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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 地域情報サイト「ジモティー」が進める目標12「つくる責任 つかう責任」につながる取り組み

ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs 地域情報サイト「ジモティー」が進める目標12「つくる責任 つかう責任」につながる取り組み

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  • つくる責任つかう責任

ニッポン放送 のSDGs啓発番組『SDGs MAGAZINE』は、新内眞衣さんをパーソナリティに迎え、6月12日に第3回となる放送を迎えた。今回のテーマは、目標12「つくる責任 つかう責任」。番組では、目標12につながる取り組みを進める企業「ジモティー」に注目し、代表取締役社長を務める加藤貴博氏をゲストに招いて、その活動に迫りました。

加藤社長が語るジモティーの取り組みとそこにある哲学

SDGsの達成度、進捗状況に関する国際レポート「Sustainable Development Report 2022」が6月初旬に公開された。ドイツのメディアグループが運営するベルステルマン財団などが作成した同報告書では2016年から毎年、世界ランキングを発表している。日本は今年、19位にランキングされ、昨年から1つ順位を下げたものの、1位からフィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーと北欧諸国が並ぶ中、アジアのトップを維持し、米国は41位。世界的に、一定の評価を得ている現状がうかがえる。

ただ、「深刻な課題がある」という最低評価を受けた項目があるのも事実。これまでの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に加え、今年新たに“最低評価”に転落したのが目標12「つくる責任 つかう責任」だ。

「一人一人が心掛けやすい身近なテーマであると思うので、本気でやっていかないといけないなと改めて思いました」と新内さん。そこで、番組はこの目標に関わる取り組みを進める企業として株式会社ジモティーに着目。ゲストとして代表取締役社長の加藤貴博氏をスタジオに招いた。

加藤氏は早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、2001年に株式会社リクルートに入社。インターネットマーケティング局、フロム・エーナビのプロデューサー、カーセンサーネットの編集長、新規事業開発責任者を経て、11年に株式会社ジモティー代表取締役に就任した。

同社は地域の情報サイト「ジモティー」を運営。「売ります・あげます情報」「求人情報」「不動産情報」などのカテゴリ別、都道府県や市区町村といった地域別に掲載された情報を掲載し、「地域の情報インフラ」として全国に利用者が広がっている。その数、月間で1000万人以上。登録料や手数料が一切かからず無料で利用できる点が特長で、自治体と提携したリユース活動の促進、食品の譲渡や販売を通じたフードロス削減などSDGsに関連した用途での利用者が増加中。21年9月に発表された第4回エコプロアワードでは「環境大臣賞」を受賞し、注目度を高めている。

新内 「そんな加藤さんにお話を伺っていきます。よろしくおねがいします!」

加藤 「よろしくおねがいします!」

新内 「今回のテーマが目標12『つくる責任 つかう責任』。加藤さんが運営する株式会社『ジモティー』も地域情報サイトとして、それにまつわる取り組みをされているとのことで、改めてどういった取り組みをされているのか、伺っても良いでしょうか」

加藤 「地域情報サイトのジモティーでは、無料で不要品を掲載することができ、引っ越しであったりとか、使わなくなってしまったものを掲載していただいたりしています。手数料なども一切ないので、そのまま無料で取引することが可能になっています。有料の取引もあるのですが、一番シェアの高い価格帯がゼロ円。ブランド品を高く売るとか、いわゆるお金を儲けるという目的性よりは、使わないものを捨てるより譲って必要としている人に使ってもらおうという目的で利用される方が多いサイトになっています」

新内 「無料で、どうやって運営していくのですか」

加藤 「フェイスブックやツイッターと似たモデルだと思いますが、そのサービスを使っていただくことで課金するというよりは、コンテンツの間に配信型の広告を掲載させていただいて、利用する中で興味関心のある広告を押していただくことによって収益を担保する形になっています。ツイッターとかフェイスブックとかも一切、利用料がかからないメディアですが、これによってゼロ円のお取引を重要性のあるコンテンツとして扱うことが可能になっています」

新内 「地域でやることには意味があるのですか」

加藤 「そうですね。郵送取引には、それはそれで便利な側面がありますが、家具家電のような例えば冷蔵庫、洗濯機、机、ベッド、ソファなど郵送費だけで数万円かかってしまうものは、中古品のリセールバリューが郵送費以下という場合も当然出てくるので、なかなか郵送を前提とした取引だと成立しません。メルカリさんやラクマさんなどのフリマアプリのような、すごく大きなサービスがある一方で、われわれのサービスでは近所の方が近くまで取りに行くことによってコストが究極的に削られる、家の近くだからコストがそのご本人に合う。そうしたニーズが一定数存在する。地域性というのは、そういう取引では絶対的に重要だと思っています」

