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沖縄の一次産業のカギを握るのは“コーヒーベルト”なのかもしれない

沖縄の一次産業のカギを握るのは“コーヒーベルト”なのかもしれない

#SHOW CASE
  • 住み続けられるまちづくりを
  • つくる責任つかう責任

少子高齢化が進む日本と課題

日本の抱える社会問題の一つに挙げられる少子高齢化。2021年12月に厚生労働省が発表した人口動態統計によると出生数は過去最少、死亡率は過去最多を記録。人数で見ると、死亡者数が出生者数を約60万人上回る事態になっています。
特に、一次産業の課題は少子高齢化だけでなく、作る土地の条件や天候、商品力と様々なハードルがあり日本での自給の底上げが如何に難しいかが分かります。
そこで、今回編集部が着目したのが日本屈指の観光地沖縄県です。豊かな自然と海の幸、南国ならではのトロピカルフルーツなど、日本唯一の“亜熱帯海洋性気候”という独自の環境を持つ沖縄。実は国内で数少ない「コーヒー豆」の産地として適しているのも沖縄県なのです。

2019年4月「沖縄コーヒープロジェクト」始動

「沖縄コーヒープロジェクト」では、沖縄名護市の整備の行き届かなくなった耕作放棄地などを活用し、これまで限定された量にとどまってきた沖縄県産のコーヒー豆の生産量を拡大。コーヒー豆やコーヒー製品を沖縄の新たな特産品とすることを目指すプロジェクトです。農業就業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地への対応など、沖縄県の一次産業における問題解決に貢献することを目標としています。

サッカー元日本代表の髙原直泰氏が旗揚げ!

このプロジェクトはサッカー元日本代表の髙原直泰氏が率いる地元のスポーツクラブ沖縄Sport-Verein(以下、沖縄SV)と食品飲料企業のネスレ日本が協業、そして名護市・うるま市などの地方自治体、中頭郡西原町の琉球大学が連携した一大プロジェクトです。2019年4月から沖縄名護市で植樹を開始して以来、現在では沖縄県内11カ所で栽培を行っており、日本初となる国産コーヒーの大規模栽培を目指しています。
髙原さんはもともとサッカーだけでなく、「サッカーを中心とした地域創生」にも積極的に取り組んでいました。監督の影響もあり、チームの活動はサッカー以外にも広がり、沖縄の地域資源を活用した商品開発や、農業×スポーツ(農スポ)の取組み、地域産業との協働事業に積極的に参加しています。

ネスレ×琉球大学×沖縄SV 集う地元のチカラ

沖縄のコーヒープロジェクトを始動するにあたり、三者が集まりそれぞれの得意分野を提供し合い、同じ目的に向かいました。それぞれの役割は下記の通りです。

・琉球大学
沖縄県の気候・土壌に精通する琉球大学は、農学的見地からコーヒー栽培を行う上で必要となるノウハウ・情報提供。
・沖縄SV
コーヒー栽培に関わる農作業に従事。
・ネスレ
苗木の配布や技術支援、買い付けなど、コーヒー豆の栽培から製品の製造・流通・消費まで全ての工程に関与し、持続可能なコーヒー栽培の実現をサポート。

このように地域の団結力と、それに共感する企業の縁で1つの新たな産業がスタートしました。

コーヒーづくりを可能にするコーヒーベルト

グアテマラ、ブラジル、コロンビア、ケニア、エチオピア、コーヒーが好きな方ならピンとくるかと思います。漠然と南国のイメージがありますが、世界地図を見るとどこもコーヒー豆を生産するための一定の条件を満たす地域であることが分かります。この地帯はコーヒーベルトと言い、赤道を挟んで南緯25度、北緯25度の間に位置しています。
日本では沖縄諸島の一部や東京の小笠原諸島が当てはまりますが、日照雨量などさまざまな条件が必要であり、乾季と雨季ではなく四季があって台風が多い日本では栽培が難しく、なかなか大規模な栽培に踏み切れずにいました。しかし、沖縄のコーヒープロジェクトでは3者の協力もあり、これまでの課題を少しずつ乗り越えてきました。
その結果、2022年4月末時点で累計約6,500本のコーヒー苗木の植樹を終え、2022年冬からの初収穫に向けて順調に生育中。2022年冬から2023年春にかけて、まとまった量のコーヒーチェリーの収穫を予定しているとのこと。これからは沖縄名護市だけでなくうるま市や離島などにも規模を広げ沖縄に全土にコーヒー豆の農場を広げていくことを目標にしているそうです。

SDGs目標達成への確かな一歩

地域の特性を生かした産業は、商品に付加価値を与え、消費者にも国内産を意識したエシカルな選択肢を与えます。そして、日本の産物は世界からもメイドインジャパンとブランド化されるほど精巧さやおいしさを評価されています。そんな中、沖縄のコーヒーは独自の天候に可能性を見出し、新しくコーヒー豆農業という活路を見出しました。いずれはコーヒー豆の産地としてコロンビアやブラジルのように沖縄の銘柄ができるのではと考えるとわくわくしてしまいますね。
このように地域の特性を生かした名産品があることはSDGsの目標11の「住み続けられるまちづくりを」に該当し、幸福度の高い豊かな環境作りにつながります。また、国内で生産、消費することは目標12の「つくる責任つかう責任」を意識するきっかけにもなります。沖縄コーヒープロジェクトはSDGsの面から見ても2030年の目標達成へ歩み続けているのではないしょうか。

企画・編集/佐藤
ライター/赤塚

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