【解説】SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは?解決すべき課題や現状
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SDGsの目標の一つに、目標6「安全な水とトイレを世界中に」があり、水資源に関するテーマの元、6つの目標と2つの方法がターゲットとして掲げられています。では「安全な水とトイレを世界中に」とは一体どのようなものなのでしょうか。ここからは、その現状や達成に向けて私たちができることなどを解説します。
SDGs目標6の現状と課題について
①世界における衛生管理の現状は決して良好ではない
SDGsでは「安全な水とトイレを世界中に」が第6の目標として定められています。具体的には「2030年までにすべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する」とされていますが、これは世界的に見ると水道設備やトイレが適切に整備されず、不衛生な環境での生活を強いられている人が多いためです。SDGsでは水道のパイプで管理されている水を「安全な水」と定義していますが、世界の人口のうち、約22億人が安全な水を使えないと言われています。そして、安全な水にアクセスするための目安として、WHOでは「1km以内に一人1日20リットルの水を確保できる場所があること」と定めていますが、この条件を満たしていない人は世界で約9億人。トイレや公衆便所などの衛生施設を利用できない人は24億人以上、糞便で汚染された水を飲料水として使っている人は約18億人いるとされています。
加えて、汚染水が適切に処理されず、そのまま垂れ流されている地域は少なくありません。年間に約180万人の子供が不衛生な水を原因とする疾患で死亡していますが、これは衛生管理を適切に行うことができないためです。どの国も衛生管理の重要性を理解し、様々な課題に取り組んでいます。しかし、人材や設備が整っておらず、望む結果を得られていないのが現状です。特に経済や治安が不安定な国は衛生管理に取り組むのが難しいと言えます。
②日本は水資源が豊富だが楽観視はできない
日本は「水と安全は無料」と言われているほど水資源が豊富な国です。上下水道が一般家庭に万遍なく普及している他、毎日入浴できるほど水を使うことができる国は日本以外にはほとんど存在しないとも言われています。しかし、水資源は無限ではなく、日本でも水の使い過ぎによる生態系への悪影響が問題視されています。地下水が枯れて地域固有の動植物が死滅したり、地盤沈下が発生するなどのトラブルが主な例です。また、日本は様々な食品を輸入していますが、これらの食品を作るためには多くの水を使います。動植物の飼育や製造設備の衛生管理にも大量の綺麗な水が必要です。つまり、日本は間接的に諸外国の水資源を消費していると言えるでしょう。
③水不足の危険性について
SDGsでは水に関する様々な問題を2030年までに改善することを第6の目標として定めていますが、これは現状のまま放置すると深刻な水不足が生じると予測されているためです。地球に存在する水資源全体の中で飲用に適している水はわずか0.01パーセントであり、世界中の人々が0.01パーセントの水で命を繋いでいると言えるでしょう。しかし、すべての人々に万遍なく水が行き渡っているわけではありません。一部の地域では浴びるように水を使うことができる一方、別の地域では汚染された水ですら満足に入手できないのが現状です。地域別にみるとアフリカ諸国が慢性的な水不足に陥っていますが、これは元から乾燥した地域であること以外に水道設備が十分に整っていないことが大きな理由です。
アフリカ諸国は経済や治安が不安定な所が多く、水道管を敷設することも容易ではありません。結果、これらの地域に住む人々は安全な水にアクセスできず、様々なリスクを強いられているのです。また、水資源が豊富な地域でも水の使い過ぎによる水源の枯渇が問題になっています。
SDGs目標6達成に向けて私たちができること
SDGs目標6を達成するのは非常に難しいイメージがあるでしょう。水資源の確保や安全な水へのアクセスは大掛かりな取り組みですが、一方で個人ができる小さな取り組みの積み重ねも重要です。
①水の消費量を正しく把握することが大切
世界中の人々が水を使う際、ほんの少し意識を変えるだけで水資源に関する問題が改善されると言っても過言ではありません。水の枯渇を防ぐためには、何よりもまず自分がどれだけの水を消費しているかを正しく把握することが大切です。
気づかないうちに水を浪費している人は決して珍しくありませんが、これは水が身近な物であり、あって当たり前と感じているのが大きな理由です。日本は水道設備が広く行き渡っている国であり、蛇口をひねれば安全な飲み水が簡単に入手できます。そのため、水を出し過ぎたり安易に水を捨ててしまうことが常態化していると言えます。個人でできることは決して大きくありませんが、自分がどれだけ水を無駄にしているかを把握し、生活の中で節水を心がけるのも取り組みの第一歩です。
②家庭での節水について
一般家庭での節水には様々な方法がありますが、もっとも簡単にできる方法として使う量の削減があります。家庭用の水道の多くは蛇口を全開にした際、1分間に約12リットルの水が出る構造になっています。炊事などの水仕事を行う際は蛇口をこまめに閉めるだけで水の無駄遣いを防ぐことが可能です。日常生活の中で食器の洗浄や歯磨き、入浴時のシャワーの使用など蛇口を開きっぱなしにする機会は少なくありません。蛇口を20分開きっぱなしにすると家庭用の浴槽が満杯になるほどの水が無駄になってしまうと考えれば、蛇口をこまめに閉めることの重要性が理解できるでしょう。トイレを使う際は大小のレバーを正しく使い分けることで、一度につき約2リットルの水を節約できます。洗濯も水道水をそのまま使うのではなく、お風呂の残り湯を使うなどすでに使った水を再利用するのも効果的な方法です。
③汚れた水を減らす工夫も欠かせない
SDGs目標6では汚染水を重要な問題と位置付けています。汚染水は工場などの大規模施設から発生するイメージがありますが、実際は一般家庭から生じる生活排水が汚染水の大半を占めていると言われています。1つの世帯から生じる生活排水は少量ですが、世帯の数が増えればそれだけ排水の量も増加します。そのため、一般家庭での汚染水の削減こそが汚染水対策の重要なポイントと言っても過言ではありません。家庭でできる汚染水の削減として、炊事や洗濯における工夫が挙げられます。食器や調理器具を洗う際、付着した汚れをそのまま流水で取り除くのは汚染水の増加に繋がります。洗う前に布で汚れを拭き取ることが水の汚染と消費量を削減する工夫と言えるでしょう。
洗濯はお風呂の残り湯を使う他、回数を減らすこと、節水型の洗濯機を使うのも効果的な方法になります。また、洗濯や洗車に用いる洗剤を適量に留めることも汚染予防に繋がります。大量に使っても洗浄力が向上するわけではありません。洗剤は汚れを取り除く一方、水質を損ねる原因にもなります。指定された量以上を使わないことを心がけましょう。この他、米のとぎ汁など栄養を含んだ物を下水に流すことはと水の富栄養化を招き、赤潮などの深刻な問題を引き起こす原因にもなります。栄養を含んだ水はそのまま下水に流さず植木に撒くなど、毎日の暮らしの中で汚水を発生させない工夫が求められます。
自分の暮らしに影響する問題と認識することが大切
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は非常に重要な問題である一方、水を自由に使うことができる環境で暮らしている人にとってはその問題を正しく認識するのが難しいのも事実です。
しかし、水を取り巻く問題は世界規模で考える事柄であり、誰にとっても無関係な話ではありません。毎日の暮らしにも大きな影響を及ぼすこの問題に真摯に向き合う姿勢を持ち、一人ひとりが考えて行動していきましょう。