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約75%がまだカミングアウトできていない!「LGBT理解増進法」が提起する問題を知ろう

約75%がまだカミングアウトできていない!「LGBT理解増進法」が提起する問題を知ろう

#SHOW CASE
  • ジェンダー平等を実現しよう

6月17日、「LGBT理解増進法」が参議院本会議にて賛成多数で可決・成立しました。この法律は、差別を禁止するようなものではなく、LGBTに関する基礎知識を国民ひとりひとりに広げることで全体の理解を促すボトムアップ型の法案です。LGBTに対するさまざまな捉え方があるからこそ扱いが難しい中で、自治体や企業、学校などがLGBTQ+への理解を広げ、たとえ反対の動きが起きたとしても萎縮せずに理解を深められるような体制が求められます。この「LGBT理解増進法」が社会にポジティブな結果をもたらすために、いま行われている動きについてみていきましょう。

LGBTQ+当事者の約4割が「職場での生きづらさを感じている

まずは実際に当事者が抱える問題についてみていきましょう。Indeed「LGBTQ+当事者の仕事や職場に関する意識調査」によると、当事者の3割以上が「性自認や性的指向がきっかけで、やりたい仕事に就くことを諦めたことがある」と回答し、そのうち約8割が仕事に応募する前に諦めた経験があるということです。またLGBTQ+当事者の3人に1人が「仕事探しや職場において、不安やストレス、嫌な思いを経験したことがある」という結果に。

同僚や上司にカミングアウトできていない人も75.8%と大きな割合を示しました。

この調査では、就職という場面で多くの当事者が何かしらの生きづらさを感じていることが分かります。このような結果を受けて、企業としてはどのような対応を考えているのでしょうか。

LGBTQ+の従業員に対する取り組みを行っている企業は4社に1社

また、「企業の LGBTQ+当事者の従業員への取り組みに関する調査」によると社会的マイノリティの従業員への支援をはじめとした企業によるダイバーシティ推進の取り組みは、障害者や外国籍の従業員に対しては4割以上行われていますが、LGBTQ+の従業員に対する取り組みを行っているのは、中小企業においては2割以下という少ない数字でした。
企業側としては、「何からはじめたらよいかわからない」、「LGBTQ+支援に関心のある社員がどれくらいいるかわからない」といった声が多い中で、マニュアルや研修などの具体的な手法があれば、LGBTQ+について理解を深める機会を求めていることが分かりました。

さて、企業での理解を促すことが必要になってきている中で、実際に身近なところで行われている事例を紹介します。

LGBTQ+当事者が制作に携わっているライフマガジン『BE』第二弾が発行

かねてより、LGBTQ+コミュニティを含むすべての人が、自分に合った仕事が得られる社会の実現を目指して、様々な取り組みを行っているライフマガジン『BE』。その第二弾が6月22日に発行されました。テーマは2つで、当事者の人たちが自分らしく働く姿を紹介する「BE WORK GALLERY」と、企業におけるLGBTQ+の従業員への支援やダイバーシティ推進の取り組みに向けた課題や方法をまとめた「BE for WORKPLACE」で構成されています。
冊子は無料配布とともに、特設サイトにてデジタル版を無料公開。当事者だけでなく、その周りの人たちの声をも集めた読み応えのある1冊です。
こうしたフリーペーパーを手に取って読むという行為だけでも、理解をしようとする姿勢を示すことができる上に、より手軽に知識をつけることができるいい機会となるでしょう。

さらに、こうした『BE』の想いを共有する場として「文喫 六本木」に6月22日(木)〜7月6日(木)の期間限定でコミュニティスペースがオープン。期間中は、「自分らしく働く・生きる」をテーマに、『BE』の展示・無料配布に加え、編集に携わったLGBTQ+当事者の方々と文喫のブックディレクターがおすすめする約200冊の本を集めたブックフェアが開催されました。

差別する人に配慮した法案?

「LGBT理解増進法」の第十二条では、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」と規定されています。裏を返せば、大多数の人が理解増進に不安を感じた場合に、この法案自体がなくなる可能性があるのです。この部分が、むしろ差別する側、困難を与える側に配慮する形になっているという批判や、まるでLGBTQの存在が国民の安心を脅かすかのように明記されたことに強い憤りを感じるという声も。この法律が正しい方向に社会を導いていくためにも、当事者以外の人も、どのように対応することがよりよい社会を作ることができるのかを意識をしておく必要があります。
新しい法律の中でさえも、まだまだ古くから根付く価値観や慣習を変えていくことは難しいことなのかもしれません。

G7広島サミットの時にも問題視されたように、議長国でありながら日本のLGBTQ+への理解は他国に比べ、後れを取っています。個人としても企業としてもまずは、LGBTQ+について知り、受け入れられるように理解することが大切ではないでしょうか。
当事者にとっては、例えば「BE」のような情報に触れている人が周りにいたり、職場において理解を示してくれる人の存在があるだけでも、心理的安全性を高めることができます。企業においては、コストがかかるような大きなプロジェクトでなくても、些細なことから取り組んでいけることを探すことが、理想的な社会への第一歩となるでしょう。

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