新内 「車なんかも、掲載されることがあるのですか」

加藤 「家具家電と同様に、車や自転車、バイクなどの乗り物も非常に多いです。大学生の方なら卒業されるタイミングでお住いのエリアが変わって、不要になるということも多い。お子さんの自転車だと、すぐサイズアウトする。そうした買い替えサイクルのあるものが取引されているケースはすごく多いですね」

地域に特化しているからこそ生まれるスピード感

新内 「サイト全体ではどれくらい取引がされているんですか」

加藤 「月の件数は数十万件で、見ていただいている方は月間で1000万人を超えています。そういった方々が投稿したり、不要品を出す側、もらったり買ったりする側の両方に分かれて使っていただいているという状況ですね」

新内 「CMで見たことはあるんですけど、実際に使ったことはないので、ちょっと自分の電化製品とかが壊れたら見てみようと思っていたんです」

加藤 「使わなくなったものや買い替えたもの、不要品を『ゼロ円で譲ります』と投稿していただくと、家電製品とかでまだ使えるものなら10年落ちのものでも、10分以内に数十件の問い合わせが来たりすることもあります。『30分後、1時間後に取りに来ていただける方を優先します』みたいな投稿も結構あるんです。スピード感が早いのが特長ですね」

新内 「すごい! それは、地域に特化しているからこそできることですよね」

加藤 「『今日、行きます』みたいな・・・」

新内 「急に電子レンジが壊れてしまったとしても、もしかしたらマッチングする可能性があるということですね」

加藤 「十分にあり得ます。不要品って家にあると、何か邪魔じゃないですか。心の負担になるので、なるべく早く処分したい。そういう使い方をしていただくパターンが、すごく多いですね」

新内 「審査みたいなものはないんですか」

加藤 「あります。やはり個人の信頼性は重要だと思っていますので。われわれのサービスを使うに当たって、使うカテゴリや投稿する内容、取引内容に応じて段階に分かれていて、SMS認証とか、身分証認証とかのステップが必要な場合もあります」

新内 「それは安心ですね。法人も個人も無料ということなのですが、法人の方も取引されているのですか」

加藤 「はい、法人の方もすごく多いです。例えば、コロナ禍などでお店を閉じる場合、お店の不要品を処分するのはすごくお金がかかるんです。そうした時に譲られると、同業の方もものすごく助かる。お店に必要なものを“お下がり”のように、買い替えた法人の方から譲っていただくというようなケースもあるので、法人同士のやり取りは多いですね。民泊をやられている方にも、家具家電をそろえる際に多く使っていただいています。ローコストに事業を開始することができますしね」

ジモティーを立ち上げた理由とは

ここで新内さんが気になったのが、ジモティー立ち上げの動機。加藤氏は、前職での経験から「意味のある場所」をそこに見出したという。

加藤 「私は、前職がリクルートという会社で、逆に有料の情報だけを扱っていました。営業マンをやったり、商品企画、編集などをやっていたりすると、いろいろなお客様にお会いします。街のスクール、例えば茶道教室を運営されているお客様にお会いした時に、生徒さんの月謝は数千円と、それほど高くないので、そこに対して広告を大量に投下して教室を拡大するという考え方にはならないのが普通です。でも、茶道教室や小さなお店の情報というのは、地域の人にとってはすごく有効な情報になり得ます。みんなが知りたいと思う情報は、実は街にいっぱいある。資本主義的に大きくなることを目的にしている会社の情報は掲載される場所が生まれやすいですけど、不要品のようなお金になりづらい情報を載せる場所って、それを作るインセンティブが資本主義的に考えてしまうとなかなか働かない。ただ、それをみんなに見えやすい状態にしたら、すごく意味のある場所、メディアができるんじゃないかと感じ、逆に、お金にならないようなものを扱うメディアをつくりたいなと思って始めたというのが背景ですね」

新内 「そこから、ちゃんと会社として立ち上げて形にしているのが、すごいなと思いました」

加藤 「そうですね、大変でした(笑)。直接的に手数料をもらうビジネスモデルではないので、時間もかかりますし、収益性を直線的に追うモデルでもないので、時間と根気は必要でした」

新内 「2011年からジモティーの代表取締役を務められている」

加藤 「2011年に始めて、ようやく上場を2年前にしたので、上場までに9年。時間としては結構かかったな、という印象です」

自治体との連携も推進 ~東京・世田谷区の例

今や月間の利用者が1000万人超が利用する大きなメディア、サービスとなったジモティーだが、最近注目を集めているのが自治体と連携したリユース促進の取り組み。その一つが昨年10月にスタートした東京・世田谷区との実証実験だ。家具家電、子供用品、レジャー用品など、まだ使えるものを持ち込めるリアルのスポットを世田谷区喜多見に設置。予約した上で職員に渡すことで、ジモティーを通じて希望者に譲れる仕組みとなっている。

