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剛力彩芽と学ぶ目標13・後編 気候変動対策は化石燃料文明からの“卒業”  「クライメイトライブ」に見る「声」の重要性とは

剛力彩芽と学ぶ目標13・後編 気候変動対策は化石燃料文明からの“卒業” 「クライメイトライブ」に見る「声」の重要性とは

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  • 気候変動に具体的な対策を

女優の剛力彩芽さんと持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2021年4月3日に放送された第13回はSDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」がテーマとなった。気候変動対策で個人ができることとは-。番組後半で強調されたのは、システムの変化とそれを促す「声」の重要性だった。

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SDGsを考える上で、全ての土台にもなり得る地球環境の問題。番組前半では、目標13「気候変動に具体的な対策を」に関連して、パリ協定を具体例に世界の置かれた状況に踏み込んだ。それでは、個人個人はどのようにこの気候変動に向き合えばいいのか。国立環境研究所・地球システム領域副領域長で、4月から東京大学大学院広域科学専攻客員教授を務める江守正多氏は、日本の現状について「割と無関心な人が多いかなと思っています」と指摘し、“考え方”の転換を提案した。

江守 「気候変動対策をしましょうというと、エアコンの使用を控えるとか、車に乗るのを我慢するとか、電気代が高くなって負担が増えるとか、そういう『我慢』や『負担』を考えてしまう人がどうしても多いと思います。ちょっと調べると、実はそんなことはなくて、気候変動対策は良い面もたくさんあるのですが、詳しく知らないと昔の生活に戻るみたいなイメージになりがちです。それでは、その話をしたくなくなってしまうじゃないですか。ますます関心が持ちにくくなる。そういう状態の人が日本にはまだまだ多いと思います」

では、気候変動対策における日本の実態はどのようなものなのか。剛力さんは、ドイツの環境NGOが評価した「世界の温暖化対策ランキング」で日本が45位にいるという事実を引き合いに「日本はそこまで、対策をできていないのですか」と疑問を投げかけた。

江守 「気候変動対策に消極的な国だと世界からは見られていると思いますね」

剛力 「それは、なぜですか」

江守 「まず、気候変動対策といったときに、一番大きいのはエネルギーの問題なんですね。石炭、石油など化石燃料を燃やしてエネルギーをつくるということが非常にCO2排出の大部分を占めているのですが、日本は火力発電に頼っているという現実があります。特に、石炭をまだかなり使っている。これは、もちろん2011年の東日本大震災があり、原発が全て一回止まった、そこで火力発電を増やさざるを得なかったというのも影響しています。ただ、火力発電に依存する体質から、再生可能エネルギーをどんどん増やしていく必要があるのは事実です。特に、石炭火力発電所をなるべく新しくつくってはいけないという考え方は世界の考え方としてあります。石炭は天然ガスに比べて、同じ電力をつくるのに倍くらいCO2を出してしまうので、石炭の使用量をなるべく増やしてはいけない。ただ、天然ガスを買うよりも石炭はオーストラリアなどから安定的に買ってこられるし、安い。どうしても、日本ではまだ石炭を使おうという意識が、つい最近までかなりありました。ようやく銀行などが石炭火力発電所を建てる際にお金を貸さないなどの動きが出てきて、だんだん少なくなってきていますが、そうなる前の計画だったり、既に建て始められているものだったりは、止まらない。それが海外から批判を集めています」

剛力 「海外にも火力発電所を輸出しているとか」

江守 「そうですね。日本の石炭火力発電所は、その中では効率が良いということもあり、東南アジアなど、どうしても電力が足りずに石炭火力発電を行わざるを得ないところでは、日本の技術を使ってもらった方が他の技術を使うより良いという考え方で、その技術を売っていく戦略がありました。しかし、世界から見るとそんな考え方では駄目だろうと。太陽・風力をなぜ支援しないんだという雰囲気になってきているわけです」

その流れを変えるには、どうしたらいいのか。江守氏は「常識が変わっていかないといけない」とし「今までの常識で考えていると、効率が良ければいいじゃないかとか、電気が足りない地域に安価なものを提供できるならいいじゃないかといった考え方になります。ただ、全力でCO2をゼロにしなくてはいけないところで、それはまずいという常識に変わっていかなくてはいけないのです」と続ける。

