“SDGs”と“企業”をもっと近づける!SDGs MAGAGINE

ラジオレポート後編:ELLE編集長に聞く今年のサステナブルファッショントレンドとは?

ラジオレポート後編:ELLE編集長に聞く今年のサステナブルファッショントレンドとは?

#RADIO
  • つくる責任つかう責任

毎月1回、女優の剛力彩芽さんをパーソナリティに迎えて放送しているニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2月18日の2022年第2回は「ファッションとSDGs」がテーマとなった。番組の後半では、エル&ハーパーズ バザーグループ編集局長、エル デジタル編集長を務める坂井佳奈子さんをゲストに招き”メディア目線”から今回のテーマについて語ってもらった。

【坂井佳奈子さんプロフィール】
1998年にアシェットフィリパッキジャパン(現ハースト婦人画報社)に入社。「ELLE JAPON(エル・ジャポン)」編集部でファッション・ディレクターなどを経て、2014年1月に「ELLEgirl(エル・ガール)」編集長に就任。20年10月からELLEに関する全メディアの編集体制を統括するELLEグループ編集局長に就任。ファッション誌の中でもいち早くグリーンイシュー(生態系関連)を特集するほか、20年にはSDGs達成に向けた情報発信を行う 「ELLE ACTIVE! for SDGs」を発足。

剛力 「お久しぶりです」

坂井 「ご無沙汰しています! ELLEでは剛力さんのクローゼットを拝見したり、ファッショイベントでお会いしたりと面識はあるんですけど、こうやってお話しできるのを楽しみにしておりました」

剛力 「私は昔からファッションが大好きなので、今日を楽しみにしていたのですが『ファッションとSDGs』について、坂井さんはどういう点に注目されていますか」

坂井 「まずはSDGsやサステナビリティーとファッションは切っても切り離せないものだと思っています。少し前だと、廃棄問題。ファッション産業がすごくゴミを出しているというところで、ちょっとファッションが悪者に捉えられがちな時もあったかと思うんですが、今は良い方に追い風が吹いているなとすごく感じます。先ほど(番組前半)もお話が出ていたフランスの法律(世界初の衣類廃棄禁止法)。洋服をただ廃棄することは駄目ですよねという新しい時代にフィットした法律が今年の1月に施行されたということで、ファッションの国であるフランスが先陣を切ってやっているというのが、とってもとっても良いニュースだなと。日本も追いついていけたらいいんじゃないかなと思っています」

剛力 「フランスが早いんですか」

坂井 「早いですね。ファッションもそうですけど、この法律の前に食品廃棄の廃止というのも2016年に成立しています。日本は、ファッションもそうですけど、食品のフードロスというのもすごく問題になっていると思うんですよね。そういった意味で、フランスのやっていることは、お手本になるんじゃないかと思っています」

剛力 「日本は、やっぱりちょっと遅れている・・・」

坂井 「豊かなものを追い求める時代があって、今の日本があると思うんです。ただ、やはり何かゲームチェンジャーが必要というか、新しい時代の先陣を切ることが必要。それがファッションだと良いなと思っています」

剛力 「そうですね。必ず身につけなきゃいけないものですからね、ファッションは。その坂井さんが編集長を務めるELLEでもSDGsの取り組みをしているんですよね。このイベント『ELLE ACTIVE! for SDGs』というのは、どういったものなんですか」

坂井 「私たちはメディアなので、働く女性を応援するだとか、さまざまな形でいろいろなことを発信はしているのですけど、コロナ禍で皆さんの考え方だとか、意識が今ちょうど二極化しているなと思ったんです。すごく意識が高い人は勉強熱心で、セミナーを受けたりとか、知識を蓄えたり、世の中のためにどうにかしようというアクティブな方がたくさんいらっしゃる。一方で、無関心な方というのも実は多いよねというところがある。みんなが一緒になってSDGsのことを考えられる、お祭りのようなものができないかなと思い、あえてちょっと“ハードル”を下げたフェスバル、お祭りというコンセプトで、2021年もみんなコロナ下で頑張ったよねという意味も込めて、ちょっと楽しいコンテンツにしようと思って行ったイベントでした」

剛力 「開催してみて、どうでしたか」

坂井 「丸一日、収録があったり、ライブ配信があったりとか、いろいろな形で配信したんですけど、ファッションとビューティーとアート、それからシネマという皆さんの好奇心が刺激されるようなジャンルに特化して、いろんなゲストの方に来ていただき、楽しいけど、この話って、よく考えたら世の中のためになるよねというようなコンテンツを配信しました」

