけでなく、世界で適応策の計画策定が進められています。2015年12月に策定された「パリ協定」では、適応策が内容に含められています。日本では、温室効果ガスの排出削減対策は進められていましたが、将来に関わる適応策についてのデータを集めていく上での基本的な枠組みが存在していなかったことから、2018年に気候変動適応法が策定されました。2021年2月にはEUで適応策のさらなる加速を掲げた適応戦略が作られました。しかし、先進国と途上国の間で主張の違いがあることから、統合的な枠組みについての具体的な議論は進んでこなかった経緯があります。筆者は、2019年に開催されたCOP25※に参加し、適応策についてのフレームワークについての会議にオブザーバーとして出席していましたが、途上国の代表者が強く主張している点が印象的でした。
※正式名称「国連気候念同枠組条約第25回締約国会議」2019年12月2日から15日まで、スペインのマドリードで開催された。地球温暖化をはじめとする環境問題への対処について話し合う国際会議。

また、様々な会議で先住民の人権が話題に上り、参加者である先住民の人々が、気候変動による影響を最初に受ける可能性を危惧している様子からも、適応策の重要性が高まっていることが伺えました。

図 1 COP25の本会議場での会議の様子
図 2 筆者が参加したCOP25における適応策についての会議の様子

――適応策の課題「ハザードマップ導入の効果を図ることができるか?

世界的な潮流のなかでさらなる対策が求められていますが、適応策は効果を計測することが難しいという課題があります。例えば、「災害時に備えたハザードマップを導入することで、どの程度被災者をへらすことができたか」を正しく計測することは難しいでしょう。なぜなら、全く同じ規模の災害というのは存在しませんし、その時々に人々が置かれた環境は異なるからです。適応策の効果をどのように可視化するかが、1つの課題となっています。

図 3 緩和策・適応策と気候外力・脆弱性との関係性

出典:環境省 (2015)「第5回低炭素塾(テーマ:地球温暖化 適応策の基礎)」配布資料
https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/training2014/05_training.html

適応策は、まだ私たち市民レベルまで十分に浸透しているとは言えないかもしれません。しかし、気候変動への対策はさらに求められることから、今後益々注目される分野だと言えます。適応策を始めとする気候変動対策は、様々な分野に関わっており、SDGsのそれぞれのゴールにも広く関連しています。適応策・緩和策という枠組みは、人々の生活と気候変動を結びつけるツールにもなります。日常の場面でSDGsの実践を考えた時に1つのヒントになるかもしれません。

ライター:東京大学大学院 新領域創成科学研究科 修士2年 秀島佑茉
編集:SDGs MAGAZINE

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