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北京五輪間近!スポーツ界のアップデート、トランスジェンダー選手出場から見えた課題

北京五輪間近!スポーツ界のアップデート、トランスジェンダー選手出場から見えた課題

#SHOW CASE
  • ジェンダー平等を実現しよう

IOC(国際オリンピック委員会)がオリンピック・パラリンピックにトランスジェンダー選手の出場を認めたのが2004年。それから7年後、2021年に開催された東京オリンピックで、オリンピック史上初となるトランスジェンダーのローレル・ハバード選手(43歳・ニュージーランド)が、ウエイトリフティング女子87キロ超級に出場し、歴史的快挙をとげました。
IOCは「参加資格は選手が性のアイデンティティーや物理的な性の多様性によって、構造的に大会から排除されることがないように、公平性を持って作られなければならない」とし、この新指針は、冬季北京オリンピック後に展開される予定で、今後のオリンピックや様々な競技への出場について関心が高まります。

ローレル・ハバード選手の母国である、ニュージーランド・オリンピック委員会のアシュリー・アボットは「自分と同じような人が世界の舞台で活躍するのを目にすれば、道は開けていると思える。その素晴らしい機会だ」と発言。また、ローレル・ハバード選手も「オリンピックは希望と理想、価値を世界が祝福する場だと考えている。スポーツがいろんな人を受け入れ、誰もが参加できるようになるため、IOCが努力していることに感謝したい」とコメントしています。記録は出せなかったものの、ローレル・ハバード選手の今回の出場で、多くのトランスジェンダーの方々へ希望や目標を与えた事は言うまでもなく、記録よりも大きな価値を産み出し、今後オリンピックやスポーツ界に、大きな革命を巻き起こす第一人者となったのではないでしょうか。また、IOCは、スポーツや社会の中での差別禁止を訴えており、世界が注目するオリンピックが与える影響は、各国のスポーツ界においてどこまで通用するのか注目したいところです。

トランスジェンダー選手の出場規則はどうなっているのか?

IOCはトランスジェンダー選手の参加資格にあたり、2021年11月、新たな指針を発表。2015年に発表された指針では、大会の1年前からテストステロン※の値が一定の基準以下だった選手への競技参加が認められていますが、このガイドラインを改定しました。新指針では、およそ2年にわたり250人を超えるアスリートや人権問題の専門家と協議を重ね、「公平であること」「差別がないこと」「証拠に基づいたアプローチであること」など10項目の基本原則を決定。参加資格に拘束力がなく、公平性が考慮されるようにまとめられました。
「参加資格は選手が性のアイデンティティーや物理的な性の多様性によって、構造的に大会から排除されることがないように、公平性を持って作られなければならない」とし、この新指針は、2022年2月から開催される冬季北京オリンピック後に展開される予定だそうです。
※テストロテン:男性ホルモンの一種

トランスジェンダー選手の活躍に、海外は批判的?

2020年アメリカのアイダホ州は、トランスジェンダーのアスリートが女性のスポーツに参加することを禁止した最初の州となり、ミシシッピ州は、トランスジェンダーのアスリートが、公立学校や大学で女子スポーツをすることを禁止する法案が可決されました。アメリカでは、学校スポーツにおいてトランスジェンダーの学生が女子チームに参加することを、基本的には幼稚園から高校・大学まで全面禁止する州がいくつもあります。「女子スポーツを守るため」「身体的な違いがあるためフェアではない」などの理由で、トランス排除法案まで提出され、州ごとに可決・議論されており、このような働きは科学的データもなくトランスフォビュア※であると批判の声も集まっています。
東京オリンピックで話題となった、トランスジェンダーのローレル・ハバード選手に対する議論が繰り広げられていた中、同じ女子重量挙げのローラ・マリエル選手は、「トランスジェンダーのアスリートに限らず、女性アスリートに対してもあからさまな女性差別はある」と、自身のTikTokで主張し、60万回を超える再生がされ話題を呼びました。
※トランスフォビュア:トランスジェンダーの人やノンバイナリーの人に対する不寛容、否定的な態度、言動、嫌悪

日本のスポーツ界におけるトランスジェンダー事情は

日本ではどうでしょうか?政府にLGBTQ+を差別から保護する法案が可決されるように、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(NGO国際人権組織)、 J-ALL(日本LGBT法連合会)、アスリート・アライ (スポーツ界におけるLGBTQ+サポート団体)、オール・アウト(愛と平等を提唱するグローバル運動) という団体が協働していたり、「スポーツにおける男女平等・公平の達成」「ジェンダー・バイアスのないスポーツ文化の構築」を目指している、日本スポーツとジェンダー学会(JSSGS)など様々な団体があり、日本のスポーツ界にどのような働きをかけていくのかはこれからとなりそうです。

日本のサッカー界では、2021年9月に、国内初の女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)が始まり、LGBTQ+の課題に取り組む事が表明されています。同性のパートナーがいる選手やトランスジェンダー選手が存在するなど、多様な価値観が受け入れられるWEリーグは、社会のモデルとなる可能性を秘めてるともいえるでしょう。

今後のスポーツ界に求められる事とは

冒頭でご紹介したローレル・ハバード選手も、20代の時にニュージーランドの男子ジュニア記録を保持するも、23歳で競技を一度辞めたそうです。その理由は「私のような人のためには作られていないであろう世界に自分を合わせようと、プレッシャーがあった」と語っていました。

オリンピック出場への道のりには、日々の練習が不可欠で、私達には想像を絶するような精神力を要するのだと思いますが、ストレスなく集中できる環境が果たして整っているのでしょうか?
そのためには、学校の受け入れ体制や、保護者の理解のほか、各地方のスポーツ団体などがあらゆる協力や理解を深める時だと思います。
トランスジェンダーの方達が持ち得る能力や可能性を奪う権利は誰にもありません。それでも、今後、トランスジェンダーの選手が競技に参加することについて、注目だけでなく批判の声が寄せられることがあるかもしれません。
ただ一つ言えるのは、スポーツに真摯に向き合ってきた選手側に非があるのではなく、私たち一人一人が向ける目線や意識にこそ想像力を持つことが求められているのではないでしょうか。

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