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赤ちゃんポストに預けられた子は一体どこへ。韓国では17%が親の元に

赤ちゃんポストに預けられた子は一体どこへ。韓国では17%が親の元に

#SHOW CASE

第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された人間ドラマ「ベイビー・ブローカー」は、赤ちゃんポストから赤子を盗んだ男たちが、ひょんなことからその実母と共に養父母探しの旅に出る姿を描いた作品です。今回の記事では「万引き家族」の是枝裕和監督がメガホンを取り、「パラサイト半地下の家族」に出演したソン・ガンホが主演を務める「ベイビー・ブローカー」を入り口に、妊娠中絶に関する権利について日本と韓国のデータを比べながら考えていきます。当たり前だと思っていたその権利、実際には、どうなっているのでしょうか。

2022年6月24日から全国公開されている「ベイビー・ブローカー」。作中では、複雑な事情や感情を抱えた人々が、新しい命に対して向き合います。現実と同じように、肯定的な見方もあれば、「捨てるなら産むな」などの批判的な台詞も出てきます。

韓国ソウルで2000人の命を救った「赤ちゃんポスト」

今回の作品の中でポイントとなったのは、「赤ちゃんポスト」の存在でした。韓国には現在、様々な事情から自らの手で育てられない子供を匿名で預けることのできる、ベイビー・ボックスと呼ばれる「赤ちゃんポスト」が3カ所あり、是枝監督も取材に行っています。預けにくる親の約60%は10代の女子高生など若年層が多く、未婚の母となり学業や就職が難しくなることから、誰にも相談できず1人で出産をして預けるケースが多いようです。

韓国初の「赤ちゃんポスト」開設者で、ソウルにあるジュサラン共同体教会の牧師イ・ジョンラクさんは、訪れた親に「あなたは捨てたんじゃない。命を守った。」と言葉をかけ、相談に乗ってきました。赤ちゃんポストは当初、「捨て子を助長する」などの批判もあり、今もなお政府からの支援はない状態です。しかし、2009年の開設以降、受け入れた赤ちゃんは1988人と2000人近く、施設には24時間体制で職員が交代で待機し、預けにくる98%の親と対面。赤ちゃんを育てられる環境が整うまでの支援を行い、17%の赤ちゃんが親の元へと戻っていきます。

日本の赤ちゃんポスト利用数は2021年が最少

日本には熊本に「こうのとりのゆりかご」と呼ばれる赤ちゃんポストがあります。2021年度に預けられたのは2人だったと、熊本市が発表。2007年開設以降、2021年は最も少なく、預けられた子供の累計は161人となりました。望まない妊娠での悩みを抱えている方、妊娠に関し悩んでいる人なら誰でも相談できる窓口も設置されています。

預けられる赤ちゃんの人数が少ないと聞くと、どこか安心してしまうかもしれません。しかし、赤ちゃんポストを巡る状況には日韓で大きな違いがあります。日本では病院が運営しているのに対し、韓国では教会や寺院が設置。韓国では2012年の養子縁組特例法改正も若い世代のほとんどが知っているのに対し、日本での知名度はまだ低いとされています。つまり、知名度が低いため、預けるという選択肢を得られていないという現状もあり得るのです。

G7では日本のみ中絶に「配偶者の同意」が必要。未婚の場合は不要

中絶の同意を得られなかった未婚女性が公園のトイレ等で赤ちゃんを出産し、その後乳児の遺体が発見され逮捕に至る事件を目にしたことがある方も多いと思います。過去には、「(未婚であっても)相手の同意が必要」という誤った認識により「病院に中絶の相談をしたが手術をしてもらえなかった」という事例もありました。
人工中絶の際、既婚の場合は配偶者(事実婚を含む)の同意が必要であり、未婚の場合は本人の同意のみでよいとされています。しかし、医師から「(既婚の場合)相手の同意が必要」と告げられ、本来未婚であれば同意は不要ということを知らないまま事件に至ったという悲しい報道もありました。

G7の中でも、配偶者の同意を必要としているのは日本のみ。様々な観点から改訂を求める声もある中「胎児の生命尊厳」という意見もあり、2022年7月現在法改正には至っていません。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 意志の尊重と権利

「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(HR)」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されています。性に関してのこと、妊娠や出産、それらに関する全てにおいて身体的にも精神的にも、本人の意志が尊重され、社会的に良好な状態である権利を指します。具体的には、子供を産むか産まないかを選ぶ自由や、安全な出産や育児、そしてそれらに関する情報を得ることのできる権利です。女性だけの権利と、捉えられてしまうこともありますが、男性の性と生殖の健康や、役割なども含まれています。

妊娠や中絶の権利、そして意志の尊重や心身の安全を守るための法律。今回は、「べイビー・ブローカー」という作品を通じて、赤ちゃんポストやそれらを取り巻く事情、日韓での違いなど、様々な観点から見ていきました。法律と聞くと、難しく自分には直接関係のないことが多いと感じられるかもしれません。しかし、日本に住む上で自身や家族の身を守るためにも、身近なものから知ることが大切です。相談窓口は電話だけでなく、一部ではLINEでの相談にも対応しています。参院選の結果が出た今、各政党のマニュフェストや今後の動きにもアンテナを張りながら、自分たちの権利を守る法や条例などにもアクセスできるよう情勢を見ていきましょう。

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