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目標2「飢餓をゼロに」につながる昆虫食とSDGsの関係!「食は冒険」 蚕のフンがスイーツに!?

目標2「飢餓をゼロに」につながる昆虫食とSDGsの関係!「食は冒険」 蚕のフンがスイーツに!?

#RADIO
  • 飢餓をゼロに
  • 安全な水とトイレを世界中に
  • 気候変動に具体的な対策を

ニッポン放送で毎週日曜日午後2時10分からオンエア中のラジオ番組『SDGs  MAGAZINE』。パーソナリティを務める新内眞衣さんとともにSDGsを学ぶ同番組の2月5日放送回では、前週に引き続きレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」のオーナーで、“昆虫食伝道師”の篠原祐太氏をゲストに招き、飢餓や水問題の解決にもつながる昆虫食の深淵に迫った。

SDGsの観点から注目される昆虫食

昆虫食が味わえるレストラン「ANTCICADA」のオーナーである篠原氏は、「未来のタンパク源」とも称され、昆虫食がSDGs的な視点から注目を集め始めている現状について、肯定的に捉えているという。

新内 「篠原さんが昆虫食を始めたときは、SDGsとか考えずに食されていたと思うのですが」

篠原 「そうですね。僕自身が食べ始めたのは幼少期で、気付いた時には好きで、日常的にそれをしていました。ただ、ここ5、6年くらいSDGs的な部分で注目されているということに関しては、そもそも状況として追い風だと思います。昆虫って、いろんな魅力があるので、さまざまな側面にスポットライトが当たるのはポジティブなこと。より、いろんな人たちに魅力を知ってもらったりとか、体験しないと伝わらない部分が非常に強いので体験してもらえるきっけかになったりすると、うれしいなと思っています」

新内 「体験しないと分からないというのは、本当に(先週の放送で)思いました。昆虫食として最初は野生のものを食べていたということですか」

篠原 「そうですね。3、4歳の物心ついた時からずっと好きだったので、その頃は野生ですね」

新内 「そして段々、勉強していくうちに、それを仕事に」

篠原 「勉強をしていったという感覚もあまりなく、好きでやっていたんですけど、それが世間的にはあまり良く思われていないものなんだなと思って僕自身、誰にもずっと言えずに18、19年を過ごしてきたんです。それこそ、こういうSDGsの部分が注目されていく中で、結構背中を押された節もあり、こういう形で活動を始められた感じです」

昆虫食が世界的に注目されたきっかけは、食料の安全保障と栄養、作物や家畜、漁業と水産養殖を含む農業、農村開発を進める先導機関である国連食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した、昆虫食を科学的に分析した論文と言われる。昆虫を食用としたり、家畜の餌にしたりすることを推奨する報告書で、昆虫食が地球温暖化などの環境問題を解決する糸口になるのではないかと一気に関心が高まった。

篠原 「まさに、僕が思い切ってカミングアウトするきっかけになった、ある意味命の恩人くらいの大切な、大切な論文です。国連の一機関がこういうレポートを書いたというのは世界的にもインパクトが大きくて、それこそ世界中の研究機関が昆虫を食用として利用するにはどうしたらいいのかという研究を始めたり、この直後くらいから欧米でも昆虫食を扱うベンチャー企業がどんどん立ち上がり始めたりしました。コオロギを育てるファームが生まれ、それを扱ってプロテインパウダーをつくるようなメーカーも出てくるなど、さまざまな形で裾野が広がっていった最初の大きなきっかけ、ターニングポイントになったのが、この論文だと思います」

目標2と昆虫食

新内 「そして、17あるSDGsの目標のうち、昆虫食が飢餓や気候変動などさまざまな目標に関わるとも言われていますが、改めて理解を深めていきたいなと思います」

まず、直接的につながってくる目標が2「飢餓をゼロに」。その各ターゲットをここで“復習”する。

【目標2『飢餓をゼロに』】
2.1
2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。

2.2
5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。

2.3
2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.4
2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.5
2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a
開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.b
ドーハ開発ラウンドのマンデートに従い、全ての農産物輸出補助金及び同等の効果を持つ全ての輸出措置の同時撤廃などを通じて、世界の市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c
食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。
これらの問題解決において有力な選択肢となるのが昆虫食。環境に与える負荷が従来型の畜産業より昆虫食の方が圧倒的に少ないと考えられており、例えば1キロの牛肉を得るためには約25キロの餌が必要となるが、コオロギなら約2キロの餌で同じ量の肉が取れる。一方で、実は誇張されたデータが出回っている問題もあるという。

