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ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」地球温暖化の専門家・江守正多さんが解説 #後編

ニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 新内眞衣と学ぶSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」地球温暖化の専門家・江守正多さんが解説 #後編

#RADIO

今年4月から新内眞衣さんがパーソナリティを務めるニッポン放送のSDGs 啓発番組 『SDGs MAGAZINE』。8月14日の放送では、東京大学未来ビジョン研究センター教授で国立環境研究所上級主席研究員の江守正多さんに、目標13「気候変動に具体的な対策を」に関する話を聞いた。番組の後半は、江守さんが監修し、環境省が公開する「2100年 未来の天気予報」の話題でスタートした。

「2100年 未来の天気予報」とは

「2100年 未来の天気予報」と題した動画が環境省の運営するサイト「COOL CHOICE」で公開されている。これは地球温暖化対策による影響・被害の可能性について、正しい理解や危機意識、今後とるべき行動への理解を目的に制作したもの。このまま有効な対策を取らずに地球温暖化が進行すると2000年頃からの平均気温が最大4.8度上昇すると予想されており、そうした状況を踏まえ、実際の天気予報番組のような流れで構成されている。

番組の前半で話題に上がったように、SDGsの目標13と密接にリンクする「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度までに抑える努力を追求する必要性が示されている。1.5度未満に抑えれば、人間や自然生態系にとってのさまざまなリスクを軽減できるとされており、動画は、この目標を達成できた場合と、できなかった場合が想定されている。

新内 「これは、江守さんも監修に入られているんですよね。この『2100年 未来の天気予報』について江守さんの解説を伺っても良いですか」

江守 「2100年なので、社会は全然違うことになっているはずですが、天気だけ2100年にしてみたという体でつくっています。基本的には、最近実際にあった暑かった日、特定の日に温暖化した分だけ温度を足して、それで見せているんですね。そうすると2100年にはこんな温度になりますよということです」

新内 「今、画像を見ていますが、札幌で40.5度! あり得ないですよね。すごい」

他にも日本一暑い街とも言われる埼玉県・熊谷市だと最高気温が44.9℃になる一方、沖縄・那覇は38.5度の予想となっている。

江守 「沖縄が一番涼しいという・・・」

新内 「これは、どうしてですか」

江守 「海に囲まれていますので、逆に涼しいんです」

新内 「なるほど。台風10号の予想というのもありますが、870ヘクトパスカルって・・・」

江守 「今まで経験したことがないような強い台風が接近したり、上陸したりという可能性が出てきます」

新内 「これは、どれくらいの威力がある台風なんでしょう」

江守 「経験したことがないくらいの威力で、スーパー台風という言い方をします。台風の強さって並の強さ、つまり何も強さの表現を付けないで言う台風、そして強い台風、さらに猛烈な台風というのがあるのですが、これは猛烈な台風よりもさらに強いということですね」

新内 「それがスーパー台風」

江守 「はい。台風というのは暖かい海水面から水蒸気をたくさん受け取って、水蒸気が燃料のようになって発達します。最近も結構似たような感じになって来ていますけど、日本の南の海上の水温が日本の近くまで来ても高温になっていて、そうすると台風が発達しながら接近してきて、勢力が衰えずに上陸してしまいます」

新内 「日本列島の近くで台風が発生してしまうということですか」

江守 「発生自体は、ある一定の緯度で起こるのですが、それがどんどん強くなりながら上陸してしまう恐れがあるということです。普通は一度強くなって、日本に来る頃には最大よりも随分弱くなっているものですけど、かなり強い状態で上陸する台風が今後来るんじゃないかと。これは台風を詳しく計算している研究者の方からデータをもらってきて、『2100年 未来の天気予報』として取り入れています」

新内 「ちなみに、2100年というと50年以上先じゃないですか。ちょっと先、2050年くらいだと、どのようになるのでしょうか」

江守 「2050年の天気予報という2014年くらいにつくった動画もあるのですが、やはり中間くらいですよね。9月末まで35度の日が続くとか、熱中症など暑さの影響で何千人も亡くなるとか」

新内 「パリ協定を基に、これを1.5度の上昇に抑えればリスクが軽減できるということですね」

江守 「そうです。この『2100年 未来の天気予報』には、1.5度で温暖化を止められたバージョンと、さっきの4度以上の最悪バージョンがあります。4度というのは本当に全然気にしないでCO2を出してしまった場合なので、これを最悪だと思っていただければ。また、夏バージョンと冬バージョンもありますので、ぜひご覧いただきたいと思います」

新内 「見てみます!」

新内さんは、さらに世界で起こっている地球温暖化に関するニュースとして、
・ヨーロッパで今年の夏3度目の熱波
・ポルトガルとスペインでは7月17日だけで1000人以上が「暑さ」が原因で死亡
・フランスで山火事の影響により数千人が避難
・イギリスではロンドンなどで気温が初めて40度を超えた。
などを紹介。「世界で、いろんなことが起きているということですよね」と問い掛けると、江守さんは「今紹介していただいたものは、ヨーロッパの先進国で大変な被害が出ているということですよね。ただ、発展途上国では、もっと深刻な被害が起きているんです。それって、あまり日本に住んでいるとニュースにならなかったりするし、イギリスで40度と聞くとワーッと注目される」と、地球規模の広い視野で問題を見ていく必要があることを強調した。

『猛暑日』に加え『酷暑日』も公式な用語に?!

