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難病患者と医療従事者のコミュニケーションの課題は?難病患者、看護師を対象に意識調査を実施

難病患者と医療従事者のコミュニケーションの課題は?難病患者、看護師を対象に意識調査を実施

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アストラゼネカグループの希少疾患部門アレクシオン・アストラゼネカ・レアディジーズ(本部:米国マサチューセッツ州ボストン)の日本法人であるアレクシオンファーマ合同会社(本社:東京都港区、社長:笠茂公弘)は、難病啓発イベントとして、2023年9月30日(土)第28回 日本難病看護学会学術集会において ランチョンセミナー1「病気になっても安心できる生活を目指して 〜地域連携・医療連携を考える〜」を共催しました。また、同日、本セミナーに合わせ、指定難病患者さん500名および指定難病患者さんの看護をしたことがある看護師464名を対象に実施した「難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査」の結果を発表しました。
今回の記事では、調査内容について深掘りしていきます。調査の中で、「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか」の問いに、看護師の7割以上が「できていない」 「おそらくできていない」または「どちらともいえない」と回答。その理由として、看護師の過半数 が「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションをできる場が少ない」と回答するなど、医療現場において、難病患者をサポートするためのコミュニケーションや連携体制に課題があることが示唆されました。 
また、難病患者の看護の困難さにおいては「専門的な知識やスキルの高さが求められる」「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」ことが挙げられました。一方、難病患者は看護師に対して 「精神面についての支え」を求めており、嬉しかったこととして「親身に接してくれた」という回答が多く見られました。

難病患者の看護において看護師が感じる困りごとや大変さは「専門的な知識やスキルの高さが求められる」が最多で過半数

難病患者の看護に携わったことがある全国の20〜69歳の現職の看護師に対して、指定難病以外で通院・入院している患者さんと比べ、難病患者さんの看護においてどのような困りごとや大変さがあるかを尋ねたところ、「専門的な知識やスキルの高さが求められる」(52.8%)がもっとも多く、次いで「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」(34.7%)、「症状・状態を、看護師が理解することが難しい」 (30.0%)が挙げられました。 

さらに、病状ステージごとの看護の困りごとや大変さを尋ねたところ、最多項目に変化はなかったもの の、<(難病患者さんが)体に異変を感じてから病名が判明するまで>では、「症状をわかりやすく説明するのが難しい」(39.9%)が、<(治療を開始後)症状が安定している状態>では、「次の病期ステージの心構えなどを伝えるタイミングが難しい」(31.0%)が2位に上がりました。難病では専門的な知識が求められるため、症状の説明や時期などにおいて、看護師が患者とのコミュニケーションの難しさを感じていることが読み取れます。

病気そのものではなく生活面でのサポートが課題に

また、看護師に対して、難病患者にどのような情報提供や相談対応を行っているか尋ねたところ、 「症状の変化・状態」「治療内容・治療の方向性」「日常生活の過ごし方」「精神面(心持ち)」「保険・制度活用」「医療費」については約5割、「就学・就労」「結婚・出産・介護」「患者団体」については約3割の看護師が対応していると回答しました。看護師は、難病患者に病状や治療に関することだけでなく、日常生活、就労や結婚・出産など、さまざまな相談対応を行っていることがわかります。
一方で、相談を受けているなかで対応が難しいものを尋ねると、「精神面(心持ち)について」 「医療費」「保険・制度活用」「就学・就労」など、病気そのものに関すること以外が上位を占めました。難しいと感じながらも、看護師は難病患者とさまざまな事柄についてコミュニケーションをとっていることがわかります。

看護師、医師、難病患者、三者のコミュニケーションは

続いて看護師に「医師と難病患者さんとのコミュニケーションサポートができているか」と聞くと、「できていない」(19.2%)、「どちらともいえない」(52.4%)という結果に。看護師の7割以上が課題を感じていることがわかりました。

さらに、「医師と患者とのコミュニケーションサポートをするために、医療現場にどのような課題があるか」を尋ねると、「十分な時間を割くことが難しい」(60.1%) が最多、次いで「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」(56.3%)が挙げられました。

