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世界に一つだけ、わたしのエプロン。端切れを蘇らせる「ザンタンエプロン」


この記事に該当する目標
8 働きがいも経済成長も 12 つくる責任つかう責任 17 パートナーシップで目標を達成しよう
世界に一つだけ、わたしのエプロン。端切れを蘇らせる「ザンタンエプロン」

皆さんは何か物を買うときに気にしていることはありますか?「デザインがいい」「機能性がいい」などいろんな基準があると思います。これらの基準に加えて、近年では「トレーサビリティ」という概念が普及しつつあるように、ものがつくられるまでのストーリーを知りたい、と考える人も多いかと思います。
今回は個性的な見た目の『ザンタンエプロン』がつくられたストーリーと、その魅力について迫りたいと思います!

――『ザンタンエプロン』とは

『ザンタンエプロン』は、UNIX TOKYOというオリジナルユニフォームの企画・制作・販売をしている会社から生まれたエプロン。その名の通り、衣料品などをつくる際に残ってしまう「残反(ざんたん)」を集めることでつくられたエプロンです。残反の組み合わせは一つとして同じものはなく、つくられたエプロンごとに違った個性が表れています。パッチワークのような表情が印象的ですね!

――小さな縫製工場から届いたSOS

このエプロンが作られるきっかけとなったのは、青森県の浪岡(2005年までは浪岡町として、現在は青森市と統合されています)にある縫製工場から1通のメールが来たことでした。

「コロナ禍で仕事がほとんどなくなってしまった。何とか仕事を出して欲しい」

日本の縫製工場の数は1990年から2020年までの30年間で10分の1まで減少。現在国内で販売されている洋服の98%は海外の工場でつくられているそうです。日本の職人たちが培ってきた丁寧なモノづくりの精神と技術は確かにあるものの、海外の工場では単一製品を大量生産するシステムが整っており、「早くて安い」洋服づくりができます。納期の速さでもコスト面でも、日本の縫製工場は海外に負けてしまうのです。
浪岡の縫製工場は職人が十名程という小さなところ。国内の縫製工場の中でも特に小規模の工場は、仕事がほとんどなくなるという苦境に立たされてしまっています。

――生地メーカーの声

一方洋服などを作るための生地メーカーでは、商品化されなかった見本生地やB品の生地、端切れなどが大量に出てしまうそうです。1着分に満たない小さな生地で、ともすれば捨てられてしまいます。UNIX TOKYOでは、それらの生地を使ってもう一度商品へと蘇らせることができないか、ということを考えていたそうです。
これはSDGsの17の目標のうち、「8. 働きがいも経済成長も」、「12. つくる責任 つかう責任」、「17. パートナーシップで目標を達成しよう」の3つの目標に入りそうですね!

――職人も環境も守るエプロン

浪岡の縫製工場に仕事を出してあげることで日本の優れたものづくりの技術を守りたい。生地メーカーから大量に出る残反を、捨てずに生かしてあげたい。そんな思いが合わさったことで、『ザンタンエプロン』が誕生しました。
『ザンタンエプロン』はムダのないシンプルなデザインながら、残反の組み合わせによってそれぞれの個性が出るという不思議な印象。このエプロンが料理や家事などの日常のちょっとしたシーンを彩ってくれそうですね!キッズサイズもあるので、お子さんがいるご家庭でも取り入れることができますよ。
また、『ザンタンエプロン』は販売価格のうち5%を環境保護のために活動している団体へ寄付をしているそうです。残反を生かすだけでなく、寄付によっても環境を守ろうとしています。
『ザンタンエプロン』がつくられるまでのストーリーや職人さんなどに思いを馳せながら、「世界にひとつだけのエプロン」を身につけておうち時間を過ごすのも、わたしたちにとって身近に取り入れやすいSDGsかもしれませんね。

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執筆:慶應義塾大学 政策・メディア研究科 石渡萌生
学部の時に所属していたサークルでは富士山のゴミ問題に対して、「清掃活動をすることを通じて自分たちの日常生活を見直す」というテーマで清掃ボランティア活動を企画し、引率。その他、中山間地域で建築のリノベーションコンペを企画し、地域の方と学生で地域で働く方のためのシェアハウスを施工。
現在はサステナブルな建築設計の手法について研究をするために、大学院で関連する環境系の講義を多く履修している。また、外部で実施されているSDGs(主に気候変動に対して)に関連するオンラインセミナー・ミーティングなどに参加したり、持続するためのデザインを追求し発信するために、コンペティションに参加。

編集:SDGs MAGAZINE