新内 「日本でも、6月に初の気温40度超えが記録されたり、8月に全国で合わせて36の地域に熱中症警戒アラートが発表されたりと、どんどん危険が迫ってきているように思います。そもそも、熱中症警戒アラートというのも、小さい頃にはなかったものだと思うんです」

江守 「『猛暑日』という言葉も昔はなかったですからね」

新内 「『真夏日』・・・とかですよね」

江守 「『真夏日』までだったんです。『猛暑日』という言葉の定義を気象庁が決めたのは2007年です。40度以上がどんどん出てくるようになると、日本気象協会が今度は『酷暑日』という名前を付けたらしいですけど、そのうち気象庁の用語になるかもしれないですね」

新内 「『酷暑日』ですか・・・。ちなみに番組のスタッフさんがタクシーの運転手さんに聞いた話があって、全然別のタイミングで乗せたタイの方とフィリピンの方が『重く湿った空気が懐かしい』『故郷を思い出す』みたいな話をしていらっしゃったらしいんです。どんどん亜熱帯地域みたいになっていく可能性もあるのでしょうか」

江守 「温度とか雨の降り方でいうと、そうですよね」

■『脱炭素』から『卒炭素』へ~前向きに捉えることの大切さ

最後に、新内さんからSDGsの目標年である2030年に向けた「提言」を求められた江守さんは、「脱炭素」という言葉の捉え方に言及した。

江守 「言うことはたくさんあるんですけど、一言で言うなら前向きにやるということですかね」

新内 「前向きに?」

江守 「脱炭素社会を前向きにつくるということです。僕は『脱炭素』というより『卒炭素』、つまり卒業だと思ったらいいんじゃないかと思っているんです。“脱”というと、すごく嫌なものから頑張って逃げようとしている感じが出て、難しいことを無理してやろうとしている印象があるような気が僕はするんですけど、これは“卒業”なんじゃないかと。人類の文明が、これまでの化石燃料文明を卒業して再生可能エネルギーなり、何しろCO2を出さない新しい文明に“卒業”して次に行くんだよと」

新内 「卒業するフェーズに入ってきている」

江守 「そうです。古いやつから抜け出そうと思うとつらいけど、新しいやつをつくろうと思えば前向きになれるじゃないですか」

新内 「確かに『脱炭素』はよく聞きますけど、『卒炭素』の方が前向き感、ありますね」

江守 「はい、前向きに。よく、タバコをやめるのを禁煙と言わないで卒煙というとかね。それと同じで」

新内 「禁止じゃなくて卒業」

江守 「卒業して、タバコ吸わない新しい自分になるよという前向き感」

新内 「めちゃくちゃ前向きですね、それは! 『脱炭素』と思わず、『卒炭素』と思って新しいエネルギーを使っていければいいなと思います」

そうしたポジティブに、楽しく地球温暖化対策に臨んでいこうという姿勢は、江守さん監修の単行本『最近、地球が暑くてクマってます。シロクマが教えてくれた温暖化時代を幸せに生き抜く方法』(文響社刊)にも表れており、「何カ月か前に出した本ですけど、新しいバージョンはルビが全部振られていて、子供でも読めるようになっています。ぜひ皆さん、読んでみてください」と江守さん。同書を手に取った新内さんも「かわいい写真とかも間に挟まれているので、お子さんと一緒に勉強がてら読むのも良さそうですね」と興味をひかれていた。

目標13「気候変動に具体的な対策を」について掘り下げてきた今回の放送。新内さんは地球温暖化の極めて厳しい現状を改めて認識し「30年前に学者の皆さんが予測していたものが本当に現実になっているということを聞いて、心底ぞっとしました」と危機感を表した。さらに「『2100年 未来の天気予報』の動画も、このままいけば現実になる可能性があるということで、本当に一人一人が考えていかなくちゃいけない問題だなと思いました。2100年に私は生きているか定かではないですが、もし子供が生まれたら、その日を迎える可能性もある。80年後の未来を考えながら、今を行動していかなくちゃいけないなと思いました」と、未来にバトンをつないでいくことの責任も強く感じた様子だった。

【次回放送は9月11日午後7時】

《お知らせ》
2022年8月20日(土)、東京・駒沢オリンピック公園中央広場で、さまざまなパラスポーツを体験したり、パラアスリートにプレーを教えてもらったり、大人から子供までパラスポーツを満喫できるイベント「TOKYOパラスポーツパーク in 駒沢」が開催されました。会場内のステージでは『SDGs MAGAZINE』の公開収録を実施。新内眞衣さんがパーソナリティに就任してから初めての試み。公開収録の模様は次回9月11日の放送でお届けします。

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