今年3月末には、気候変動やエネルギー問題専門の独立系シンクタンク・エンバーが2021年版の「グローバル・エレクトリシティー・レビュー」を発表。電力需要と供給状況に関するレポートの中で、日本は「石炭火力発電所の削減量で先進20カ国中12位」「風力・太陽光発電の増加は9位」との報告がなされた。また「世界の取り組みは全くスピード感が足りていない」とし、パリ協定の努力目標には2030年までに石炭火力発電を8割減らす必要があり、石炭火力の発電量は今後10年間にわたり毎年14%ずつ減らす必要があるとの分析結果も出たという。

江守 「簡単に言うと、石炭火力は全力で減らさなくてはいけない。全力で減らすということは、少なくとも新しく建ててはいけないということです」

剛力 「先ほどの話とは真逆を向いていかないといけない。でも、風力発電や太陽光発電は増えてはいるんですか」

江守 「日本の太陽光発電は、結構な速さで増えています。これは『再生可能エネルギー固定価格買取制度』という再生可能エネルギーの電気を電力会社が買ってくれる制度によるものです。その分、みんなが電気代を上乗せして払っているから成り立つものなのですが、これが始まって太陽光発電が儲かるようになったので、確かに増えています。ただ、自然を破壊して設備をつくるなど、問題も増えているじゃないかという指摘もあります。そこは直していかないといけません。一方、風力は環境影響評価に非常に時間がかかる日本では増加のスピードは遅く、なかなか建てられないのが実状です。今後は洋上風力といって、海の上での風力発電を一気に増やしていこうと政府が舵を切ったところですね」

「そこは進んでいるんですね」という剛力さんは、ここまで見てきた気候変動の状況や日本の課題を踏まえ、世界的に目指すべき方向について江守氏に質問した。

江守 「パリ協定の長期目標を思い出していただくといいと思います。2度より1.5度の上昇で温暖化を止めるためには、世界のCO2排出量を実質ゼロにしないといけない。そのためには、2050年前後に実質ゼロにしなくてはいけないのです。実質ゼロとは、排出量と吸収量を差し引いてゼロということですが、これをあと30年で実現しないといけない。日本では、昨年10月に菅首相が2050年に脱炭素社会の実現を目指すと宣言し、そこからエネルギー政策や産業政策が、ようやくすごい勢いで動き出したなというところではあります。アメリカもトランプ政権からバイデン政権になってパリ協定に復帰し、当然2050年の排出ゼロを目指しています。さらに、近々野心的な目標を出すだろうとも言われています。しかしながら、今の削減ペースはそのペースにはなっていない。世界の排出量は、増えるのが止まった感はありますが、まだ基本的に下がり始めていません。リーマンショックで経済がダメージを受けたときは少し減りましたが、経済の回復とともにまた戻ってしまった。昨年のコロナショックで、やはり経済がダメージを受けて、排出量が7%くらい前年比で減りましたが、これもまた元に戻ると増えてしまうかもしれない。ちゃんと人々が生活をしながら排出量を減らしていくためには、エネルギー使用量を減らすことが大事です。化石燃料中心のエネルギー社会から、太陽、風力、電気自動車、蓄電池、そういったものを中心としたシステムに世界中ガラッと入れ替えなくてはいけない。今これが始まったところです」

剛力 「再生可能エネルギーを増やすにはどうしたらいいのですか」

江守 「実は、世界のかなり多くの地域では今、太陽、風力が一番安いエネルギーになっています。これまでは高いから負担になっていたのですが、今は安いから増えている。日本はまだ石炭が安いと言っていますが、やがては安いから増えるというフェーズに入っていくと思います。ただ、環境破壊になってはいけないので、適切な規制をつくらないといけないし、送電網がちゃんとつながることが重要です。今までは原発や火力発電所のような大きい発電所が送電網の枠を取っていて、太陽光は発電所を建てても電気は送れないという問題があったのですが、『再生可能エネルギーによる電気を優先して買いますよ』というふうに変わっていく必要があるし、そういう仕組みづくりをどんどんやっていくことが必要です」

