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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を政策アナリスト・石川和男さんが解説 #前編

ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を政策アナリスト・石川和男さんが解説 #前編

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  • エネルギーをみんなにそしてクリーンに

新内眞衣さんがパーソナリティを務めるニッポン放送のSDGs 啓発番組 『SDGs MAGAZINE』。7月17日の放送では、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」をテーマに、エネルギー問題を深掘りした。今回の有識者ゲストは、政策アナリストの石川和男氏。猛暑日が続き、電力逼迫がニュースにもなる中、その原因や課題を“エネルギー問題のプロ”が分かりやすい言葉で解説してくれた。

今年4月の放送から同番組のパーソナリティを務める新内さん。7月初めには番組以外で初めてSDGsに関わる仕事をする機会に恵まれた。東京・お台場にある日本科学未来館で開催された「Miraikan for 2030 プラン発表会」に特別ゲストとして登壇。IBMフェロー、米国カーネギーメロン大学特別功労教授の浅川智恵子さんが新館長に就任したことを受け、未来館が発信したい、実現したい未来を提示するイベントに参加し、浅川さんとのトークセッションなどを行った。

Miraikan for 2030 プラン発表会

新内 「『SDGsを発信していく側になっていかがですか』ということを聞かれ、SDGsって一見難しそうに感じるけど、一個一個ひも解いていくと身近なことがすごく多い。リスナーの皆さんと一緒に学んでいます』という話をさせていただきました。その一つの例として食品ロス問題の話もしたのですが、このSDGs MAGAZINEをやらせていただいていたからこそ答えられたように思います。いい経験になりました」

今回番組で扱うテーマも、まさに「身近」といえる目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。6月末から猛暑日が続き、電力逼迫がニュースにもなって節電が日々呼び掛けられる中で、新内さんは「私は結構、節電している方だと思っているんです。寒がりなので、エアコンを一日つけないことがありますし、つけ始めたのも最近。シーリングライトをハロゲン電球からLEDに替えたり、あまり節電を意識しなくても省エネになることはしてきた気がするんですよね」と、これまでも節電を“自分ごと”として捉えてきたことを明かす。

こうしたエネルギー問題の現状や課題を深く学ぶべく、ゲストに迎えたのが政策アナリストの石川和男氏。1965年生まれで、東京大学工学部卒業。89年4月に通商産業省(現経済産業省)に入省し、資源エネルギー庁、中小企業庁、大臣官房等を歴任。現在はエネルギー政策論などに関する政策研究・提言を行っており、エネルギー関連の著書や講演も多い、まさにエネルギー問題のエキスパートだ。

石川 「お呼びいただきまして、光栄でございます」

新内 「打ち合わせの時と雰囲気違いますね」

石川 「緊張しているって言っているじゃないですか」

新内 「打ち合わせから楽しいお話をたくさんしていただいたので、今日は石川さんにお任せしようと思っていたんです」

石川 「本番前なので、好きなことを言っていましたが、これは本番ですからね(笑)。分かりやすく説明していきますので、余計なことを言ったらカットしてください」

新内 「さっきまでライオンみたいだったのに、ハムスターになってしまいました(笑)」

石川氏とエネルギー問題 “運命の出会い”

石川氏の軽快なトークに、スタジオはすっかり和やかなムードに。新内さんは、そんな石川氏に「エネルギーに関わるようになったのは大学時代とのことですが、どのようなきっかけがあったんですか」と尋ねた。

石川 「大学に入って最初は一般教養を2年間学ぶのですが、そのあと専門に行くときに進学するコースを決めるテストみたいなものがあるんです。その成績が良くなかった。大学に入って、学業ではなくて“社会勉強”ばかりして、お金を稼ぐことばかりしていたら勉強がおろそかになってしまいまして・・・。当時、資源工学とかの学問はわりと順位が下で、低い点数の人でも行けるコースだった。それで、仕方なく資源工学、正確には資源開発工学というところに進んだんです。ところが人生というのは分からないですね。そのおかげで今、こうなっているんですから」

