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夏休みに剛力彩芽と考える企業が取り組む「SDGs教育」

夏休みに剛力彩芽と考える企業が取り組む「SDGs教育」

#RADIO

女優、剛力彩芽さんと持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2021年8月11日放送された第17回は夏休みにちなんで「学生とSDGs」がテーマとなった。サステナビリティ活動の一環として、小中高校生を対象とした学習プログラムなどを展開している株式会社ファーストリテイリング コーポレート広報部ソーシャルコミュニケーションチームリーダーのシェルバ英子さんをゲストに招き、剛力さんが“ミスターSDGs”こと慶応大学大学院教授で同大学SFC研究所xSDG・ラボ代表を務める蟹江憲史氏とともに、その取り組みについて聞いた。

ユニクロ、ジーユー、セオリーなどのブランドで知られるファーストリテイリング。事業を世界で展開し、「服のチカラを、社会のチカラに。」というサステナビリティステートメントを掲げる同社にとって、SDGsは経営戦略の一つとしても、企業としての社会的な使命の観点からも、重要なものとなっている。2001年に「社会貢献室」を発足して以来、社会課題を解決するためのさまざまな活動を行ってきた同社の取り組みについて、広報部の中でもサステナビリティに特化したチームを率いるシェルバさんが紹介した。

剛力 「まずシェルバさんのお仕事について教えてください」

シェルバ 「所属は広報部なのですが、私のチームはソーシャルコミュニケーションということで、特にサステナビリティの情報発信を中心に行うチームになっています」

剛力 「広報部の中でもミッションが違う」

シェルバ 「そうですね。サステナビリティの情報発信に特化したチームになっています」

剛力 「そういう企業は増えているのですか」

蟹江 「広報部の中に、そういうところが入っている企業が多くなっています」

シェルバ 「実は、昨年8月まではサステナビリティ部の中に入っていたのですが、どうしても部の中に入ると“自分たちの都合”で『これは、まだ言えない』とか、なかなか俯瞰して見えない部分があったので、あえて外に出したということです」

そんなファーストリテイリングが、力を入れている取り組みの一つが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所) と行う「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」という小・中・高校生が対象の参加型の学習プログラムだ。社員による出張授業を受けた後、子どもたちが主体となって、校内や地域で着なくなった子ども服を回収。回収した服を難民などの服を必要とする人々に届けるもので、コロナ下では従来の「出張授業」のほか、「映像授業」「オンライン授業」でも実施されている。

剛力 「このプロジェクトにはどのような意味が込められているのでしょうか」

シェルバ 「世界で起きている難民の問題ですとか、店頭で行っている服を回収するプログラムなどの取り組みを社員が講師となって子どもたちに伝えて、そのあと子どもたち自身が地域の人たちに呼び掛けるなどして、子ども服を回収し、届けるというプログラムです」
※新型コロナウイルス感染症対策のため、今年度は広範囲での回収呼びかけ・活動を避け、学校内での活動をお願いしております。

剛力 「学生の時に、そういった取り組みに触れられると良いですね。社会貢献を考えるきっかけになります」

蟹江 「UNHCRとともに取り組むということですか」

シェルバ 「そうです。子ども服を集める取り組みを参加校の子どもたちにご協力いただき、それを実際に難民キャンプなどに届けるところをUNHCRにお手伝いいただいています。当初はUNCHRも一緒に授業に参加していただいたのですが、どんどん活動が大きくなって、それでは参加希望校の全てに対応しきれないということで、現在はユニクロをはじめとしたファーストリテイリンググループの社員が “語り部”として語れるようになって学校を訪問するという流れになっています」

剛力 「どれくらいの規模になっているのですか」

シェルバ 「2021年度は627校に参加していただきました。年々参加校が増え、2017年度以降は毎年300校以上の先生から応募があります」

出張授業ではSDGsの概要やリサイクルの意義、服にはどのようなチカラがあるのか、回収した服の活用法、写真や映像を、パワーポイントを使って60分ほどで説明。その後、子どもたちの役割分担を決め、ポスターや回収ボックスを作成したり、校内放送や全校集会で学校内に呼びかけたり、近隣の小学校や幼稚園を訪問したりすることで、衣服回収への協力を募るという流れになっている。実際に難民キャンプに寄贈された様子がフォトレポートで届くなど、子どもたちが、自分たちにもできる社会貢献活動があることに気付くきっかけとなるプログラムとなっている。

剛力 「いつ頃から始まったのですか」

シェルバ 「2013年からです。当時、全商品のリサイクル活動は店頭でやっていたのですが、その取り組みを知った、とある都立高校の先生から『ぜひ、これを自分の学校でやってもらえないか』というお声掛けをいただき、東京都からスタートしました。その後、どんどん口コミで広がっていって、全国に拡大したという形です」

剛力 「立ち上げからシェルバさんが関わられているんですか」

シェルバ 「そうですね」

蟹江 「何人くらいの社員が授業をしているのですか」

シェルバ 「今だと627校に対して、444人以上が全国に講師として派遣されています。それだけの規模のものにようやくなってきました」

蟹江 「それはすごいですね。それだけの人が、この活動を理解していないと駄目ということですからね。よく、SDGsの社内浸透をどうすれば良いのかということを聞かれるのですが、こういう形が一番いいんじゃないでしょうか。実際に活動するとなると、勉強せざるを得ないですよね」

