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新内眞衣と学ぶニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 フラワーサイクリストが解説するロスフラワーの問題と可能性 #前編

新内眞衣と学ぶニッポン放送『SDGs MAGAZINE』 フラワーサイクリストが解説するロスフラワーの問題と可能性 #前編

#RADIO
  • つくる責任つかう責任

ニッポン放送で毎週日曜日午後2時10分からオンエア中のラジオ番組『SDGs  MAGAZINE』。パーソナリティを務める新内眞衣さんとともにSDGsを学ぶ同番組の2月12日放送では、「フラワーサイクリスト」として活動する河島春佳さんをゲストに招いて、目標12「つくる責任 つかう責任」につながる花の廃棄の問題を掘り下げた。

「ロスフラワー」と「フラワーサイクリスト」

誕生日だった1月22日の放送で、SDGsにちなんだプレゼントとして本来は廃棄される花「ロスフラワー」を使った花束を番組から贈られた新内さん。その美しさに「これが『ロスフラワー』だなんて、どうかしています」と問題を肌で感じていた中、その問題に取り組む株式会社RIN代表の河島春佳さんをゲストに迎え、花の廃棄の現状や問題解決に向けた取り組みを聞いた。

【河島春佳さんプロフィール】
長野県生まれ。大自然の中で幼少期を過ごし、自然を愛するようになる。2014年頃から独学でドライフラワーづくりを学び、2017年に生花店で働いていた際に廃棄される花の多さにショックを受けたことから「フラワーサイクリスト」としての活動を開始。2018年にパリへ花留学し、2019年に「ロスフラワー」を用いた店舗デザインや、装花装飾 を行う株式会社RIN を立ち上げる。2020年には花農家と消費者の架け橋として開設したオンラインショップ「フラワーサイクルマルシェ」が農林水産省のホームページで紹介され、21年には「フラワーサイクリスト」になるためのスクール「フラワーキャリアアカデミー」をリニューアル。現在、全国の200人以上の卒業生と共にミッションとして掲げる 「花のロスを減らし花のある生活を文化にする」 ために活動中。

新内 「長野県生まれということですが」

河島 「そうですね。長野県で生まれて、その後も栃木県といった自然の豊かな地域で育ったこともあって、道端に咲くお花とか植物にすごく興味のあった幼少期を過ごしました」

新内 「お花がもともと好きで、生花店で働くようになった」

河島 「そうですね。お花を好きなのは当たり前のことという感覚の中、社会人でいろいろな企業を経てアルバイトとして生花店で働くようになったという経緯です」

新内 「パリへ花留学をされたということですが、花で留学ってどういうことですか」

河島 「もちろん日本でも学べるのですが、お花の技術やブーケ・スワッグ(花や葉を束ねて壁にかける飾り)などアレンジメントの技術を学ぶときに、私はフランスのエッセンスが素敵だと感じたので、その魅力を学ぶと同時に技術も学びたいなと思ってフランスに行きました」

新内 「どれくらいの期間、行かれていたんですか」

河島 「1カ月と短期ではあるのですが、日本で働いたことがある先生に教えていただきました」

新内 「フラワーサイクリストとして活動されているとのことですが、フラワーサイクリストというのは昔からある単語なのでしょうか」

河島 「実は、フラワーサイクリストというのは私がつくった造語なんです。お花のフラワーとアップサイクル、リサイクルを合わせて言葉をつくりました」

新内 「そうなんですね。そして『フラワーサイクルマルシェ』が農林水産省のホームページで紹介された」

河島 「はい。農家さんの、いわゆる規格外であったり、廃棄直前であったりするお花を扱うオンラインショップです。規格外とはいえ、生産者の鮮度の高いお花を買うことができます」

「フラワーサイクルマルシェ」は20年4月に花農家と消費者の架け橋として開設されたオンラインショップで、生花やドライフラワーなどの商品を購入することで花の廃棄問題に対し間接的に支援できる仕組みになっている。そんな「ロスフラワー」削減の取り組みを進める河島さんだが、この浸透し始めている「ロスフラワー」という言葉自体も、実は「フラアワーサイクリスト」と同様に河島さんが生み出したもので、商標登録もされているという。

河島 「それこそ私がフランスに花留学に行った時代、2018年くらいのことです。食品ロスという言葉はあったのですが、私としてはそこにお花の廃棄問題というのを加えて提唱してもいいのではないかなと思い、『ロスフラワー』という名前をつけました」

生産者のレベル・志が高いが故に厳しい日本の規格

新内 「先日、番組から『ロスフラワー』の花束をいただいたんです。『ロスフラワー』と言っても全然きれいですし、どれくらいが廃棄される目安なのかなと思ったのですが」

河島 「私たちは“廃棄花”の定義も決めていますが、ちょっと枝が曲がっているとか、花びらの枚数が少ないとかで規格外と言われます。日本のお花の生産ってすごくクオリティーが高いが故に厳しいんです」