新内 「運命ですね」

石川 「もともとは、この道に興味がなかったのだけど、行ったら行ったで面白かった。30年くらい前の話なので今だから言えるけど、今はもうないけど昔は学閥と言って、こういう大学にいると就職が楽だったんです。僕の場合は日本政府ですけど、通産省に枠があるわけ。ここの学部にいたやつはこっち、みたいなものがあって、それにうまく乗ってしまって、また面白い仕事も一杯やらせてもらいました。通産省という職場の中に資源エネルギー庁という部署があって、そこに長くいたんです」

新内 「そこでエネルギーに関してのプロフェッショナルになられた」

石川 「まあ、プロなんて言うと現役の職員の方に申し訳ない。今は役所勤めを終えて自営業ということで独立していろいろなことをやっています。エネルギー関連の執筆とか仕事が多いので、まあよく知っているっちゃ知っているというところですね」

新内 「今はエネルギー関連の仕事が多い」

石川 「特に多いのは講演とか執筆。あと、これもあまり言ってはいけないけど、誰かのゴーストライターみたいなこととか」

新内 「わあ、大変(笑)」

石川 「でも、ゴーストライターって大変なの。僕も普通の人間だから言葉に癖がある」

新内 「石川さんなりの文体とかがあるということですね」

石川 「そう。だから、この文章ってあの人と一緒だよね・・・とならないように注意しています。そう言われたら、それこそプロではないので」

目標7から見るエネルギー問題の現在地

閑話休題。SDGsでは、目標7として「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が掲げられている。この目標7のターゲットは以下の5つだ。
7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国の全ての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。


特に7.1にある「安価」「普遍的アクセス」については、日本国内でも今、大きな問題になっている項目だ。6月27日から3日間にわたって「電力需給逼迫注意報」が発令され、政府は全国を対象に7月1日から9月までの3カ月間を「節電要請」期間にすると発表。全国の家庭や企業を対象に生活や経済活動に無理のない範囲での節電を呼び掛け、特に太陽光発電が減る午後5~8時の節電を求めている。政府による節電要請は、実に7年ぶりのことだという。

新内 「安定的な電力供給が目標に掲げられていますが、電力が足りない状況が続いている原因は、どこにあるのでしょう」

石川 「電気はどこから来るのかといえば発電所ですよね。発電所には、いろいろな種類があって、大きいところでは火力発電所と原子力発電所。この2つは大量の電力を供給しています。それより少し規模が小さいところでは水力発電所。ダムから下の川に流すときに落差で水車をまわす。これは人類が最初に開発した発電方式。その次が石炭、石油、天然ガスで、原子力の順番です。そういう大規模、中規模の発電施設から、私も家の屋根につけていますし、リスナーの皆さんもご自宅の屋根につけていらっしゃる方がいると思うんですけど、太陽光パネルのような小さなものまである。日本の場合、以前は電力会社がほぼ独占的に電気を供給して、われわれ庶民から料金を集めてまた投資して集めて、ということをしていました。そうすることで、発電所の運営がすごくやりやすかったんです。ただ、2016年に自由化というのがあり、発電所の競争だということになりました。料金を集めて投資回収を保証するシステムだったものを自由化だと言ってやめてしまったわけ。そうすると、どんどんどんどん余裕があったものをそぎ落としていく必要が出てきます」

新内 「自由化になったのに電気代が上がりましたもんね」

石川 「そうなんです。普通は逆、下がるのが自由化ですけど、電力マーケットは違った。実は、私は『自由化すると電気代が上がるよ』と言って反対していたのですが、まあ無視されまして・・・。恨み節はさておいて、自由化されて最も影響を被ったのは火力発電所です。大型の火力発電所は日本にたくさんあって、見方によっては無駄。多過ぎないかという考えが確かにあったんだけど、電気ってわれわれの必需材じゃないですか。夏にエアコンが切れたら、冷蔵庫が切れたらどうするんだ、とか。重要インフラだから余裕を持ってというのが哲学だったんです。その哲学が、自由化の時にボンと変わってしまい、今困っていると」

