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これは知っておきたい。幸せな結婚に隠れる問題たち

これは知っておきたい。幸せな結婚に隠れる問題たち

#SHOW CASE
  • ジェンダー平等を実現しよう

6月に結婚すると幸せになるという言い伝えから生まれた言葉、ジューンブライド。6月は結婚式が多い月の1つです。結婚と聞くと、幸せな結婚生活、新たな人生のスタートなど、どうしても良い面ばかりに目が行きがちですが、実はその裏には、課題や問題も沢山あります。同性婚や夫婦別姓といった家族の在り方については常に法廷で注目される問題で、日本におけるこれらの 特殊な制度は、世界の潮流から大きく取り残されています。今回は知っておきたい結婚にまつわる様々な問題について取り上げます。

取り上げる社会課題
・永遠の輝きが環境破壊に。ダイヤモンドが抱える問題
・経口中絶薬は配偶者の同意が必要
・同性婚は認めない、婚姻の不平等
・世界では日本だけ?夫婦同姓制度
・まとめ「当たり前って何だろう?」

永遠の輝きが環境破壊に。ダイヤモンドが抱える問題

婚約指輪や結婚指輪で使われているダイヤモンド。皆さんはその原石がどのような環境で採掘されたか知っていますか?地下資源であるダイヤモンドは、その鉱山を作るために大規模な 森林地帯が伐採され、露天掘りと呼ばれる方法で地下数百以上に渡って根こそぎ掘り起こされます。森林の生態系は壊滅状態になり、川も消滅。二度と同じ形には戻りません。SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」には以下のターゲットが掲げられています。

15-1「2020年までに国際的な協定にしたがって、森林、湿地、山地、乾燥地など陸上の生態系と、内陸の淡水地域の生態系、および、それらがもたらす自然の恵みを、守り、回復させ、持続可能な形で利用できるようにする」
15-4「2030年までに、持続可能な開発のために欠かせない山地の生態系の能力を強めるため、多様な生物が生きられる山地の生態系を確実に守る」
15-5「自然の生息地がおとろえることをおさえ、生物の多様性が損なわれないようにし、2020年までに、絶滅が心配されている生物を保護し、絶滅を防ぐため、緊急に対策をとる」

ダイヤモンドの採掘による森林伐採を止めることはこれらのターゲットの目標達成に寄与します。それだけでなく、地球温暖化や地下水の汚染、洪水や干ばつといった災害にも影響を与えます。森林の保全は生態系を守るだけでなく、あらゆる環境問題の解決に繋がる需要な取り組みなのです。

ダイヤモンドの採掘と聞くと、川床の砂利を掘り、平らなザルに入れ、川の中で洗い流して探す映像を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。これはアフリカの一部地域で行われている原始的な方法ですが、この場合も環境問題は深刻です。採掘が終わった後にできる人工池は埋め立てられることもなくそのまま放置され、また新たな人工池が掘られます。その結果、土壌が汚染されるだけでなく、マラリアを介する蚊の繁殖を促したり 、子どもたちが足を滑らせて溺れたりするなど、 様々な危険を生んでいます。
昨今の世界的な流れを受け、ジュエリーメーカーでも人・社会・自然に配慮して採掘されたエシカルなダイヤモンドを使った商品を展開する動きがみられています。一生身に着ける指輪だからこそ、産地が明確で環境基準や認証を満たしたものを自分の目で選び、大切に使っていきたいものです。

経口中絶薬は配偶者の同意が必要

英国の製薬会社が日本での使用許可申請を出している経口中絶薬。母体への負担も軽く、世界中で広く使用されている飲み薬です。この使用について、先月5月の参院厚労委員会で厚生労働省が「服薬での中絶でも配偶者同意は必要だ」との見解を出したことで、SNSでは大きな話題となりました。望まない妊娠で人工中絶手術をする場合、男性側の同意と高額な費用が必要になります。手術を伴わない新たな選択肢は、育児放棄や新生児遺棄といった悲しい事件を防ぐ手段にもなり、早期導入が求められています。例えパートナーが望んでいても、女性が出産できないと決断した背景には、育児環境など様々な問題があると想像でき、女性の性の意に反して配偶者の同意が必要になる点は疑問が残ります。世界を見ても、配偶者の同意が必要な国は日本を含めて11カ国(台湾、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、シリア、イエメン、クウェート、モロッコ、アラブ首長国連邦、ギニア)だけです。厚労省は2021年3月に、女性が人工妊娠中絶する際、ドメスティックバイオレンスなどで婚姻関係が事実上破綻し、同意を得ることが困難な場合に限って配偶者の同意は不要とする方針を示しました。少しずつ制度は変わっていますが、中絶後進国の日本で、女性の身体と人権は今後どこまで守られるのでしょうか。

同性婚は認めない、婚姻の不平等

現在の日本の憲法では、同性婚については認められておりません。世界を見ると31カ国、先進国主要7カ国(G7)にお いては日本以外の全ての国で認められています。2021年3月には、札幌地裁が同性婚の不受理について違憲判決を下し、大きな注目を集めました。同様の裁判は全国5カ所で行われており、先月の5月30日には東京地裁での控訴が結審しました。こちらは11月30日に判決が言い渡される予定です。
法律改正に先立ち、自治体では、同性カップルを婚姻に相当する関係であると認める「パートナーシップ制度」を導入する動きが広がっています。2015年に日本で初めて渋谷区と世田谷区が施行して以降、今では全国149の自治体に広がっています(2022年2月時点)。これにより、今まで認められなかった病院での面会や病状説明、公営住宅への申し込み、ペアでの住宅ローン、携帯電話の家族割適用などが受けられるようになりました。ただし、戸籍上は他人ですので、財産分与や税制優遇、パートナーの扶養に入ることなどはできない状況です。

世界では日本だけ。夫婦同姓制度

結婚したら夫の姓を名乗る。当然のことで何の疑問もない方もいらっしゃるかもしれません。夫婦同姓を法律で義務付けているのは、世界では日本だけです。結婚したらどちらかの姓に統一しなくてはなりませんが、大半は女性が改姓するため、国連からも差別的であると度々勧告を受けています。かつて義務付けていたドイツやオランダは90年代に、最近では2005年にタイで選択的夫婦別姓制度が導入されました。
夫婦別姓について認める裁判はこれまで何度か行われましたが、いずれも最高裁で夫婦別姓は認めないと判決されています。法改正に向け、選択的夫婦別姓制度の導入を容認する動きが国会内でも見られていますが、夫婦間だけでなく、子どもへの影響や社会的混乱も大きいと考えられ、世論も二分化しているのが現状 です。
今の日本で、女性が夫の姓を名乗ることが当然となっている点については、SDGs目標5「ジェンダー平等」にも関係しています。ジェンダーギャップを生んでいる制度が今後どう変わっていくのか、そして私たちはどう変えられるのか。世界も注目しています。

当たり前って何だろう

プロポーズにはダイヤの指輪が用意され、二人で婚姻届けを役所に出し、そして夫の姓になったことで夫婦となったことを実感する。私たちにとっての当たり前という風潮が、もしかしたら誰かを傷つけているかもしれないということは、この問題を知った人にしか気づけないことかもしれません。当たり前という概念をなくし、様々な視点で物事をとらえられることは、あらゆる人にとって生きやすい社会を作り出します。自分の当たり前を押し付けることなく、そして他人の当たり前を批判することなく、多様な価値観を受け入れていくことで、本当の幸せな結婚は増えるのではないでしょうか。

ライター / 黒川
企画・編集 / 北井

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