剛力 「具体的に、どのようなお話があったんですか」

坂井 「私がファシリテーターを務め、モデルの冨永愛さんと森星さんに登場していただいて、ファッションのお話というよりも、女性の生き方みたいなことをお話ししていただきました。モデルとして世界で活躍されているお二人ですが、皆さんご存知の脚光を浴びている部分ではなく、いろんな努力であったり、世の中のために何がやれるかであったり、そういったことを考えてモデル活動をされているというお話をしていただけて、すごく皆さん元気をもらえたんじゃないかなと思います」

剛力 「確かに、女性のエネルギーって力をもらえますものね」

坂井 「すごくポジティブなコメントをたくさんもらえたので、やっていながら私たちも元気をもらえました」

剛力 「それは、うれしいですよね。私もいつか、そういうところに出られるように頑張ります!」

そんな坂井さんの取り組みを紹介したところで、話題はサステナブルファッションのトレンドに移った。今やファッション業界でマストな考え方になっているサステナブルだが、これからのトレンドを表す3つのワードがあると坂井さんは話す。それが【1】トレーサビリティ【2】セカンドハンド【3】ヴィーガンレザーだという。

【1】トレーサビリティ

剛力 「聞いたことはあるけど、はっきりどういうものですというのは正直分からないですね」

坂井 「お買い物をするときって何を基準にされているか。生産背景とか、この商品がどこからやってきたのかとか、流通過程みたいなところまで全てフェアであるという、そうしたところまでを見て、お買い物をする人が増えてくるんじゃないかなと思っています」

「買い物は投票」という言葉がある。元々は子供たちの未来のため、エシカルな消費(つくるために必要な環境や作っている人の労働環境などに気を配ることで環境保全や社会へ配慮した消費)をすることを呼び掛けたベストセラー本(「買い物って投票なんだ」、藤原ひろのぶ著)などから広がっていったもので、これを坂井さんは「すごく良い言葉だなと思っている」と話す。

坂井 「たとえばティファニーさん。ジュエリーって、記念に何かを買うとか、エンゲージだったり、マリッジリングだったり、記念日を買うという意識の方が結構多いと思うんですけど、そういった自分たちの大切な思い出のジュエリーが、どこで取れて、どういう人がつくって、どういう生産過程を経て自分の手元に届くのか。ブランドさんも企業として、いろんなサステナビリティーの活動をされていると思うんですけど、そこのストーリーを全て透明性を持って見せていくことで、(消費者側も)買う時にもっといいものを買ったという気持ちになれると思うんです」

剛力 「手元に来るまでの物語がある」

坂井 「なので、そういった意味で生産背景までを知って買い物をするというトレーサビリティというものが、もっともっと当たり前になってくるように思いますね」

剛力 「今でも、お洋服を見たら分かるという仕組みはあるんですか」

坂井 「ありますね。QRコードやタグで分かるようになっているものがあります。スーパーマーケットに行くと、生産した農家さんの顔が分かる・・・というものがありますが、そうしたことをやっているブランドさんは結構多いですね。アプリやウェブサイト、タグで全て表示されるような」

剛力 「調べやすい環境に、どんどんなってきていると。正直、ファッションってエコなものを使うようにしていますっていうのは増えてきているけど、じゃあどこでそれを見たらいいのか、どうやって買ったらいいのかが分からない人もいると思います。トレーサビリティ。大事なワードですね」

【2】セカンドハンド、ビンテージ、リサイクル、スワップ

坂井 「2つ目はセカンドハンド、ビンテージ、リサイクル、スワップ。スワップは新しい言葉で物々交換とかそういった意味なんですけど、その他は昔からあった言葉かなと思います。ただ、最近になって意味合いが少しずつ変わってきていると思ったので、2つ目のキーワードとして挙げてみました」

剛力 「どう変わっているんですか」

坂井 「フランスの法律が追い風になっているというのが、ここにも関係しているのですが、簡単に洋服をゴミとして処分することが出来なくなった時に、リサイクルだとか、ビンテージものやデッドストックのものを買える機会が増えるとか、そういった循環が生まれてくるんじゃないかなと思っています。パリでは老舗百貨店であるギャラリー・ラファイエットやプランタンとかが、ビンテージ、セカンドハンドに特化したフロアを大々的にオープンさせたんです。そこで、新品を買うのではなくて、誰かの手にあったものを買う。さらに、そこに持ち込むことも可能なんだそうです。そういった新しいシステムに大手の百貨店が着手しているというのは、インフラが整うということでもあるので、ますます活発になってくるのかなと思います。グッチなどのラグジュアリーなブランドさんも、リセールサイトと業務提携するなど、ただ出来たものを処分するのではない取り組みを企業がどんどんスタートさせている。法律ってすごいなと思いますよね」

