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【書籍連載】「Z世代」「成長から成熟へ」…キーワードから読み解くSDGsが向かう先とは(第4回)

【書籍連載】「Z世代」「成長から成熟へ」…キーワードから読み解くSDGsが向かう先とは(第4回)

#SHOW CASE
  • 働きがいも経済成長も
  • つくる責任つかう責任

株式会社サニーサイドアップグループおよび同社代表取締役を務める次原悦子氏の著書『2030年を生き抜く会社のSDGs』(青春出版社)から、SDGsの原点やこれからについて4回にわたる連載企画。最終回は「Z世代」「成長から成熟へ」といったキーワードから、SDGsの向かう先を読み解きます。

前回の記事はこちらから
【書籍連載】『2030年を生き抜く会社のSDGs』から読み解く、SDGsの原点とこれから(第1回)

【書籍連載】「かっこいい」から人が動く?ソーシャルアクションの舞台裏とは(第2回)

【書籍連載】世界を救うのは「愛」ではなく「アドボカシー(政策提言)」と「啓発」だった?(第3回)

高級品なんかより、サステナブルに生きたい若者たち

少し前まで、ネット上ではわかりやすく自己顕示欲の強いインスタグラマーが、若者たちにもてはやされていました。高い服やバッグ、高級な料理やワイン、どこどこのホテルのスイートに泊まりました、といったキラキラした投稿をみんなが羨んでいたのです。
でも、風向きは確実に変わってきました。「かっこいいと思うモノ・コト」の価値観が、変容してきたからです。

それを体現しているのが今の「Z世代」です。

1990年代後半〜2010年代初頭に生まれ、2021年現在10代〜20代前半の若者たちは「Z世代」と呼ばれますが、彼らは生まれながらに「サステナブルな発想」を持っています。景気の良い時代を経験しておらず、昔の若者ほど可処分所得もないので、マスコミが煽る流行に左右されて散財することはありません。
それよりは、自分たちが本当にいいと思ったモノ・コト─それは、ときにソーシャルグッドな行動─にお金を使います。
このことは、サニーサイドアップの新卒採用や中途採用時にも、ものすごく感じます。私たちがソーシャルグッドな取り組みをしているから、という理由でわざわざ選んで会いに来てくれる学生さんが、ここ数年でかなり増えました。

中途採用に関しても、入社間もないほうが、もともとのサニーサイドアップのメンバーに近いような雰囲気を持っていたり、人になにか良いことをしたい、貢献したいという気持ちを持っていたりする人が多いという報告も、人事担当者からよく受けます。入社直後、うちのSDGsへの取り組みをよく理解した上で、その話題を振ってくる人もいると聞きました。長く経営の立場にいる身としても感じるのは、今の若者たちの仕事に対するマインドは、10年くらい前と比べて確実に変わっているということです。

2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大によって社会不安が増大し、それまで以上に自分が働くことの意味や、「果たしてこの仕事は社会のためになっているのか?」と自問自答する人が増えました。

自分の会社がSDGsにどの程度取り組んでいるか、どれだけ社会を見すえているか。それらは、今まで以上に「有能な働き手に選ばれるか否か」を決める鍵となっていくことでしょう。

「成長」フェーズから「成熟」フェーズへと、時代はシフトした

私たちは今、「成長」ではなく「成熟」の時代にいるのだと思います。モノを作れば作っただけ売れてお金が儲かり、働けば働いただけ給料が上がる時代は、とっくの昔に終わりました。企業が利益を生み、その規模を拡大することで成長するのはとても大事なことですが、それに追われすぎていて大事なものをおろそかにしている、壊していることに、もうみんなが気づき始めています。改めて会社の役割とはなんだろうと考えたとき、企業体として独善的・排他的に発展するのではなく、その発展が社会にとっても役立ち、かつ「持続可能(サステナブル)であるかどうか」が大事であることに気づきます。

人間と同じく、自分の成長だけに心血を注いでいた若い時分とは違うのです。社会にどう貢献できるかも含めて、自己の意味を見出す。そんな成熟した思考が、今の時代、会社に求められているのではないでしょうか。

SDGsとは、そのような思考が言語化・明文化・体系化されたものです。
ある企業が「成長」だけを唯一追求する価値観としてしまうのは、人が「経済的成功」だけを人生の目的にするのと同じくらい、不幸なことだと思います。一時の成功体験が忘れられないばかりに、その後の質素な生活を受け入れることができず、身を持ち崩してしまった人は、世の中にたくさんいますよね。三ツ星レストランにしか行けない、エコノミークラスではフライトできない……。

「成長」という言葉自体はポジティブに聞こえますが、グラフが上がっていくことだけを人生の、あるいは会社の指針としてしまうのは、あまりに危険。人生も会社も、浮き沈みは必ずあるのですから。
そんなとき、「成長」以外に「成熟」というもう一つの軸を持っていたとしたら、どうでしょうか。「成長」は停滞するかもしれないけど、「成熟」が減ることはありません。これこそがサステナブルな生き方であり、これからの時代の会社のありようであり、ひいてはSDGsが求める「持続可能な開発」の核にある考え方です。
SDGsは、世界中の産業や人々の考え方が「成長」から「成熟」にシフトチェンジするための、決定版南指書のようなものなのです。


出典・引用元/『2030年を生き抜く会社のSDGs』(青春出版社)

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