加藤 「使えるものだったらこのスポットに持ってきてくださいという告知を世田谷区さんにホームページでしてもらっています。使える状態のものは、このスポットに集めてジモティーに掲載する。有料のものも一部あるのですが、掲載されたものを欲しい方、買いたい方は、このスポットに来ていただいて、もらったり買ったりできるという形です。粗大ゴミとして出そうと考えていたものが、使えるものだったら譲るというほうに流れていく。そんな形を増やしていこうという取り組みを、世田谷区さんと共同でやっています」

新内 「世田谷区公認のリサイクルショップみたいな感じでしょうか」

加藤 「リサイクルショップと少し違うのは、全てを有料で販売するわけではないということと、世田谷区の方が持ち込むという限定性があることですね。ただ、もらう方、買う方は世田谷区だけではなく、ジモティーを見ていただいている方全員が対象になるので、基本的にゴミを減らす活動に直結しますし、売ってもらう人や譲ってもらう人は、かなりお得に欲しい物を手に入れられる。世田谷区の実績では、われわれのサービスで告知させていただいて、半年間で集まった1万2000品以上の物の95%近くが譲渡されています。不要品の重さに換算すると68トンの削減につながっています。ジモティーで告知すると、成約率としてこれだけ高い状況をつくれる、非常に多くのリユースを成功させられるということが実証できています」

新内 「実際スポットに行けば、実際に物を見られるというのも良いですね」

加藤 「そうですね。多くの方は、新しく入荷されたもの、その場に行けばあるかもしれないものを先に電子チラシ的にジモティーで見ていただいて、実際に来て選んでいただいています。この世田谷区の不要品に関しても、掲載から1週間以内にほとんどのマッチングが終わっています」

新内 「そのスポットは、いつまで続けられるのでしょうか」

加藤 「基本的には、常設化を前提に実証実験を進めていますので、やめる予定はないです。このようなスポットは日本全国にあったほうが良いと思っているので、市区町村さんと話していくことが重要だと思っています」

ジモティーは粗大ゴミのリユースや啓蒙活動などに関する協定を東京・武蔵野市、神奈川・川崎市、兵庫・加古川市、北海道・江別市など多くの自治体と結んでおり、こうした取り組みはどんどん全国的に拡大していくことも期待される。

加藤 「行政の皆さんとの協定数は今40カ所以上で結ばせていただいていて、このリアルのスポットの展開も含めて、どこの街でもこうした仕組みを使って不要品を譲渡してもらえるような形にはしていきたいなと思っています」

新内 「東京に住んでいて粗大ごみを出そうと思うと、空きが無くて1カ月後とかになることもあります。すぐ持っていける場所があるというのは、すごく便利だなとも思います」

目標1につながる活動も

さらに、ジモティーでは「必要なものを必要な人へ」譲り合う仕組みの提供を促進。例えば、ひとり親家庭に優先的に支援品を受け渡せる機会の創出、そこにつながるキャンペーンなどを積極的に行っている。

加藤 「われわれのサービスを使っていただいているユーザーの方たちの中には、ひとり親家庭の方、留学で日本に滞在されている方もかなり多いんです。生活コストをなるべく抑える必要性があるシーンで使っていただくケースは当然多くなりますし、ひとり親家庭の方が使っていただいているのは、われわれの調査でも分かっていたので、そういったイベント的な取り組みを今後も増やしていきたいと思っていますし、そうした観点を強くしていく必要があるなと感じています」

新内 「SDGs的にも目標12だけではなく目標1の『貧困をなくそう』にもアプローチした素敵な取り組みですね」

加藤 「ありがとうございます」

そして、最後に新内さんからSDGsの目標年である2030年に向けた「提言」を求められた加藤氏は、ジモティーの根底にもある「つくる責任 つかう責任」を果たす上で重要になる考え方、思いを口にした。

加藤 「身の回りで、まだ使えるものであったりとか、もしかしたら使う人なんていないよなと思ったりするような物でも、意外と使いたいとか、必要だと思っていただける物って、自分が思っているよりも実は幅が広いんだなということを感じます。物もそうですし、地域で本当はシェアされたほうが良い情報を、なるべく周囲の方に伝えていけるような活動を私自身も含めて2030年に向けてできると、リソースの無駄遣いが少しでも減らせて、豊かな生活につながるのではないでしょうか。ぜひ、皆さまにもそうした活動をしていただけると良いなと思っております」

今回の放送でジモティーの仕組み、取り組みを知った新内さんは「使ってみようと思います。買い替えようかなと思いつつ、なかなか踏み切れなかったりする時に、譲渡をできる仕組みがあるのはすごく良いと思いますし、取引の成立率の高さを見ても、それだけ皆さんに信頼されているサイトなんだなと思いました。ぜひ皆さんも活用してもらえればと思います」と、強い関心を抱いた様子。新たなビジネスモデルを構築し、リユースの促進、ひいては目標12「つくる責任 つかう責任」につながる活動を“持続可能”にしているジモティー。その取り組みは、今後さらに注目を集めていきそうだ。

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