剛力 「日本ではどうですか」

坂井 「日本でファッションのビジネスというと、資本が大きな会社があるヨーロッパとかアメリカとは全く違う構造なんじゃないかなと思うんです。むしろ日本のデザイナーさんの方が、この先ポテンシャルがあるというか、活路を見いだせる機会は増えてくるんじゃないかなと思いますね。SDGsの中でもダイバーシティー、多様化という目線で言うと、いわゆる一部の人たちのためのファッションだけじゃなく、マイノリティーを含めて、いろんな人がファッションを楽しむという思想に変わりつつあるなと思います。日本はファッション業界でいうと、そんなにフォワードではないですけど、才能あるデザイナーさんとかがたくさんいらっしゃる。資本力だけではない時代が来るという意味では、同じスタートラインに立てる時代が間もなく来るという感じがします」

剛力 「それは、ワクワクしますね」

【3】ヴィーガンレザー

「ヴィーガンレザー」とは、動物の皮を使用せず植物由来の樹脂などでつくられた、いわゆるフェイクレザーのこと。合成皮革、人工皮革より石油由来資源の使用を極力抑え、環境に配慮した素材であることが特徴だ。

剛力 「これは、だいぶ浸透した気はします」

坂井 「ELLEは45の国と地域で情報を発信していますが、ほとんどの国でファーフリー宣言というのをしたんです。メディアでも、雑誌でも、SNSを含めて、リアルファーはもう掲載するのをやめましょうという宣言なんですけど、いわゆる植物由来の素材を使ったレザーに見立てたものが、テクノロジーの進化とともにつくれるようになった。素材の進化もすごくて、本物のレザーと比べること自体も違うのかもしれないですけど、見た目では全然分からない。新しい価値観という意味でも、注目すべきことなんじゃないかなと思っています。エルメスやステラ・マッカートニーは、キノコの菌糸を使ったマッシュルームレザーというのを商品化したりとか、ブドウの搾りかすなど、普通だったら捨ててしまうものからレザーが開発されたりだとかしています。そして、これを3つ目に挙げた理由として、世の中もすごく意識してきているなというのがデジタル上でも証明されているということがあります。大手検索エンジンの過去1年、2019~20年に『ヴィーガンレザー』というワードを検索した人が、それまでより69%アップしている。皆さん、関心があるんだなと思います」

剛力 「個人的に気になるんですけど、ヴィーガンレザーは値段とかどうなんですか」

坂井 「値段は高いと思います、まだ。H&Mさんとか生産体制が整っているところは、そんなに高くないと思うんですけど、生産数とかの意味でも基本はまだ高いと思っていただいた方がいいと思います。ただ、先ほどの『買い物は投票』ではないのですが、値段だけで買い物をしないといいますか、そういう価値観もあるのかなと思います」

剛力 「それを買う人が増えてくれば・・・」

坂井 「自動的に、価格も安定してくる」

剛力 「一人一人がちょっとずつ意識することで環境も変わってくるということですね」

そして、最後に恒例の質問。剛力さんは、坂井さんに「2030年に向けた提言」を聞いた。

坂井 「自分の中の小さな指針で言うならば、迷ったらポジティブな方向へ、と考えています。サステナブルのこととか、考え出すと恐ろしい未来が待っているとなってしまうのは良くないなと思っていて、みんながいい方向に、剛力さんがワクワクとおっしゃっていましたけど、楽しそうとか、ワクワクするとか、好奇心が刺激されるとか、そういったところに自分の意識を持っていくと、絶対にいい方向に行くんじゃないかなと思っています」

剛力 「お洋服を選ぶときにも、こっちを買った方がワクワクするなとか、そう思いながら買ってもらえたらうれしいことですよね」

今回の放送を終え、剛力さんは「どういうところで生産されて、どういうふうにここまで流通してきたのか、生産のルーツみたいなものを知ることは、やっぱり大事だなと思いました。ステラ・マッカートニーさんのお話も出ましたが、ステラさん自身が環境などを意識されて洋服をつくられているので、そういうものを手に取ったら自分もワクワクするし、ちょっと貢献できたなと思える。今日は『ファッションとSDGs』について、また一歩ステップアップできたような気がしました」と前向きに振り返った。そして「情報を知る、発信することも大事ですね」と改めて、消費者としてだけでなく、ファッションを提供する側、さらにメディアに関わる側として「発信」の重みを感じた様子だった。

アバター画像

WRITTEN BYSDGs MAGAZINE

カテゴリーの新着記事

新着記事

Page Top