新内 「だから、『電力逼迫注意報』みたいなものが出ることになった・・・と」

石川 「そうなんです。そこに輪をかけてコロナ禍で電力需要が減ってしまったから、より採算性が悪くなり、そぎ落としていくことになった。そこにウクライナの戦争が起きて、値段が上がってしまったと。安い電気は足りないし、今や高い電気も足りない状況。そういう意味では二重苦ですよ」

新内 「これがずっと続いて、今年の冬とか大丈夫なんですか」

石川 「今もまずいと言われていますけど、冬はもっとまずいです。今の発電所の運営状況からすると、夏もしんどいですが、冬はもっと足りなくなる確率が高い」

新内 「いろいろと考えていかないといけないですね」

石川 「もちろん解決策はあるんだけども、それを日本の政府と政治がきちんと判断してやっていかないといけない。僕は、この分野をもともと担当していたから分かりますが、これはちょっとやばいですよ」

新内 「石川さんが考える解決策とかはあるんですか」

石川 「今夏の解決策はありません。節電、まず節電。ただ、冬までにはまだ6か月くらいあるので、解決策があります。まず止め続けている原子力発電所を再稼働させること。原子力発電所って、すぐには再稼働できないんです。スイッチを入れてポンとつくようなものではない。準備に4、5カ月かかるんです。でも、今準備すれば11月の後半、12月には間に合う発電所がいくつかある。そういうのを一つでも間に合わせれば、相当余裕が出ます。あとは、今修理している火力発電所を極力急いで修繕して再稼働できる形に持っていくこと。この2つを冬までにやるためには、日本の政治、政権与党が電力会社に『とにかくやってくれ』と号令をかけることが必要です。あとは、われわれも、メディアも応援すること。みんなでたたいているとシュンとなってしまう。みんなで応援しないと。そうすれば、きつい節電とか、リスクは極端に減ります」

再生可能エネルギーが持つ可能性

そうした電力逼迫の現状を受け、新内さんが切り出したのが再生可能エネルギーの話題だった。SDGsの7.2では「世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」ことが掲げられており、7.aには「再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する」とある。

石川 「再生エネルギーには5つあり、歴史的に一番古いのは水力。それから温泉の近くにある地熱。昔はごみ発電といわれていたバイオマス。4つめが風力。5つ目が日本で急激に流行っている太陽光です」

新内 「その5つの再生可能エネルギーを普及させる上で、課題はあるんですか」

石川 「特に再生可能エネルギー、略して再エネなんて言い方をしたりしますけど、再エネでわれわれがここ近年で話題にしているのは水力や地熱というより、やはり太陽光と風力です。太陽光と風力は、いわば天の恵み。こういうものは身近だし、SDGsでいうところの再生可能エネルギーは、ほとんどのところが太陽光とか風力だと思っていいと思います。これを増やそうと思って、日本も10年くらい前から高く買い取る制度などをつくっていますが、実際のところ風力はあまり流行っていないです。風向が良くないと風車がまわらないし、そういうところがあまりない。日本ではなかなか難しいんです。ただ、太陽光はものすごく流行っていて、10年前に始まったときは世界でも下のほうだったんだけども、今や世界で3番目」

新内 「すごく勢いのある部門なんですね」

石川 「ええ。福島の事故の反射効果もあります。あの時、脱原発が定着して、原子力は駄目だ、その代わりに再生エネルギーだ、と。あれが10年くらい前。さらに、ここ2、3年で脱炭素という言葉が出てきましたよね。SDGsでいうところのクリーンエネルギーというのは脱炭素のことです。日本とか、世界でやろうとなると、太陽光と風力っていうのはちょうどいい。日本で風力は難しいが、太陽光は伸びてきていて、まだまだいけると政府も力を入れているし、これからも力を入れ続けると思います」