新内 「細かくないですか」

河島 「そう、すごく細かいんです。その厳しい審査を通ったお花がお花屋さんに並ぶのですが、それ以外のお花もすごくきれいで、すごくかわいいんですよ」

新内 「はい、いただいた花束もめちゃめちゃきれいでした。だから、もったいなくないですかと思うんです」

河島 「おっしゃる通りで、すごくもったいない。私自身も、お花を捨ててしまうということ自体が心苦しいし、もったいないというのもあって、『ロスフラワー』の現状を知ってもらって、お花を購入する方が増えればいいなと思い、事業を始めました。実は、プレゼントしたいなと思って、今日も一部『ロスフラワー』でつくったスワッグや花束を持ってきました」

思わぬ贈り物に「ええ! いいんですか」と大感激の新内さん。同時に、美しい花たちに「これも『ロスフラワー』でつくられているんですか。これのどこが規格外なんですか」と驚きも隠せなかった。

河島 「この中のスターチスとか、バラとかに規格外と言われるものを使わせていただきました。生産者の方にとって、お花は作品なんです。一つ一つ手塩にかけて丁寧につくられているということもあって、本当に最高の品質のものを市場に送っている。それは、すごく素敵な考えだなと思っています。ただ、それと同時に規格外のものにも同じ手間暇がかけられている。そうしたお花を私たちは救いたいなと思っていて、お花の命を最後まで楽しんでもらいたいという思いを多くの方に伝えています」

そうした花のリサイクル、アップサイクルに取り組む「フラワーサイクリスト」として18年から活動を始めた河島さんだが、その哲学に共鳴する仲間も年々増えていっているという。

新内 「『フラワーサイクリスト』と呼ばれる方は、今どれくらいいらっしゃるんですか」

河島 「一緒に活動しているアンバサダーは約60名います」

新内 「毎年、たくさんの方が『フラワーサイクリスト』になっているということですか」

河島 「そうですね。私が主宰している『フラワーキャリアアカデミー』というスクール事業の中で、卒業生からアンバサダーを選抜させていただいて、思いのある方だとか、一緒に発信したいという方と、『ロスフラワー』を通してお花の文化というのを伝えています」

新内 「このSDGs MAGAZINEの番組内でも花の廃棄について取り上げたことがあるのですが、実際に『フラワーサイクリスト』として活動するきっかけになったというアルバイト先で捨てられるお花を目の当たりにした時などは、どういう気持ちだったのでしょうか」

河島 「現場で私が目の当たりにしたものとしては2つあります。1つ目はクリスマスのプロポーズ用に用意していた真っ赤なバラの花束。12月25日の夜まで販売しているのですが、26日になるとお花屋さんはお正月に切り替わるので、全て廃棄されてしまうんです」

新内 「そうなんですか!」

河島 「どうしても鮮度を優先してしまう生花店の仕方ない部分ではあるのですが、すごくきれいなのに廃棄されていて、もったいないなと思ったのが一つのきっかけです。2つ目は結婚式でのゲストテーブル、高砂のアレンジメントですね。結婚式が終わると回収して、店舗で全て廃棄してしまうお花屋さんも結構多いんです」

新内 「2021年の紅白歌合戦の壁がお花でつくられていたんですけど、そのお花は最後に出演者に配られました」

河島 「それは、すごく素敵な話ですね」

新内 「私たちも大晦日にお花がもらえて、新年をお花と迎えられるなんて思っていなかったので、すごくうれしかったんです。袋に入れてくださって、ご自由にどうぞということだったので、みんなで選んで持って帰ったんです。高砂の花も配らずに廃棄してしまうのはもったいないですよね。そうしたお花を活かす仕組みづくりもあったらいいなと思いました」

生産者のレベルや志が高い日本では、それが逆に規格外となる花を増やすというなんとも悩ましい事情もある。

新内 「廃棄の原因となるのが規格外。世界で見ても日本の規格は厳しいのでしょうか」

河島 「一番お花の規格が厳しいのは日本だと言われています。日本は“ものづくりの国”というだけあって、すごく生産のクオリティーが高いんです。絵に描いたようなきれいな花というのを日本は生産するのが得意。それ故に規格外も同時に出てしまうのが現状です」

新内 「そうなんですね。お花というと生のものでもあるので鮮度が落ちやすいという問題もあると思います。これも、やはりしようがないことなのでしょうか」

河島 「一つの対策方法としては、水換えをする時に新鮮なお水を使うであったりとか、延命剤と言われるようなちょっとした薬を使ったりとか、長くお花を楽しんでいただくために各所、頑張って対応はしています」

新内 「農家さんから、お花はどれくらいの日数で生花店に届くのでしょう」

河島 「たとえば日曜日に農家さんがお花を採取したとすると、輸送のトラックに荷積みして月曜日の朝にはお花屋さんで購入できるようになっています」

新内 「スピード感ありますね。せっかく鮮度のいいお花が並んでいるのに廃棄されるのは、よりもったいないですね」

河島 「そうですね。すごくもったいないと思います」

花の廃棄の現状を聞いた新内さんは「日本の生産者のクオリティーがすごく高いというのはいいことでもあるんですけど、その半面、規格が厳しくて廃棄になってしまう。そうしたお花の現状を知ることができました」と難しい側面に思いを巡らせ「それをリサイクルして、利用していくというのはすごく素敵なこと。河島さんのお店にも足を運んでみようと思います」と、その問題解決に向けた取り組みに感銘を覚えた様子だった。次回は目標12「つくる責任 つかう責任」をキーワードに「ロスフラワー」とSDGsの関係性を探っていく。

(後編に続く)

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