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緊急避妊薬を無償提供へ!ソウレッジ代表鶴田さんに聞く「性教育」の問題

緊急避妊薬を無償提供へ!ソウレッジ代表鶴田さんに聞く「性教育」の問題

#SHOW CASE
  • ジェンダー平等を実現しよう

日本では1年間に、思いがけない妊娠が推定約61万件、人工妊娠中絶が約16万件、約2週間に1人(0歳児)が虐待を受け死亡しています。
(引用:日本財団「日本における1年間の予期せぬ(思いがけない)妊娠、人口妊娠中絶、心中以外の児童虐待死の数)
この数字を見て、一番の原因は何にあると考えますか?
答えは間違いなく、「性教育」の遅れです。
日本は性教育後進国。教科書は世界で一番薄く、学指導要領の中には性交、避妊、人工妊娠中絶など「妊娠に至る過程」を取り扱ってはいけないという規定すらあるのです。
本記事では、そんな現状に最前線で立ち向かい様々なアクションを起こしている一般社団法人ソウレッジ代表の鶴田七瀬さんへのインタビューを通じて、性教育の今後の課題について明らかにします。

鶴田さんが立ち上げた一般社団「ソウレッジ」の取り組みとは?

ソウレッジ設立の背景は、鶴田さんの、性教育を積極的に行う北欧諸国の教育・医療・福祉などの施設を30箇所以上訪問した経験が背景にあります。帰国後、日本の性教育の遅れを何とかしたいという思いで「性教育の最初の1歩を届ける」ことを目指し設立されました。ほかにも、大学時代に妊娠した知り合いが、「中絶」ができず、産んでしまった結果赤ちゃんを「0日虐待」で死体放置してしまった、という体験も自分のアクションをプッシュしたそうです。「その方の社会に私もいた。だけど気づけずにいた」と鶴田さん。日本全体のすべての方をカバーするのは難しいけれど、せめて自分のコミュニティ内にいる人に手を差し伸べられなかった後悔があったそうです。
 
そんな思いもあり立ち上げられたソウレッジは、鶴田さんの、すべての人が自分の人生を選択できるようにしたいという気持ちで「性教育トイレットペーパー」を制作し配布したり、子どもに関わる大人を対象に、性の課題を学ぶ 「ブレイクすごろく」の体験会を開催したり、教員への研修を行ったりと様々な性教育の機会を提供してきました。
 今年2月には、「若者が避妊薬を使用できる環境」と「学校外でも性知識を得られる環境」をつくり、性に関する知識不足/支援不足を解消することを目的とした、「#わたしたちの緊急避妊薬プロジェクト」をクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」にて実施しました。同プロジェクトでは、クラウドファンディングで集まったお金で下記の取り組みを実施します。

・緊急避妊薬をオンラインピル処方サービスと連携して若者へ無償提供
・LINEなどでの情報発信
・LINE上でのアンケートなどで数値を可視化する(若年層の緊急避妊薬の需要や処方後の行動の変化など)
・避妊薬の無償化を実現するための政策提言

未成年が病院で緊急避妊薬を受け取るには保険証が必要。そのためには親に言わなくてはいけない可能性もあることや、値段を理由に諦めてしまう人が多いのが現状です。さらに、現在日本では未承認で安価な海外製のピルが少なくない規模で流通しています。いわゆる「ニセモノの緊急避妊薬」です。安易な理由で取り返しのつかない状況になることは避けたい、そのためにも「#わたしたちの緊急避妊薬プロジェクト」の取り組みは有効であると感じます。

性教育比較、海外と日本の違いとは?

そもそも世界へ目を向けたとき、性教育は生殖に関することだけではありません。狭い枠組みではなく包括的に捉えられています。差別の構造やジェンダー規範について、LGBTQの学びも性教育に位置付けられており、これは性に関する「リプロダクティブヘルス/ライツ」という考え方の中に、性の学習が権利の一部として捉えられているからなのです。
 また、一般的に海外の性教育は2009年にユネスコが世界保健機関(WHO)などとともに作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』を基準にしている傾向があります。
このガイダンスによれば、なんと、「性教育の開始年齢」は5歳と定められているとのこと。確かに、初めての性行為は何歳でするか分からないし、性被害は何歳の時に起こるかわからないです。リスクを避けるためにも段階的に包括的な性教育をうけることは不可欠であることが分かります。
そして、性教育先進国であるフィンランドでは、ユースセンターという学童のような場所で、性教育や性に関する相談が行われています。苦しい時、誰かに相談したい時、解決策が欲しい時にユースセンターのような場所の存在は非常に大きいと考えます。相談に乗り、道しるべを示すことも性教育に含まれます。日本でも主に東京都でユースセンターをつくる事業が進んでいるので、正しい知識と教育を提供する場として広がっていけばいいなと心から思います。

性教育の未来と鶴田さんの目標を聞きました

「性差別が起こることで性暴力も起こる。女性の権利についてまだまだ理解されていない結果、性暴力を軽く見られてしまうし、理解がされにくい。「性」に関する問題は、女性の課題、女性だけが考えるべき問題ではなく、「行動の問題」です」と鶴田さん。
まずは日本での包括的な性教育を促し、女性の権利について認知を広げ、ゆくゆくは知識が届いた後の人たちが行動を移せるように制度自体が変わっていく必要があります。
鶴田さんはこう言います。「SHR(性と生殖に関する健康と権利)を向上させ、ゆくゆくは社会や制度を変えるプレイヤーになりたい」と。ここでの制度とは、避妊の合法化(ピルの認可)や中絶の合法化、同性婚の合法化などを意味します。そして「真の教育を提供し、その質を国全体で担保するために、教員養成課程で「性教育」を必修にして、学習指導要領の改革を行っていくこと、これが次の目標です。」と力強く語ってくださりました。

■ソウレッジ代表 鶴田七瀬さん
日本の性教育の現状を現場視点で学ぶ目的で、NPO法人で性教育講演などを行うインターンを経て、北欧の性教育を積極的に行う国の教育・医療・福祉などの施設を30箇所以上訪問。帰国後に「性教育の最初の1歩を届ける」ことを目指し、ソウレッジを設立。2020年には18団体へ性教育教材を寄付。文部科学省職員への講演や、2022年度Forbes under30「日本発、世界を変える30歳未満の30人」も受賞。

WRITTEN BY 金子みゆ

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