地熱発電の難しさ

新内 「日本って温泉が各地で湧きますよね。それを考えると、地熱発電って効率的なのかなと思うのですが、それは違うんですか」

石川 「地熱は、私が政府にいたときに担当していて、本当はやりたかった。日本って温泉資源、地熱資源はこんなに小さな国なのに世界で3番目の量がある。火山帯に乗っかっている国だから。日本って、どこに行っても温泉があるじゃないですか。地熱発電って、言ってみれば温泉を利用した発電方式なので。ただ、2つ課題があって、一つは今ある温泉に地熱発電所を置いてしまうと温泉が枯渇するので当然、その地元が反対する。それなら新しい地熱、温泉を開発しようとなるけれども、これが見つからない。番組の冒頭で、大学では資源開発工学に進んだ話をしましたが、師事した教授に面白いことを言われました。この学問って、いわば石油をどこで掘るだとか、どこを掘ったらダイヤモンドが見つかるだとか、つまり地面を掘る学問なわけです。その先生は『空を見てください。何億光年先でも望遠鏡で見える。でも、地面の下は1センチ下も見えません』と言うんです。見えるか見えないかは、ものすごくハンディになる。温泉とかは1センチ下どころではないですからね。何百メートル、何キロ下にある。石油も、簡単に掘れそうだけど、実はお金がかかっているんですよ」

新内 「地面を掘るには、コストがかかるんですね」

石川 「温泉は、技術的にもそんな簡単には都合よく見つからない」

新内 「温泉って、どこの土地にもあるイメージなので、いけるかなと思ったんですが・・・」

石川 「もし地熱がいっぱい見つかるようになったら、思うに火力発電所はいらないですよ。それくらいの能力があるんだから。だけど、資源はあっても、見つかって使えなければそれは資源じゃない」

新内 「ないのと一緒なんですね」

石川 「そういうこと。だから、早く技術開発してもらって・・・って言っているうちに声のトーンが下がってきてしまうけど・・・(笑)」

新内
 「先進国はもちろん、発展途上国などでも、石油・石炭からすぐに脱却するのも、なかなか難しいとおっしゃっていたじゃないですか。この辺の課題は、どうやって解決していくべきなんですか」

石川 「例えば、石油や石炭、天然ガス、いわゆる化石燃料といわれるものは使い勝手がいいんですよ。使い勝手がいいから、これだけ流行っているわけだけれど、ここから脱却する、脱化石燃料、脱炭素を本当にやろうとすると、これに代わるものを見つけなくちゃいけない。1970年代にオイルショック、石油危機というのがあって中東諸国で戦争が起きたものだから石油が来なくなってしまった。その時に日本でやった政策が脱石油。石油の代わりに原子力と天然ガスを入れましょうという政策をとって、これがうまくいったんです。だから、日本では電力の分野で石油は急激に減ってきたんですよ。ただ、輸送部門、自動車部門はずっとガソリン。リスナーの方も、まだほとんどがガソリン車じゃないですか? 電気自動車は、まだそんなに流行っていない。だから、運輸部門はガソリン・石油ですけど、電力部門は世界的にも脱石油が図られていて、その代わりとなったのが原子力と天然ガス、あとは一部石炭。それは間違いないんですけど、途上国は石油とか石炭、天然ガスのような化石燃料がないと経済成長できないんですよ。エネルギーがないから。じゃあ、どうやって彼らの経済成長を支えるかと言ったら、簡単には・・・というか、そもそも他に手段がないです。あえていうなら原子力が代わりになるけれども、どこの国でも原子力発電所をボコボコとつくれるかというと、それはそれで簡単ではないんです。原発を1個つくるのにも最低で20年くらいかかる。それなりの広さをとって、核燃料を持ってきて、廃棄物の処理をどうするのかとか、いろいろ考えると、その準備を含めれば20年はかかる。火力だって、そんなに簡単にはできない。20、30年かかっているところもありますからね。それくらいエネルギーって大変なんです。だから、途上国に『化石燃料を使うな』と言ったら、それは怒りますよ。先進国だけ好きにやりやがってって、今も言われている。途上国だって経済発展をしたいわけだから、彼らに対してきちんと技術供与とかをやっていかなくちゃいけないんです。日本なんかは、一生懸命やっていますけど、それでも途上国は人口が多いし、全部を実現できていないのが実状ですね」

