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大学と企業がタッグを組む、持続可能な“地域共創”を目指す「産学官連携」

大学と企業がタッグを組む、持続可能な“地域共創”を目指す「産学官連携」

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「産学連携」「産学官連携」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
「産学連携」とは、大学や高校などの教育・研究機関=「学」と、民間企業やNPO法人など=「産」の二者が連携する取り組みのことをいいます。例えば、大学の研究成果や技術を企業の製品開発へ活用、二者での共同研究、大学の研究者が企業に向けて技術指導をすること等があります。
「産学官連携」は、産学連携に国や地方自治体などの行政=「官」が加わったものです。行政が企業と大学を結びつける役割を担ったり、三者が共同で研究開発を行ったりすることが一般的です。

今回は、近年政府が力を入れて取り組んでいるこの「産学連携」「産学官連携」について考えていきたいと思います。

国が力を入れて推進する「産学官連携」のメリットとは?

「産学官連携」を推進すると、資金・設備・技術等といった資源に不安がある企業においても、外部資源を活用した効率的な研究開発が可能となります。社内の技術力だけではなく、大学が持つ専門性や設備を活用して新製品や技術を開発することで、自社の強みを高めることができます。
一方、大学・研究機関は、市場や企業ニーズを的確に捉えた研究を行うことができ、企業との共同研究によって「新製品」などの形で、研究成果を社会に還元することができます。

2016年には経済産業省と文部科学省が「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定し、「産学官連携」はビジネスの1つとして成立してきました。そして政府は、「企業から大学・研究開発法人への投資を、2025年度までに3倍に増やすことを目指す。」と発表しました。

「AKOMEYA TOKYO×宮城大学」産学連携プロジェクトから学ぶ

画像出典:「宮城大学×AKOMEYA TOKYO 産学連携プロジェクト 」リリース

先日、仙台市青葉区にある「AKOMEYA TOKYO 仙台パルコ」にて、宮城大学の学生たちが授業内で提案した宮城県の地域商品を接客販売するというユニークな取り組みが実施されました。「仙台麩」や「宮城ほやラー油」など、自ら発掘した商品を販売するにあたって、数ヶ月前から実践的な食品マーケティングをAKOMEYA TOKYOから学びました。

「AKOMEYA TOKYO」は、“一杯の炊き立てのごはんから広がるおいしい輪”をコンセプトに、全国各地から厳選したさまざまな種類のお米を中心に、ごはんのお供や調味料、食卓を彩る伝統的な雑貨類などを取り扱うライフスタイルショップです。

宮城大学の食産業学群では、3年次後期開講の選択科目に「食品マーケティング演習」があります。昨年10月、この講義に立ったのがAKOMEYA TOKYO マーケティング部長の柘野氏。学生たちは、AKOMEYA TOKYOのプロデュースプロジェクトリーダーとして最前線で活躍する柘野氏から、これからの時代に求められるマーケティングやPR戦略などのレクチャーを受け、受講した学生たちからは「顧客が求める価値を提供しながら社会貢献に努め、企業としての信頼を高めるためには、何をどうやって届けたいのかをしっかりと固めることが重要と学んだ」などといったコメントが挙がりました。

12月の講義ではプレゼンテーションが実施され、日本の食の可能性が広がるSDGsに貢献するものから、創業者の思いや商品のこだわりなどストーリー性のある商品が、学生たちから提案されました。

宮城県の地域資源を活用した商品販売が、仙台パルコで実現!

SNS発信や店頭でのコミュニケーション設計などにも挑戦したという学生たちは、販売するうえで必要なPOPやパネルなどの店頭販促物も制作し、1月12日と1月19日の2日間、実際に店舗で接客販売を行いました。
今回販売された商品は、「宮城ほやラー油」「仙台麩」「本場仙台みそ」「canささ 牛たんアヒージョ」など、全15アイテム。今回の商品は、仙台パルコ本館1階の「AKOMEYA TOKYO 仙台パルコ」で1月末まで販売しています。

画像出典:「宮城大学×AKOMEYA TOKYO 産学連携プロジェクト 」リリース

地域や作り手の経済的利益だけではなく、地域資源の活用や食文化の伝承など「社会的価値の実現を目指す」という共通ビジョンのもと行われた今回のプロジェクト。フィールドに出て実践的な販売体験ができた食産業学生にとっては、地域の食文化を見直すいい機会になったのではないでしょうか。

また、AKOMEYA TOKYO側は、学生たちのプレゼンを通して「宮城県には様々な食材があり、海、山、陸のすべての食材が揃う地域であること。また、それぞれの食材に魅力的なストーリーがあることがよくわかった」と述べています。

持続可能な地域共創のための取り組み

日本では近年、「産学官連携」に取り組む企業や学校が増えています。 
長崎県では、一般社団法人 海と日本プロジェクトinながさき、諫早市、学校法人奥田学園 創成館高等学校、セブンイレブンの4者が連携して、誰でも拾ったごみを入れることができるボランティアごみ箱「拾い箱」を制作しました。
これは、海の未来を守るための取り組み「海と日本プロジェクト・CHANGE FOR THE BLUE」の一環で、長崎県内のセブン-イレブン前に1月26日(金)から設置されているものです。今回設置された5台のうち、2台は創成館高等学校のデザイン科の生徒がデザインを担当しています。

画像出典:「海と日本プロジェクト広報事務局」リリース

また、佐賀県では、システム開発などを行う株式会社アシスと佐賀大学、東京工科大学が産学連携して、災害支援コンテンツおよびシステム開発の共同研究契約を結んでいます。アシスが開発した直感型メタバース「Open Metaverse Portal」のプラットフォームを活用したもので、佐賀県が2019年、2021年と2度にわたって水害に見舞われたことが背景にあるといいます。

産・学・官がそれぞれの持つ強みを生かしつつ、それぞれにメリットを見いだせる産学連携や産学官連携は、その実績によって企業価値や学校の認知度の高まりが期待できることから、今後ますます増えていくのではないでしょうか。SDGsの視点でも注目したい手段ですね。


執筆 / フリーライター こだまゆき

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