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ワインの“絞りかす”がシャンプーに?日本ワイン発祥の地「ワイン県やまなし」の廃棄物削減への取り組みとは

ワインの“絞りかす”がシャンプーに?日本ワイン発祥の地「ワイン県やまなし」の廃棄物削減への取り組みとは

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

サスティナブルへの関心が高まり続ける昨今では、ペットボトルキャップからできたシューレース(靴ひも)や、服の廃材を組み合わせて新しく作られた洋服、砂糖をつくる過程で捨てられていたサトウキビの茎や葉を原料とする弁当容器など、そのままでは廃棄物となってしまう物を新しい形に生まれ変わらせる動きが増えてきています。SDGs17の目標うち、目標12「つくる責任 つかう責任」では、ターゲットの12.5に、「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」と定められています。このような廃棄物を新たな方法で再利用し続ける活動は、目標の達成にしっかりと寄与していくものと言えるでしょう。

今回は、日本ワイン発祥の地であり、生産量及びワイナリー数が日本一を誇るワインの名産地「ワイン県やまなし」を宣言した山梨県から、廃棄物削減に貢献しているワイナリーや企業の活動をいくつかご紹介します!

年間10,000t以上廃棄処分されるワインの絞りかす「ワインパミス」を食品・化粧品に

山梨県にある、株式会社中村商事をはじめとした複数企業が携わっているワインフード推進委員会では、ワインの搾りかすであるワインパミスを再利用して廃棄を減らす取り組みを行っています。
そもそもワインパミスとは、主にワインの醸造工程で残るブドウ果皮・種などのことを指します。山梨県内だけでも年間10,000t以上も廃棄されるワインパミスは、畑に廃棄してもアルコールを含んでいるので良い土壌ができないうえ、大量のコバエと悪臭を発生させるため、その処理は長年ワイン事業者の悩みの一つでした。中村商事はそのワインパミスに着目し、それらを原料としたペーストやパウダーを山梨県で開発しました。

ワインパミスシャンプー

実は、ポリフェノールがワインの26倍も含まれていたり、ワインには移行しないオレアノール酸という栄養成分も含まれているなど、ワイン以上の可能性を秘めているというワインパミス。料理や食品だけでなく化粧品やサプリメントにも加工しやすい状態にすることで、廃棄処分していたワインパミスが循環型社会の新たな資源になるよう取り組まれています。

その特徴を生かしたのが、ワインパミスシャンプーです。
ワインパミスに含まれるポリフェノールには、高い抗酸化作用があり、白髪や抜け毛の抑制が期待できるアントシアニンや、消臭効果やダメージ毛の引き締め効果が期待できるタンニンが含まれています。また、その効果をさらに引き立てられるように、シャンプーそのものの成分にもこだわり、髪にハリとコシを与え、保湿効果が期待できる10種類の植物エキスを配合し、敏感肌や乾燥肌の方にも安心して使える、刺激の少ないアミノ酸系のシャンプーとなっています。

その他にも、お肌に嬉しい保湿や潤い成分として、5種の自然由来の成分を使用している「23時は大人のフェイスマスク」も展開。ワインパミスは、ワイナリーから回収後すぐに冷凍保存した赤ワインパミスを使用し、海水・海塩には豊かな自然と美しい海に囲まれた奄美群島の海洋深層水を使用するなど、こだわりの自然由来成分を使用しています。1日の終わりには、心地よく包まれるような香りでご褒美時間を楽しむことができます。

ワインの搾りかすとぶどうの剪定枝で作る“SDGs 有機肥料”で二酸化炭素を削減

南アルプス市でマスカット・ベーリーAを中心に希少な赤ワインを造るワイナリー「ドメーヌヒデ」では、ワインの搾りかすとブドウ枝の炭から、有機肥料作りを行っています。そのままの状態では酸性が強いワインの搾りかすを中和するため、アルカリ性を多く含んでいるブドウ枝の炭を混ぜ、良質の肥料にしています。炭化させることで二酸化炭素削減につながり、毎年大量に出る剪定枝の二次利用にも繋がる“SDGs有機肥料”で、畑から出たものを畑に戻す循環型の農業を実践中です。

有機肥料づくりの様子。ぶどうの剪定枝を炭化させている。

この手法は「4パーミルイニシアティブ」という、1年間で土の中の炭素量を0.4%(4/1000)増やすことができれば、人間による大気CO2の増加量を相殺し、温暖化を防止できるという考えに基づいた国際的なSDGsの取り組みです。日本では山梨県がトップランナーとしてリードしているんだとか。「ドメーヌヒデ」は、ワイナリーでは県内第1号の「4パーミルイニシアティブ」認証を目指し、現在申請中とのことです。

4パーミルイニシアティブの仕組み

日本酒の副産物をブドウ畑に活用

山梨県東部の「郡内」エリアにあり、日本で唯一日本酒とワインを造っている日本酒蔵「笹一酒造」では、地元山梨県産米を自社精米した過程の副産物「米ぬか」をブドウ畑の肥料として二次利用しています。これは、日本酒、ワインともに優れた醸造技術をもつ笹一酒造ならではの取り組みであり、自然由来の肥料として活用することによって環境に配慮した栽培方法です。

化学肥料を使わないオーガニックな栽培を行っている笹一酒造のワイン醸造用自社畑

その他にも山梨県では、ソムリエ試験を直前に控えた受講生も多く訪れるこの地の魅力を次世代にも引き継げるよう、官民が一体となって景観や産業文化継承の取り組みを行っており、廃棄物を減らすだけでなく、継承という視点でも持続可能な取り組みが行われています。

私たちがよく目にするのは「消費」に着目した廃棄物を減らす取り組みかもしれません。ですが、「消費」だけでなく「生産」というフェーズに着目しても、廃棄物を減らすための動きは多く行われています。単に「再利用原料が使われている商品を選べば廃棄物が減る」という考えだけで取り組むのではなく、どのような流れでその商品ができているのかを知ることで、より楽しみながら廃棄物を減らしていけるのかもしれません。


「ワイン県やまなし」webページ

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