一方、ここ半年間で通院または入院歴のある全国の20〜69歳の難病患者さん500名(潰瘍性大腸炎 17.8%、全身性エリテマトーデス 8.4%、クローン病 7.4%など)に、自身の病気に関して、診察時に「医師・看護師それぞれと納得できるコミュニケーションがとれているか」を尋ねたところ、約6割が「医師と納得できるコミュニケーションがとれている」(63.8%)と回答し、約4割が「看護師と納得できるコミュニケーションがとれている」(38.0%)と回答しました。
いずれも数値としてはそんなに多くはないものの、「医師と納得できるコミュニケーションがとれていない」(10.0%)、「看護師と納得できるコミュニケーションがとれていない」(20.8%)を比べると、難病患者は、看護師とのコミュニケーションにより課題を感じていることがわかります。
なお、日常生活介助の要否と病状により、3つに類型化したところ、「看護師と納得できるコミュニケーションがとれている」は、類型3が34.7%、類型2が38.2%、類型1が46.8%と次第にスコアが高くなり、 症状や日常生活障害の程度が重くなるほど、看護師とのコミュニケーションの満足度が上がっていることが推測できます。症状の重いことで看護師が関わる時間が増えると、より密なコミュニケーションをとれるようになることが理由かもしれません。(今回の調査で使用した類型化分類:[類型1 (要介助、病状不安定・悪化)、類型2 (自立、病状不安定・悪化) 、 類型3 (自立、病状安定)]/中山優季ほか 「難病患者の生活実態による新たな指定難病の類型化とその特徴~平成 29 年難病患者の生活実態全国調査から~」, 日本難病看護学会誌, 第 26 巻 2 号, 2021 年)

また、難病患者に、自身の治療や看護において、医師と看護師の連携がとれているかを尋ねたところ、 約6割(61.8%)が「よく連携できている」および「連携できている」と答えた一方で、約4割(38.2%)が「あまり連携できていない」および「まったく連携できていない」と回答しました。これは、同質問を行った難病以外の病気で通院または入院した患者さんの回答「あまり連携できていない」および「まったく連携できていない」(25.2%)と比べると、13ポイント高い結果でした。このことから、難病患者と看護師、どちらも医療従事者同士の連携に関して疑問や課題を感じていることがわかります。

難病患者が望む“理想の看護師”は「ごく普通の人」?

最後に、難病患者に、看護師に求めること、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったことを尋ねたところ、看護師に求めることは「精神面(心持ち)について支えてほしい」(17.6%)、「症状の変化・状態について相談にのってほしい」(15.2%)、「治療内容・治療の方向性について(薬の効果や、副作用など含む)説明して欲しい」(13.8%)などが挙げられました。また、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったことは、「親身に接してくれた」(24.0%)がもっとも多い結果でした。今回の調査では、難病患者だけでなく、指定難病に関わる看護師も難病患者の看護において、 難しさやさまざまな悩みを抱えていることがわかりました。
さらに、難病患者が望む“理想の看護師” のタイプを探るために一般に広く使われているアーキタイプ※に基づいて回答を求めたところ、およそ3人に1人が「ごく普通の人」と答え、もっとも多い結果となりました。その理由として、「身の回りのことを専門分野の知識を持った人に相談できると安心感が得られる」「普通の感覚の人の方が気持ちをわかってもらえる」「気兼ねなく話せる方が良い」などが挙げられました。難病患者さんが、看護師に対して、医師とはまた異なる、より自分自身に近い存在として、看護だけでなく、精神的な支えやサポートを求めていると推察されます。(※アーキタイプ:似たような性格の人々が共通して持つ思考や目標、欲求の一般的なパターン。人間心理学によると、12 種 類のアーキタイプがあると言われ「ごく普通の人」のほかには、「世話好き」「純粋な人」「愛にあふれた人」「ムードメーカー」 「賢者・賢人」などがある。)
本調査を監修した、東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター 難病ケア看護ユニット ユニットリーダー中山優季先生は、調査結果について次のように述べています。「本調査を通じて、難病患者さんが、看護師に対して専門的な知識やスキルだけでなく、治療における精神面での支えや情報提供など、多岐にわたるサポートを求めていることがわかりました。一方で、医療従事者間の連携が必要とされながらも、看護師の方々が『十分な時間を割くことが難しい』『医師・ 看護師・難病患者さんの三者で直接コミュニケーションできる場が少ない』などの課題を感じており、医療現場の仕組みや体制面からも、難病患者さんのサポートを考える必要があることがわかりました。」
難病は特に患者の数も少なく、医師も看護師も、患者本人も理解するのが難しい部分もあります。サポートできる範囲に幅はあれど、患者にとって、看護師がありがたい存在であるのは間違いありません。仕組みや体制がより整い、看護師、医師、難病患者、三者のコミュニケーションがさらに円滑になれば、医療の現場はさらに明るくなることでしょう。

・調査概要
名称:難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査 
調査方法:インターネット調査 
調査対象:直近半年間に通院または入院歴のある20〜69歳の指定難病の患者500名
直近半年間に通院または入院歴のある20〜69歳の指定難病以外の病気の患者500名
指定難病患者さんの看護に関わったことのある20〜69歳の現職の看護師464名 
調査期間:2023年7月21日〜8月22日
監修:東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター 難病ケア看護ユニットリーダー 副参事研究員・看護師・保健師 中山 優季 (なかやま ゆき)

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