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国立科学博物館を守る!想いを乗せた9億円超えのクラウドファンディング

国立科学博物館を守る!想いを乗せた9億円超えのクラウドファンディング

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

11月上旬、「#地球の宝を守れ」という合言葉を掲げて挑戦していた国立科学博物館のクラウドファンディングが、目標金額の1億円を大きく上回る約9億2000万円の支援金を集めて成立(終了)しました。

ネットニュースはもちろん、テレビの情報番組などでも大きく取り上げられていたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。9億円超えという寄付額もさることながら、国立科学博物館の資金難という実態が大きく印象に残ったニュースでもありました。

今回は、資金調達の方法のひとつとして定着しつつある「クラウドファンディング」を通じて、博物館や文化芸術、地域文化などを継承していく取り組みについて考えていきたいと思います。

国立科学博物館500万点のコレクションを守るために

「地球の宝を守れ|国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ」プロジェクトは、博物館が所蔵している貴重なコレクションを将来につなぐための収集・保管費用に充てることを目的として今年8月にスタートしました。

現在、動物の剥製や恐竜の化石などの大小さまざまな登録標本や資料数は500万点以上にのぼり、さらにその数は毎年数万点ずつ増えています。しかし、国立科学博物館に展示しているのはコレクションの1%にも満たないもので、それ以外の99%は茨城県つくば市にある収蔵庫に保管されています。

膨大なコレクションの維持管理には人員や空調設備などに多くの費用がかかり、光熱費の高騰やコロナ禍による減収も本プロジェクトの背景にあります。

実は過去に3回クラウドファンディングに挑戦している国立科学博物館ですが、今回の目標額は桁がひとつ違う大きなチャレンジでした。ところが目標金額の1億円はなんと初日で達成。今回のプロジェクトのクラウドファンディング運営会社であるREADYFORによると、集まった支援金約9億2000万円は国内クラウドファンディング史上最高額、約5.7万人という支援者数も過去最多を更新したといいます。

資金集めを超えた仲間集め

国立科学博物館の篠田謙一館長は、プロジェクト終了後、サイト内の動画で「私たちにとっての宝は、皆さんと繋がることができたこと、科博をこんなに大事にしてくれる人たちが斯くも多くいらっしゃるということを再認識できたことだと思います」と、支援者に対して感謝のメッセージを伝えています。クラウドファンディングは、そのプロジェクトに対する“みんなの想いを未来に繋ぐこと”が一番大切なことなのかもしれませんね。
プロジェクト特設サイトはこちら

ところで、国立科学博物館ともなれば、国からしっかりとした補助を受けられるのでは?と考えてしまうのは私だけではないと思います。

プロジェクトの応援コメント欄でも「これほど皆から愛されていることが嬉しい反面、国を代表する博物館が資金難に苦しんでいる事実が悲しいです」とか「他のなんとかしなくちゃならないところにも、同じように関心が向けられるといいなと思います」などの書き込みを見ることができました。

“国立”と名の付いた日本で唯一の総合科学博物館でさえ陥ってしまう「資本主義の仕組みの中では解決することができず、国もカバーすることができない、でも社会にとって必要な取り組み」=社会課題が、実は日本には多く存在しているのです。

みんなの“想い”を乗せた資金で、守りたい未来の実現へ

社会に必要にも関わらず、課題解決コストが高くお金が流れていない領域である代表的な一例が、医療機関です。昨今は「MRI装置や救急搬送車を更新したい」「救急処理室の改修をしたい」ということを目的に、クラウドファンディングを利用する医療機関が増えてきています。

その他にも日本では、山形県米沢市の上杉雪灯篭まつりの伝統継承を目的としたものや、和歌山県九度山町にある真田庵の修復工事、日本百名山・金峰山の忘れられつつある登山道を復活させるプロジェクトなど、地域文化や伝統文化に関わるさまざまなクラウドファンディングが現在進行しています。

『誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる』をミッションに掲げるREADYFORでは、軸とするクラウドファンディングに加えて「継続寄付サービス」や「遺贈寄付サポートサービス」などの仕組みを構築し、継続的に寄付を集めやすくするための体制を作っています。

このままだと消えてしまう運命にある伝統や文化などを守りたいと願うプロジェクトが、今後もクラウドファンディングによって成し遂げられていくことに期待したいですね。


執筆/ フリーライター こだまゆき

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