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【解説】SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?解決すべき課題や現状

【解説】SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?解決すべき課題や現状

#SHOW CASE
  • 産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で「持続可能な開発目標」を意味します。SDGsには17の大きな目標と169のターゲットがあり、このSDGsの目標の9番目に掲げられたのが、「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。これは一体、どういうもので、私たちにどう関係するのでしょうか。今回は、SDGs目標9でポイントとなるインフラの定義を押さえるとともに、世界と日本の現状や課題を考え、さらに、私たちが個人として、また企業としてできることを取り上げます。

SDGs目標9の現状と課題について

SDGs目標9にはそれを具体的に考えるのに役立つ8つのターゲットが設定されています。それらのターゲットを見ると、「インフラ」という言葉が複数回出ていることがわかります。実際、SDGs目標9で掲げる「産業と技術革新」には、基盤となるインフラの整備が欠かせません。そこでまずは目標で目指すインフラのありようやイメージし、さらに、世界や日本が置かれている現状と課題を考え、自分事としてとらえられるようにしていきましょう。

SDGs目標9が目指すインフラとは

インフラには、電気・ガス・水道・交通・通信など、生命維持や社会活動に欠かせないもののほかに、インターネットも含まれます。SDGs目標9のターゲット9.Cに「後発開発途上国の情報通信技術へのアクセス向上」「2020年までに普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供」と書かれていることからも、インターネットの重要性が理解できます。

これらのインフラは、持続可能かつ強靭(レジリエント)なものでなければならないことも、各ターゲットの記載から伝わってきます。強靭とは、強くしなやかで粘りがあることを示し、レジリエントとは、速やかに元の状態に回復する能力や性質を表します。つまり、絶対に壊れないインフラではなく、壊れたとしてもすぐに元の状態に戻せるインフラを目指すということです。世界には、人口集中が著しい大都市もあれば、住む人が限られるエリアもあります。それぞれの地域や置かれた現状に合わせた、持続可能かつレジリエントなインフラを目指すことが大切といえるでしょう。

世界の現状と課題

SDGs目標9を取り巻く世界の現状と課題ですが、インターネットに関しては約37億人がアクセスできていない現状が報告されています。加えて、特に開発が遅れている地域を中心に、17パーセントの人が携帯電波すら届いていません。社会インフラ全般が整っていない開発途上国で、通信環境の遅れが顕著です。2017年のユニセフ・WHOの発表では、世界で約21億人が安全な飲み水を自宅で入手できていないとされています。これは世界人口の約10人に3人となっており、大きな課題と認識できるでしょう。また、先進国と開発途上国における産業と技術革新に必要な研究開発費の偏りも指摘されています。生産活動によって新たに作り出されたものを示す「産業の付加価値」も、世界全体のGDPで見た製造業の付加価値は増加しているものの、格差が激しいのが課題といえます。

日本の現状と課題

世界各国におけるデジタルトレンドの統計結果を集計したデータブック「DIGITAL 2019」によると、日本のインターネット普及率は94パーセントに上ります。ですが、山間部では開発が遅れており、それらの地域では事故や災害などで活用できないという課題があります。光ファイバの敷設が進み、通信環境は大きく進化していますが、令和3年に発表された総務省の「情報通信白書」では、IT技術の知識や活用の面で世界に遅れを取っている現状が指摘されています。
厚生労働省の資料によると、2020年の時点で日本の水道普及率は98パーセント以上となり、世界的に見ても高水準です。それでも、高度成長期に整備された水道管が多く、老朽化が問題となっており、持続可能な社会に黄色信号が点灯している状態といえます。

SDGs目標9達成に向けて私たちができること

SDGs目標9達成には国際的な取り組みが必要ですが、個人レベルでも、企業の中でもできることはたくさんあります。どのような取り組みを行うにしても、自分や所属している会社が置かれている現状を考え、より効果が見込めることを継続して行う必要があるでしょう。こちらでは、私たちが実施できることを2つのポイントに絞って考えます。

災害への備えを充実させる

個人でできる取り組みとして、災害への備えの充実が挙げられます。日本は災害大国との認識を持つ方は多いでしょう。近年は特に、地域を問わず地震や水害などが頻発し、部外者として傍観していられない現実があります。災害の際は、電気やガス・水道などのインフラがストップすることが想定されます。また、人口が集中した地域で大規模な災害が起きると、なかなか助けの手が届かないかもしれません。それらの不測の事態を想定し、モバイルバッテリーや小型ソーラーパネルを用意したり、非常用トイレを備えておくことができるでしょう。個人個人が自分の身を守る準備をしておくことで、社会全体の復旧のスピードアップに貢献できるに違いありません。

企業では、より踏み込んだ内容、自社の強みを生かした取り組みができるかもしれません。例えば、電気通信サービスを提供している企業では、災害時の停電の際にも電波を送信できるよう、全国にある通信基地局にバッテリーや発電機を配置し、来るべき災害に備えています。加えて、災害時の通信環境確保のため、移動基地局や移動電源車を配備する企業もあります。自社での備蓄を進め事業継続計画(BCP)を立てるとともに、社会全体に貢献できる取り組みを考え、実行可能な手段を事前に用意しておくことがポイントになります。

徒歩や自転車、公共交通機関を利用する

個人でできることとして、なるべく自家用車の使用を避け、徒歩や自転車、公共交通機関を積極的に利用することが挙げられます。車を使うより、電車・バスなどを利用した方が二酸化炭素排出量を抑えられるとともに、公共インフラを使うことで費用を賄い、インフラ自体の維持にもつながります。

公共交通機関の使用は、単に環境に負荷をかけないというだけではありません。今まで車を使っていたところを徒歩などに切り替えると、運動する機会が自然と増え、健康維持にも役立ちます。SDGs目標9の追求は、一石二鳥になるということです。便利な世の中になり、ついつい車に頼りがちですが、自分の健康維持や持続可能な社会といった視点を持つと、公共交通機関の利用をポジティブに考えられるかもしれません。

住んでいる場所によっては、公共交通機関の利用が難しく、物理的な距離があるため、移動に自動車を使わなければならないケースもあるでしょう。そのような場合でも、時差出勤をして渋滞を避けたり、アイドリングをしない、エアコンの温度を適切にするなどして、二酸化炭素排出量を抑えることができるに違いありません。できないことではなく、自分の状況に応じてできること、継続的に行える取り組みに目を向けることで、目標達成に貢献できるでしょう。

自社の強みを生かし、公共交通機関の利便性を挙げる取り組みをしている企業もあります。例えば、鉄道の駅の様子を監視し、異常を検知するとアラートを発生させるAIカメラを開発した企業があります。AIカメラの設置により、事故やトラブルを未然に防ぐことができます。そのことで、安全かつスムーズな鉄道運行が可能になり、利便性向上、ひいては利用者増加にもつながります。

SDGs目標9を自分事としてとらえる

目標達成のポイントとなるのが、持続可能かつレジリエントなインフラです。産業や技術革新に必要かつ持続可能なインフラのためにできることは、災害への備えをする、公共交通機関を使うなど、個人レベルでも企業単位でもたくさんあります。目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を実現させるため、一人ひとりが自分事として考え、行動していくことが大切です。

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