篠原 「全部が全部そうって話ではないんですけど、100グラム当たりに含まれるタンパク質でコオロギと牛肉を比較して、コオロギの方が4、5倍多いみたいに書いている記事だったり、商品だったりがあるんですけど、それはちょっと誇張しているというか、嘘ではないけど誠実でもない。その数字は、生肉の牛肉と乾燥したコオロギで比較したもので、単純に乾燥していると重さって3分の1くらいになるんです。実質的には、ほとんどタンパク質が一緒でも、何倍も多く見えるようになる。どうしても新しく注目されるものってストロングポイントを際立たせて伝えたくなる部分はあると思うんです」

だからといって昆虫食に意味がないということではもちろん、ない。篠原氏は「逆に言うと牛肉や鶏肉と比較して同じか負けず劣らずタンパク質が多いというのは事実。タンパク源の一つとしてコオロギが注目されていくこと自体は間違っていないことです。牛を育てるために必要な餌の量、水の量などを考えたときに、コオロギを選択肢の一つに入れることでトータルで解決につながっていく。そこは、可能性として期待したいなと思っています」と説明する。

新内 「特に栄養価が高い昆虫っていうのは、どういったものがあるのでしょうか」

篠原 「身近なところで言うとコオロギ、イナゴを含めたバッタの仲間はタンパク質が豊富ですし、虫によってミネラルなどを含んでいるものもあるので、それを安心安全に育てていくと、栄養価も効率的に摂取できる素材ではありますね」

新内 「世界ではどれくらい普及しているんですか」

篠原 「これも、昔から文化的に食べられてきているものと、新しくこういうSDGsの流れで注目されてきているもので全く別物だったりするんですけど、そもそもで言うと世界中で15億人から20億人くらいは昆虫を食べていると言われています」

新内 「結構多いです。自分が思っていたより」

篠原 「そうなんですよ。4人に1人、5人に1人くらいの日常の食に、昆虫に準ずるものが入っていると考えると、そもそもそこまで珍しいものでもないんです。プラスアルファで、こういうタンパク源としての活用が注目されている。粉末にしたコオロギを使ったプロテインバーとかは新商品として世の中に出回っていて、日本でも最近増えていますし、欧米諸国でも環境意識の高いスーパーとかに行くと買っている方もいらっしゃる。そういう感じにはなってきていますね」

目標6&13にもつながる昆虫食

さらに、昆虫食とSDGsのつながりで注目されているのが目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関連する水の消費や、目標13「気候変動に具体的な対策を」にかかわる温室効果ガスの問題だ。

新内 「これをコオロギが解決してくれる可能性があるということですか」

篠原 「そうですね。水とかは本当に顕著です。僕もコオロギを育てていると、こんな水の量で育つんだと感じるくらいに少ない。同量の肉を生産するのに必要な水の量がコオロギだと50分の1くらいと言われています。温室効果ガスについても、牛はゲップにはメタンガスという一般的に温室効果ガスの原因とされるものの一つが含まれているのですが、それもコオロギはほとんど輩出しない。まだまだ生産規模は大きくないので、食材の一つの選択肢になるくらいファームが増えてきたらインパクトも上がりますし、さまざまな観点で可能性を秘めた素材なんです」
水の消費は、飲用水のほかに餌の生産に必要な農業用水の量も含めると、例えば牛肉の場合、可食部1キロを生産するのに2万2000リットルの水が必要な一方、コオロギは420リットルですむとされる。また、体重1キロに対する温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)も牛の2850グラムに対して、コオロギは1.6グラム。家畜のゲップに含まれるメタンガスは世界の温室効果ガスの4%を占め、メタンの温室効果は二酸化炭素の25倍というから環境に及ぼす影響は少なくない。

蚕のフンが香り高いお茶に!?

新内 「ところで、篠原さんはコオロギをはじめとした昆虫をどれくらい飼育しているのですか」

篠原 「飼育しているのは本当に家で共に暮らしている分と、お店でトッピング用に育てている分くらい。どちらかというと育てているファームと協業しながら、育てたものをどう活かしていくのかに今は集中しています」

新内 「仕入れ先というのは、どういうところがあるのでしょう」

篠原 「仕入れ先もいろいろあって、コオロギは提携している徳島とか福島とかのコオロギ農家さんから送ってもらって使っています。逆に、普段からあるけど使われていないところでいうと、シルクをつくる養蚕ですね。昔から日本の大きな産業で、養蚕農家さんは全国で200件くらいいらっしゃるんですけど、糸を紡いだ時に残るさなぎの部分とか、幼虫がしたフンは全て捨てられているんです。その辺を送っていただいてお店で活用もしています」