こうしたシステムの変化こそ、まさにSDGsの目標13が掲げる「気候変動の具体的な対策」につながるものとなる。最後に「未来に向けた提言」を剛力さんから求められた江守氏は、こう語気を強めた。

江守 「私がよく言うのは、今が化石燃料文明と考え、それを“卒業”しようということです。普通、この話を『脱炭素』と表現するのですが、“脱”というと嫌なものから逃げようとしている、すごく難しいことを無理してやろうとしている感じがすると思うんです。そうではなく、むしろこれは“卒業”なんじゃないかなと。“卒業”といえば自然じゃないですか。学校に行けば“卒業”するように、人類は化石燃料文明に入ったら、いつか“卒業”しないといけない。今世紀中、あと30年で“卒業”することが、今世界の目標になっている。こういうふうに考えればいいのではないかと思っています」

剛力 「学んで、地球のために何かできたら“卒業”できる。そう思うとちょっとワクワクする感じ、先に進めている感じがありますね」

江守 「温暖化対策というと江戸時代に戻るんですか、石器時代に戻るんですか、と何か戻る感じで捉えている人が多かったと思うのですが、次の未来に行くんだよということです」

剛力 「では、気候変動に対して個人個人ができることって何かありますか」

江守 「これがなかなか難しくて、グレタさんが言っているのは『個人の変化よりも、どちらかというとシステムの変化が大事』だということです。システムの変化というのは、エネルギーのつくり方、常識、ルールがガラッと変わってしまうということです。それが起きるためには、個人の変化も大事になりますが、目標はシステムの変化であって、個人の変化じゃないということを皆さんに理解していただきたいのです。節電したり、再生可能エネルギー100%の電気で契約してみたりとか、それを個人がするのは良いことですが、それで1人分のCO2の排出量が減ったからと満足していても、それを本当にみんながやらないと大きな結果にはならないですよね。だけど、本当にみんながやってくれるのを待っていると時間がかかってしまう。そういう人たちが増えていくことで、再エネを売る会社が儲かって、会社が成長して、再エネをつくっていない会社は申し訳ないけどつぶれていく。あるいは、そうならなくちゃいけないと声を上げることが大事なことだと思います。『日本に新しい石炭火力発電所をつくらないでください』『東南アジアにもつくらないでください』とメッセージを出していく。プラカードを持って街頭に立つまではいけない人も多いと思いますが、例えばツイッターでそういうツイートがあったら『いいね』を押したりとか、ネット記事をシェアしたりとか、声を上げている人を応援することが、すごく最近大事だなと思います。みんなが一人一人変わるのを待っているのでは、もう間に合わないところまで残念ながら来てしまっています。声を上げてシステムが変わることが大事なのです」

剛力 「発信することは大事なことなんですね」

江守 「政治や企業が変わらなくちゃいけないのですが、私たちが政治とか企業に『変われよ』とメッセージを出すこと。これが私たち一人一人がすべきことだと思いますね」

その「声」の一例として江守氏が紹介したのが「クライメイトライブ(Climate Live)」だ。学生が主体となり気候変動への理解と行動喚起を目的とする音楽ライブイベントで、英ロックバンド・クイーンのメンバーであるブライアン・メイの「気候変動を訴えるLive Aid(ライブエイド)のようなライブがあればぜひ参加したい。」という発言を聞いた英国の高校生が立ち上げたもの。それは世界 40 カ国に広がっており、4月24日には「クライメイトライブ・ジャパン」として日本での開催を予定している。

江守 「これを私も応援しています。日本でも“グレタ世代”といえる若い人たちが企画してやろうとしていて大注目なんです」

今回の番組を通じ、剛力さんは「勉強することも大事ですが、飛び込んでいくのも大事だと、最近すごく思っています。声を上げるのは勇気がいることですが、大事なことですよね」と感じるものがあった様子だ。大きなシステムを動かすのは「声」。一つ一つの「声」が集まったとき、SDGsは実現に向けて動き出す。

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