シェルバ 「一石二鳥です」

剛力
 「社員の意識も変わりますね」

シェルバ
 「また、子どもたちは純粋に受け取ってくださる。そのパワーって凄いなと思っています。私たちが思いもよらないようなアクション、アイデアが出てくるんです。1学期に私たちが訪問して、2学期に体育祭や文化祭を使って地域の人に呼び掛けるという形が多いのですが、最終的に回収した衣服を体育館に集めて、『1000何枚集めました』という報告をしっかりとしていただいたりだとか、SNSで投稿したりだとか、クリエイティブなアイデアでいろいろなことを工夫されている。なかなか大人ではできないこともあり、私たちも『こういう伝え方ができるね』という発見などがあり、次の連鎖につながることが多々ありますね」

剛力
 「発信力がすごい」

蟹江
 「今は、みんなが自分で発信できる時代ですからね」

シェルバ 「2006年から、単に集めた服をUNCHRに届けてもらうことではなく、われわれ従業員も実際に現地に行って、それが転売などされないできちんと届いているかを確認するということもしています。私自身もアフリカ、アジアの15カ国ほどを訪問させていただき、現地で服の持つ力、暑さ寒さをしのぐだけではなく、人としての尊厳につながる現実などを見てきました。ある難民キャンプだと、服がぼろぼろだから学校に行けないというお子さんもいて、服をお渡ししたことによって学校に行くきっかけになるということもありました。古着の一枚が、とても役立つ。それを感じることで、また授業でもお伝えできるということにもなります」

蟹江 「子どもたちって、些細なことで変わってくるものですよね。学校にトイレがないから行きたくないとか、そうした問題もあります。結構、トイレを普及させることが子どもを学校に行かせるために重要だったりするんです。意外かもしれませんが」

剛力 「服の力は大きいということですね」

さらに、ファーストリテイリングでは2020年に新たな次世代教育プログラム「UNSTEREOTYPE School(アンステレオタイプ・スクール)」プロジェクトをスタートしたという。

シェルバ 「ステレオタイプというのは、つまり固定観念です。それをなくす取り組みを教育のプログラムとして実施しようということで、大学生や専門学校生を対象に行っています。まだトライアル的にやっているものなのですが、今年は、服飾系の専門学校であるバンタンの学生さんと一緒に『固定観念を打ち砕いて、自分らしい服を選ぶって何だろう』とか、自分らしく生きることにつながる思考の訓練として一緒にワークショップを実施しながら、この半年くらいで取り組んでいます。ユニクロ銀座店では、その成果発表としてアンステレオタイプをテーマにした性別・年齢・国籍を問わない新しいコーディネーションをユニクロの服などをうまく使いながら提案するエキシビションを(8月31日まで)行っています」

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剛力 「アパレルメーカーって売れる服、流行りの服をつくらないといけないこともある。これからのアパレルメーカーがどうなっていくのかにも興味が出てきます」

シェルバ 「ユニクロの服は元々、男性ものを女性がダボッと着るなどお客様が自由に着こなされています。日々、その人の生活に合った着こなしをしてください、自分なりに楽しんでくださいという考えが根底にあり、あまり主張をしないバリエーションが多いので、こうしたことにチャレンジしやすいという面もあるのかなと思うんです。

剛力 「そういったことは、SDGs関係なく考えられていたのでしょうか?」

シェルバ 「2001年に社会貢献室としてスタートし、私は当時2人しかいないメンバーの1人でした。その当時はどちらかというと利益を社会に還元するというビジネスとは離れた世界の話だったように思います。それが、徐々に会社が成長してグローバルに事業を拡大することで、企業として負うべき社会的責任も重くなり、単に質が良くて手ごろな価格の服を売るだけだと認められない社会になってきて、ようやくビジネスの真ん中にインテグレート(融合、統合)できてきているのかなと思っています」

蟹江 「最初は本業とは関係ないところで木を植えたりとかだったサステナビリティへの取り組み方が、ここ数年で本業の中で何ができるかを考えるところまできている。さらに、ここから10年で、それがどこまで変われるかということが重要になっているのだと思いますね」

剛力 「シェルバさんが、こうした取り組みを行う中で最も大切にしている思いは何なのでしょう」

シェルバ 「どうしてもサステナビリティというと構えてしまうというか、教科書っぽいように聞こえてしまうと思うんです。私たちはもう少しそれを分かりやすく、サステナビリティのタッチポイント的な存在にならないといけないと思っています。一部の方たちだけが享受できるブランドではないように、サステナビリティもみんなが享受できるものでなければいけない。それは、すごく難しいチャレンジなのですが、会社としては大事にしたいなと思っているところですね」

剛力 「最後に、シェルバさんからSDGsが達成年とする2030年に向けた提言をお願いします」

シェルバ 「やはり、私たちの従業員もそうですが、より多くの人が“サステナモード”になる、“自分ごと化”することが大切だと思います。企業や国家、国連がやることみたいなイメージを、まだ多くの人が持っていると思うのですが、みんなの課題であり、みんなのことなんだよということです。その一つが次世代へのアクションであり、そうしたことが私たちとしてできることかなと思っています」

蟹江 「やっぱり若い人は力がみなぎっていますし、それをちゃんと受け止めなければいけないなと改めて思いました。企業も、そこに押されて変わっていく時代になっているんだなと。私は普段大学生と接していますが、高校生も中学生も力がみなぎっているので、企業も含めてそうした力を吸収して、応えていかなければいけないなと改めて思いました」

日常生活に密着した企業だからこそ、その果たせる役割も大きい。ユニクロ、ジーユーといったブランドを世界展開するファーストリテイリングは、その社会的責任に向き合い、次世代との取り組みを積極的に推進している企業の一つと言えそうだ。

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