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鉄鉱石の生産量トップを争うリオティントに聞く 地球上で最も使用される金属「鉄」とSDGsの関係

鉄鉱石の生産量トップを争うリオティントに聞く 地球上で最も使用される金属「鉄」とSDGsの関係

#SHOW CASE
  • エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • パートナーシップで目標を達成しよう

地球上で最も多く使用されている金属は何か?鉄鉱石を原料とした鉄であることをご存じでしたか?年間の生産量(粗鋼生産量)は20億トン弱。そのうち1億トン弱が日本で生産されています。
この製鉄産業を陰から支えているのが鉱物資源メジャーのリオティントです。50年以上前から日本向けに鉄鉱石の出荷を開始し、2021年12月には累計出荷額が20億トンの大台に到達。日本に対する鉄鉱石の最大のサプライヤーとして知られる企業です。

「当社の鉄鉱石の強みは品質と規模。当社がオーストラリアのピルパラ地区で生産する『ピルパラ・ブランド』は、単一銘柄として世界最大の鉄鉱石製品であり、その流動性の高さから『鉄鉱石のドル』と称されることもあります。」
こう話すのは、リオティントジャパンで鉄鉱石を担当する藤枝さん。2001年の入社以来、エネルギー部門(石炭)、アルミニウム部門を経て、日本における鉄鉱石部門を任されるようになった人物です。
そのリオティントの鉄鉱石は高品質を維持しながら物量を確保できる点で、世界で重宝されているという。

「当社が鉄鉱石を掘っているのは現在2か所。カナダとオーストラリアです。オーストラリアのピルパラでは年間3億トン以上の鉄鉱石を生産していますが、実はその大半の出荷先は世界の粗鋼生産量の半分を占める中国です。全ての製鉄所が臨海部にあり、自らの原料受け入れ港湾設備を有している日本の製鉄会社と異なり、中国では製鉄所が内陸部にも数多く点在し、公共の港湾設備を経由して輸入原料を引き取っているため、中国の港湾での鉄鉱石転売マーケットも巨大。当社のピルパラ・ブレンドは安定的に高品質である上に圧倒的な物量を誇るため、あらゆる事業者の鉄鉱石需要を満たせるブランドとして流通しているのです」

圧倒的な生産量を誇るピルパラには16か所の鉱山に加えて、4か所の港湾ターミナル、さらには全長1700kmにも達する鉄道網や関連インフラを自前で建設。2019年には世界初の長距離鉄道貨物輸送の自律運行(オートホール)を導入するなどオートメーション化も進め、莫大な資金を投じて鉱山はもとより、インフラ、町までつくりあげてきました。

リオティントHPより「世界初の長距離鉄道貨物輸送の自律運行(オートホール)」

しかし、一昨年、リオティントは大きな批判にさらされます。
「鉱山での採掘作業の過程で、先住民族の聖地にある4万6000年前の遺跡を損壊してしまったのです。オーストラリアでは大きなバッシングを浴び、経営陣が退陣する事態に発展しました。違法行為でこそありませんでしたが、当社が先住民族の意向や感情を理解していなかったことが判明したのです」
これを重く見たリオティントは、新体制へ移行。地域に貢献する施策を強化しています。

鉄の精製時に排出される大量のCO2

世界共通の課題「脱炭素化」に力を入れています。
「脱炭素化は当社単体で実現できる課題ではありません。当社の鉄鉱石を還元して鉄鋼にする過程で発生するCO2(リオティントにとってのスコープ3)は、リオティント全体の排出量(スコープ1、2)の約12倍になります。地中に眠っている金属は総じて酸化しています。鉄鉱石とは酸化鉄のこと。鉄の精製には石炭を利用して酸素を取り除く必要があるために、その際に多くのCO2が排出されてしまうのです。鉄の生産において脱炭素化を実現するためには、炭素以外の還元剤を使用するか、バイオマスやCCS(炭素回収・貯留)の活用によりネットゼロを達成するか、或いはそれらを組み合わせる必要がありますが、これは技術的にも経済的にも一朝一夕にできることではありません。直接的には製鉄会社の課題ですが、原料を供給しているリオティントの課題でもあります。そこで、製鉄会社と協力して鉄の脱炭素化を実現すべく取り組んでいます」

企業との連携強化「目標17 パートナーシップで目標を達成しよう」

成果は少しずつ現れています。一昨年12月に日本製鉄とCO2排出の少ない鉄のバリューチェーンの実現に向けて技術開発協力を行うことでパートナーシップ覚書を締結しました。
同様の覚書を中国の鉄鋼最大手・中国宝武鋼鉄集団や韓国製鉄最大手のポスコとも締結するなど、世界の製鉄業界を巻き込んで脱炭素化に向けた協業を進めています。
ピルバラの自律型鉄道網をはじめ、オートメーション化で先陣を走ってきたリオティント。生産性や安全性向上に力を注いできた同社は今、脱炭素化に向けた製鉄業界とのパートナーシップをリードしようとしている。技術力ある日本企業とのパートナーシップの進化が、藤枝さんの課題となりそうだ。

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