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本当に知ってる?「LGBTQ+」当事者のホンネ

本当に知ってる?「LGBTQ+」当事者のホンネ

#SHOW CASE

今年、約3年振りに「東京レインボープライド2022」が代々木公園で開催されることが決定しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、2020年と2021年はオンラインにて開催。「オンラインの方が参加しやすい」というLGBTQ+当事者や首都圏外の方々からの声もあり、昨年は総視聴者数が約160万人を記録していました。そして今年はオフラインとオンラインでの開催となるということで、さらに注目を集めています。

2019年 東京レインボープライドの様子

こうしたなか、同イベントに協賛する求人検索エンジンIndeedが、プライド月間である6月に、LGBTQ+当事者の声を世の中に届けるライフマガジン『BE』を創刊することを発表しました。『BE』は、LGBTQ+当事者の方から、働くうえで抱えるさまざまな悩みや声を集め、企業や組織で働くリアルを映し、誰もがわかりやすく知ることを目指した初めての雑誌です。

さて、近年のSDGsやESGの関心の高まりを背景に、ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)推進をすすめる企業は増えていますが、その取り組みは実際、当事者にはどのように受け取られているのでしょうか。

3月某日、東京・渋谷区で、第一回目の編集会議が開かれ、創刊スタッフに就任したサリー楓さん、かずえちゃん、松岡宗嗣さんが一堂に顔を合わせました。3人は、企業や組織で働きながら、当事者としてLGBTQ+の人々も生きやすい社会の実現のために活動しています。


編集会議では、当事者として企業や組織で働いた経験がある3人だからこそできる、踏み込んだ議論が展開されたようです。編集会議での3人の言葉を聞いていると、自分自身もひやりとすることも。果たしてそれはどんな意見だったのか、ここで紹介していきます。

松岡宗嗣さん。政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人fair代表理事。ゲイであることをオープンにしながら、多様なジェンダー・セクシュアリティに関する記事を執筆。著書に『あいつゲイだって – アウティングはなぜ問題なのか?』(柏書房)、共著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)など

「ここ10年、LGBTQ+という言葉は世の中で広く知られるようになりましたが、一方で、“わかったような気になっちゃう問題”も顕在化しつつあるのではないかと思います」このように話すのは、一般社団法人fairで代表理事を務める、松岡さんです。LGBTQ+という言葉が社会に浸透し、その認知や理解は進んでいますが、実は当事者と非当事者間では認識のズレが存在していると指摘します。

例えば、新入社員が面接で自分のセクシュアリティをカミングアウトすると、人事部から、「弊社には、〇〇さんというゲイの人もいますよ」と言われることがあるとか。良かれと思って何気なく話しているのかもしれませんが、よくよく聞くとアウティング(本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露すること)だとわかり、当事者としては首をかしげることもあるそう。

オンラインで編集会議に参加するかずえちゃん。2016年にYouTubeチャンネルをスタートし、「LGBTQ+って身近にいるよ」「あなたは1人じゃないよ」と伝える活動を行う。2020年より、ダイバーシティ推進に力を入れる三洋化成工業で働いている。

かずえちゃん「自分は以前ウェディングや保険会社で働いていましたが、当時はカミングアウトする気は全然ありませんでした。カミングアウトをしやすくさせてあげよう、という気遣いは当事者にとって怖い場合もあると思います」

松岡さん「カミングアウトされたときに、“私もLGBTQ+の友人がいるから理解できるよ”というのも注意が必要です。大丈夫だよ、と相手を安心させたいという気持ちは大切ですが、例えば『女性の友人がいるから女性を理解できる』という言葉がおかしいように、友達がいるからといって、目の前にいる『相手』のことがわかるわけではありませんよね。枠にあてはめて“わかった気”になるより、例えば『何か困ったことや疑問があればいつでも教えてほしい』など、そのひと個人に寄り添った声がけのほうが重要ではないかと思います。」

サリー楓さん。現在、日建設計を拠点に建築や事業の提案を行う傍ら、トランスジェンダー当事者としてLGBTQ+に関する講演を行う。自身が出演するドキュメンタリー映画「息子のままで、女子になる」が2021年に公開された。

一見すると良いように見えて、実は当事者が戸惑うような企業の取り組み事例もあるという。

サリーさん「トイレにレインボーマークをつけるということも、利用者のアウティングにつながるので正解だとは言えません。自分は普段、オフィスのセキュリティゲート外にある警備員用のトイレを使用していましたが、会社はそのことを知りませんでした。ある日、それを話したことをきっかけに、オフィス改修時にオールジェンダートイレをつくることになり、今はその設計を担当しています」

「必ずしも“特別”な配慮ではなく、当事者はただフェアに扱ってほしいと願っている場合もある。」
そうした認識のギャップを企業と当事者が話し合う場はまだあまりなく、まずはそのズレをお互いに知ることが重要だと3人は話します。

また、D&Iの取り組みを企業側だけが主導するのではなく、当事者が集まるワーキンググループなどと共同で進めるとズレの解消に役立つこともあるそうです。「こんな発言をして当事者を傷つけてしまったことがある。その後、当事者とどういうコミュニケーションを重ねていったか」など、ときには人事部の失敗談を共有することも有効かもしれません。

ライフマガジン『BE』では、こうしたたくさんの声を集めるメンバーとして、さらに元バレーボール選手の滝沢ななえさんが創刊スタッフに就任されました。
6月の創刊に向けて、今後もさまざまな議論が生まれていきそうです。多様な性の存在と社会のあり方について真正面から向き合う、“生きる、働く”を知るライフマガジン『BE』の創刊に今後も注目していきたいですね。

“声”の応募は、Indeed Rainbow Voice 2022公式サイトから。

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