新内 「全部利用できるんですか」

篠原 「そうですね。蚕とかは余すところなく使い尽くせます。環境にも生き物にも寄り添った使い方ができる素材なんです」

新内 「幼虫のフンを集めると、何になるんですか」

篠原 「実は今日、持ってきているんです。フンと言うと『ちょっと、まじかよ』と感じるかもしれないんですけど、蚕って桑の葉っぱしか食べない虫なので普通に桑の葉っぱのさわやかな香りが楽しめるんです。お湯を注いで蚕のフンのお茶をつくったりとか」

新内 「ええっ!」

篠原 「それを使ってシロップをつくるとか、デザートをつくるとか、本当にさまざまな形でフンの香りを活かす方法があるんです」

まさかの答えに、思わず叫ぶ新内さん。ただ、前回のコオロギやタガメの経験で“免疫”ができたのか、自ら「かいでみていいですか・・・」と顔を近づけるチャレンジャーぶりを発揮。「どうぞ。これは優しいお茶っぽい香りがします」と篠原さんが伝える間もなく「あっ、お茶だ!」とポジティブな感想を口にした。

新内 「もう一個は」

篠原 「こちらは蚕ではなく、よく公園の桜の木についている毛虫の糞です」

新内 「これは、何か海外の高級なお茶のにおいがしますよ。薫り高い」

篠原 「桜のハッパしか食べていないので、これは桜の香りがするんです」

新内 「めちゃくちゃ、いい香りですね。すごいです」

篠原 「そうなんですよ。これもデザートをつくったり、お酒をつくったり、いろいろ活用できます。やはり『フンがそんなにいい香りなわけないでしょ』と頭では思うので、そういう意味でのギャップは大きいですし、こういうものを活用していくと、楽しく、美味しく、そういうところもクリアしていける可能性を秘めていると思っています」

体験することの大切さ

2週にわたって昆虫食の魅力と大きな価値に迫った新内さんは、最後に「未来への提言」を篠原氏に聞いた。

篠原 「僕がお店でも掲げている『食は作業ではない、冒険だ。』という言葉が、未来に向けて自分がやっていける、可能性を感じていく上で大事なテーマかなと思っています。何事も体験しないと分からないことって本当に多くて、食べてみることでいろいろと感じられることがあったり、感じると普段食べ物を食べるときの見方も変わってきたりすると思うんです。それこそ、他のものを食べているみたいな。言葉にするのは簡単ですけど、それを実際に感覚として確かに感じるのとでは全然違う。その中で、少し生き物のことを考えられるようになったりとか、あるいは彼らが棲んでいる環境にふと思いを馳せられたりしたら、こういう環境のこととか未来の地球のこととかを考える上でも、より実感が持てるようになっていくと思うんです。ちょっと勇気を振りしぼって実際に体験していただくと、広がっていくものというのは、特に飲食体験の場合は強いと思います。別に虫を食べるのが全てではなく、冒険の一歩を何らかの形で踏み出していただけると、ちょっとずつでも見方とかが変わってくるのかなと思います」

新内 「いや、今日で本当に見方がすごく変わりました」

篠原 「ありがとうございます」

新内 「コオロギラーメンと聞くと、その名前で不安になっちゃうじゃないですか。でも、今日香りをかがせていただいたり、この品々を間近で実感したりすると全然印象が変わりますね」

篠原 「印象も変わりますし、代替食として嫌々食べるのではなくて、楽しんで、美味しいからと言って食べた方がみんな幸せになれると思います。何より食べられる虫にとってもそっちの方が良いと思いますし」

新内 「そうですね。命をいただいているのですからね」

篠原 「そういう前向きな形で捉えてやっていけたらいいなと思っています。その一つとして昆虫食というのも前向きな形で使われていくと良いなと思いますし、そうなるようにこれからも全力を尽くしたいなと思っています」

新内 「本当に新しい食の選択肢を知ることができました。ありがとうございました」

篠原 「ぜひ今度、コオロギラーメンも食べてください」

新内 「ラーメンは行くと思います。行かせていただきます」

篠原 「ありがとうございました」

最初はいかにも恐る恐るだった新内さんだが、前週のコオロギ、タガメを経て、今回は幼虫のフンまで“体験”し、大きな意識の変化があった様子。「本当に2週続けて篠原さんにお話を伺って、新しい食の選択肢として昆虫食がこれからもっともっと広がっていくんじゃないかなとすごくワクワクしました。『食は作業じゃない、冒険だ。』という篠原さんの言葉が印象的で、食の選択肢を広げていくのは、こういう方なんだなというのをすごく感じました」と、篠原氏の取り組みに大きな感銘を受けていた。

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