【解説】SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは?解決すべき課題や現状
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地球は表面の約七割をも海に覆われています。そんな海から人類は昔から多くの恩恵を受けて暮らしてきました。
しかしそんな地球の海が危険な状態となっています。
国連の定めた17個のSDGs持続可能な開発目標のうちの一つ「SDGs14.海の豊かさを守ろう」は、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ことを目的としたもので、10個のターゲットから構成されています。
本記事では、目標14「海の豊かさを守ろう」を達成するための課題や現状について解説し、私達ができる取り組みについて考えていきます。
海洋の現状と課題について
SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」が掲げられたのには、海洋の現状が驚くほど危険でギリギリの状況になっているからに他なりません。すでに私達の今までの生活が脅かされる程にその危機は目前に迫っています。それでは、海洋はどのような状況なのか、現状と課題について説明しましょう。
①海洋環境の悪化
「海洋汚染」、「海洋温暖化」、「海洋の酸素欠乏」、「海洋の酸性化」など、海洋環境にはいくつかの深刻な問題が発生しており、それらは主に人間の生活によってもたらされています。
海洋環境が悪化すると、海で生きる生物はその生態環境の変化に直接晒され、生きていけなくなります。その結果、海の生物の数は減っていき、その悪化した環境が改善されない限り海洋資源が再生されることはありません。
海の再生能力を取り戻すために、SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」のターゲットは設定されています。
②プラスチックごみの流出
私達も使わない日はないほど、日常生活にプラスチック製品は溢れています。ペットボトルや商品の容器、ポリ袋などに使われたそれらのごみは、適切に処理されずに廃棄され、海に流れ込むものもあります。
日本でも海岸でこういったプラスチックごみが漂着しているのを目にしたことのある人も多いでしょう。このような海洋に流れ出たプラスチックごみは海洋の生態系に甚大なダメージを与えています。SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」はこういったプラスチックごみの問題もターゲットにしています。
世界中の海には毎年約800万トンものプラスチックごみが流れ込んでいるという試算もあり、それらがどんどん除去されず海に蓄積されていることになります。北極や南極でもプラスチックごみが確認されるほど、その範囲は広がっているのです。プラスチックごみは劣化して5ミリ以下の小さなマイクロプラスチックになり、それらは魚などがエサと間違えて口にしてしまい、世界中の海で魚の胃の中からマイクロプラスチックが確認されています。
消化されずに胃を詰まらせて死んでしまう魚やクジラなどの哺乳類が出てきていることは、最近ニュースなどでも見るようになりました。大量のプラスチックごみによって生態系は狂わされ、観光や漁業は衰退することが懸念されています。
③海洋資源の減少
水産物の需要が世界的に高まっており、日本近海でも東アジアの国々による魚介類の争奪戦が繰り広げられています。
需要の高さから過剰な資源消費が起こっており、中には違法漁業や乱獲など、許容されない行為も横行して問題になっています。実際1960年代から世界の漁獲量は増加の一途を辿っていましたが、1990年以降その増加は頭打ちとなっており、需要があっても網にかかる魚がいない状態になっていて、魚介類も絶滅が心配されるものが出てきました。
持続可能な水準にある魚類資源の割合は1974年の90%から、2015年には67%まで減少してしまい、このままの大量消費が続けば海洋資源は利用できない異常事態に陥る可能性も出てきました。SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」は、それらの資源の消費を国際的に協力して抑え、協調した資源管理を課題として掲げています。
④サンゴ礁絶滅の危機
人間の生活にとって森や木々が必要なように、サンゴ礁は9万種類もの海の生き物の生活を支える、海洋生物ににとって大切なものです。
サンゴ礁は海洋生物を消費する人間にも豊かな漁場を提供してくれることから、サンゴ礁の死滅は私達の生活に直結する問題となります。温暖化や二酸化炭素による海洋の酸性化の影響で、サンゴ礁は白化し死滅していきます。サンゴ礁の絶滅は海洋生物だけでなく地上の生態系への甚大な影響をもたらし、食糧不足や海洋環境の荒廃などが危惧されています。
SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」では、サンゴ礁を守るため、海の酸性化を最小限に抑えるように課題に取り組んでいます。
SDGs目標14達成に向けて私たちができること
SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」を実現させるために、国際的な取り組みが必要ですが、それは私達一人一人の問題でもあります。
日本でも政府、行政が一体となって、SDGsの目標を達成するために2030年までを「行動の10年」として実行に移しています。2021年の、日本のSDGs達成度は国連サミット加盟国内で18位と上位でしたが、まだまだ一人一人出来ることはあるのではないでしょうか。
①海のエコラベルが貼られた水産物を選ぶ
日々の食卓に並ぶ魚が売られている中に、「海のエコラベル」と呼ばれるMSC認証マークが貼られているものがあります。
これは、私達が魚をずっと食べ続けていけるように海の自然や資源を守りつつ獲られた水産物だと示すためのマークで、厳しい審査を通って認定されています。日常の買い物の際にMSC認証のエコラベルが貼られた魚を選ぶだけでも、SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」に取り組むことができ、海を守ることにつながります。
②プラスチックごみを出さない
SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」を達成するためには日々の生活のなかで、プラスチックごみを出さないようにする意識も大切です。
日常生活ではビニール袋やストローなど、プラスチック製品が溢れています。プラスチック製品をなるべく使わないという意識を持つことで目標実現のための貢献につながるので、マイバッグ・マイ箸・マイボトルを持ち歩くなど、自分でも出来ることに取り組んでいきましょう。
③プラスチックごみはリサイクルする
海洋環境を汚染するプラスチックごみは資源として再利用できます。そのリサイクルの取り組みによってSDGsの目標「海の豊かさを守ろう」の目標達成に貢献できます。
日本ではペットボトルの回収率は88.9%と高く、多くはリサイクルされていますが、裏を返せば10%以上、つまり20億本以上のペットボトルが未回収のままです。ポイ捨てされているであろうこれらを再利用するだけでも、海の豊かさを守ることにつながっていきます。
日頃からスーパーに設置されているリサイクルボックスなどを利用するようにして、プラスチックのリサイクルを習慣づけることが大切です。
■一人ひとりの意識が大切!できることから始めて未来の海を守ろう
私達人間の営みが海洋資源を汚し、壊し、奪ってきたことで、海は今、危機的な状況に陥っています。幸い、破滅する前にその危機的状況に気づくことが出来ました。
SDGsの目標「海の豊かさを守ろう」は、私達人間の命の源ともいえる海を守るために、必ず実現しなければならない目標です。
自分だけ良ければいいという考えはもはや許されません。目標を実現させるため、一人一人が考えて身近で出来ることから行動し、海の未来を私達の努力で変えていきましょう。
<参考:目標14 「海の豊かさを守ろう」の10個のターゲット>
14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14.c 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。