電源構成と自由化の問題点

ここで問題になるのが「エネルギー効率」。ターゲット7.3では「世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる」とある。

新内 「これもハードルが高そうです」

石川
 「エネルギー効率を良くするとはどういうことかというと、同じ量のエネルギーをつくるのに、この国では100の石油が必要、この国では120の石油が必要。これが効率です。日本は化石燃料の効率はトップレベルなんです」

内 「そうなんですね」

石川 「例えば、東京電力の富津発電所という天然ガスの火力発電所があるんですけど、私が3、4年前にお邪魔したときにデータを見たら、天然ガス火力発電所として世界で一番の効率を達成していました。石炭火力も、日本の発電所が世界で一番効率がいいんです。これは、ものすごく努力してお金をつぎ込んで技術開発をしてきたからであり、日本人の生真面目さ、能力の高さがあるからこそだと思います。SDGsの言う『倍の速さ』でのエネルギー効率向上は、確かにハードルが高いとは思います。それなら日本の技術を供与して、輸出して売っていけばいい。技術を輸出すれば日本にはお金が入ってくるし、途上国は省エネ型の火力発電所をつくれて化石燃料の消費量を減らせる。一方で、脱炭素とか言っておいて、日本が石炭火力の技術を世界に売っていこうとしたら、イギリスやフランスが止めろというんです。イギリスとフランスの電源構成を見ると石炭を使っていないのですが、そもそも石炭を使っていないところに、そんなことを言われたくないですよね」

新内 「そうですね(笑)」

石川 「でも、日本って真面目だから、言われるとシュンってなっちゃう」

新内
 「電源構成でいえば、石川さん的には電力バランスのベストは?」

石川 「これは、数字で言うより時代で言ったほうがいいと思うんですが、やっぱり福島第一原発の事故の直前の電源構成。今、原子力は動いていなくて、火力が逼迫している。火力が1機でもトラブルで動かなくなったらアウトなんですよ」

新内 「今、ぎりぎりの生活をしているんですね」

石川 「そこで原子力が動いていれば相当、余裕ができる。東日本大震災で原発が止まった時には、火力にすごく余裕があったんです。計画停電は一部やったけれども、だからこそ大した停電はなかった。この間(2018年)、北海道であった“ブラックアウト”のような大停電で、みんな困ってしまったというのはなかったんです。しかし、今は自由化してしまったものだから、キツキツになってしまって大変です」

新内 「解決するには、どうすればいいんですか」

石川 「私から言わせると、日本政府が自由化と言ってルールを変えてしまったなら、それを戻せばいい。自由化とか“お花畑”みたいなことを言っていないで、やれる人に独占的な地位を与えてやっていく。独占の時には、安くて安定した電源を運営できていたんですから。その代わり、独占的な地位を与えられない人は排除される世界ではあるのだけど、消費者からしたら、どっちがいいですかということなんです。自由化した市場から電気を買ってきて足りないのと、独占はちょっと何か嫌だけれども、安定供給で停電の心配をしないでいい。どっちがいいですかといったら、僕なんかは独占でも何でもいいからエアコンを使わせてくれ、という感じ。そう思わないですか」

新内 「それで、私たちのお金が研究費用などに使われるということですよね」

石川 「電力とガスって、この間まで独占だったんですが、それをちゃんとやっていました。今は研究開発のお金も足りない。それは良くないと僕は思います」

後編に続く

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