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TVで話題、耳まで白い食パンはいくら?どこで買える?年間廃棄量約2.5トン問題解決へ

TVで話題、耳まで白い食パンはいくら?どこで買える?年間廃棄量約2.5トン問題解決へ

#SHOW CASE #TREND
  • つくる責任つかう責任

一度は「どっち派論争」のお題に挙がるパンの耳を食べる派、食べない派。食感が嫌で耳を残す、人前では食べるようにしている、など様々な意見が見られますが、飲食店やホテルなど料理の見た目も重要とされる業界ではパンの耳は切り落とされて廃棄されてしまうことがしばしあります。

そんななか、この秋。日本を代表するホテル“帝国ホテル 東京”が、“耳まで白くて新食感”の食パンを開発。「廃棄がでない食パン」としてTV番組でも紹介されSNSでも話題にのぼりました。報道によると、帝国ホテル東京のパンの耳の廃棄量は年間約2.5トン。日本の食品ロスはSDGs MAGAZINEでも度々取り上げているように深刻な問題の一つ。新たに開発した食パンの登場で食品ロスが軽減されることはもちろん、それ以外にも「これまで以上に食感がしっとりするようになりました」と意外な発見も。今回は、帝国ホテル 東京が耳まで白い食パンを生み出すまでの秘話をお届けします。

画像出典:帝国ホテル

言うのは簡単「耳はラスクにすればいいじゃん」

パン屋さんなどでよく見かけるパンの耳ラスク。パンの耳の食品ロスの解決策の一つに挙げられます。しかし、帝国ホテル 東京としては避けられない課題がありました。従来、帝国ホテル 東京ではサンドイッチを作る際、食感とキレイな見た目を創り出すために、食材を挟み、最終工程で耳をカットして切り揃えていました。そのため、カットした耳には具材が付着していることが多く、衛生面からもパンの耳をラスクなど別の料理に代用することができなかったという理由があったのです。

画像出典:帝国ホテル
第14代東京料理長 杉本 雄氏

発想の転換「まるごとおいしい食パンに」

キーパーソンになったのが帝国ホテル 東京 第14代料理長の杉本 雄氏。
帝国ホテル 東京では、「おいしく社会を変える」をモットーに食を通じた社会貢献を目指しています。これまでもサステナブルソルトなど、食品ロス削減への取り組みを進めていましたが、革新的な社会貢献のためには帝国ホテル 東京としても新しい挑戦をする必要がありました。そこで長く愛されてきた伝統的なサンドイッチの味わいを変えることなく、環境にも配慮したものにできないかと開発をスタート。 約半年間の試行錯誤を経て、切り落とし・廃棄が不要な“新食感の白い食パン”を実現させたのです。その結果、従来の食パンに比べて低温でじっくり焼成することで、よりしっとりとした食感になっているといいます。また白い食パンに加え、ニンジンのピューレを入れて作った黄色い食パンも新しく開発。グレードアップした食感を楽しみながら、伝統の味を継承させることに成功しました。

画像出典:帝国ホテル

その手間なんと22時間、従来の食パンの約3倍

この耳までおいしい食パンの製造にかかる時間は22時間。従来使用していた食パンは6時間半とその手間は約3倍。帝国ホテル広報担当にその手間の内訳を聞きました。

①イーストを発酵させて作る水種※(ポーリッシュ種)を使用していること。
水種は作るために1晩かかるため、この時点でこれまでの食パンに加えてひと手間かかる。
※水種を使用した理由:パンの強度と酸度の調整のため
②焼き時間と温度調整をこまめに確認し見守る必要があること。
これまでの食パンと比較し、白い食パンは繊細であり焼き時間と窯の温度調整の見極めが難しいそうです。というのも、焼き時間が足りないとパンは凹んでしまい、少しでも焼きすぎてしまうと耳を感じてしまうという繊細な理由が。また、窯が高温になればその分焼けてしまい固い耳が出来てしまう…など焼き上がる際の数分間は、こまめに様子を確認する必要があるそうです。

帝国ホテル 東京においては、レストランなどでも提供しているサンドイッチにも順次今回の食パンを導入予定です。工場ではなくホテルで作られているため時間やコストの問題も課題にはなりますが、これからの普及に注目が集まりますね。

Twitterでは絶賛の声から斜めな意見まで

ホテル側の努力を知ってか、知らずかTwitterには様々なコメントが寄せられています。「そもそも日本独特の”パンの耳なし“サンドイッチ、いつ誰が耳を切り落とすように始めたんだろう」という気づきのコメントや、「これは発想の勝利!」「パンの耳苦手なのでもっと普及してほしい」という応援メッセージも。一方で「近所だから行こうと思ったけどいいお値段だ…」という意見や「レストランメニューとしての提供だと手が出ない価格だから、テイクアウト用単品販売をしてほしい!」というリクエストの声もありました。 ただ、ここで重要なのは社会貢献の為には大きな変革が必要と判断し、実際に実現したというホテル側の想いにあります。伝統と格式があるホテルがひとつ、未来のために先陣を切ったという事実に変わりはありません。さすが帝国ホテルです。

耳までおいしい食パンを食べるには

現在、帝国ホテル 東京のホテルショップ「ガルガンチュワ」では、耳までおいしい食パンを使用した2種のメニューを楽しむことができます。

①W・E Bread (ウィーブレッド)サンドイッチ【価格】2,268 円(税込)
②ガルガンチュワサンドイッチ【価格】15,120 円(税込)
②はパン製のバスケットに4種類のサンドイッチを詰め、フルーツが添えられた華やかな一品です。
ホームパーティーなどに嬉しいボリュームと見た目になっています。
※10月24日(月)から11月30日(水)まで、月~木曜限定で食パンのみの単品販売を予定しています。(各日6個限定)

食パン好きの皆様へ

高級食パン専門店ブームが落ち着いてきた昨今、久しぶりの食パンニュースが、しかも食品ロスへの取り組みの一環という形で編集部の耳に飛び込んできました。これまでのパンの耳論争は時代に合わない議論となるのでは。まずは、百聞は一見に如かず。パン好きの方は足を運んでみてはいかがでしょう。

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