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地球上のサスティナビリティだけじゃない。持続可能な宇宙環境を目指すために「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」の改善を目指すプロジェクトとは

地球上のサスティナビリティだけじゃない。持続可能な宇宙環境を目指すために「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」の改善を目指すプロジェクトとは

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

地球上にあるゴミには関心がある人も多いですが、宇宙にあるゴミに関心がある人はどのくらいいるでしょうか?宇宙ゴミとは地球の衛星軌道上を周回している不要な人工物体のことで「スペースデブリ」と呼ばれています。

1957年に世界で初めて人工衛星が打ち上げられて以来、軌道にはスペースデブリが着実に増加。土星の輪のようなイメージで地球の周りにスペースデブリが周回している状況です。宇宙開発に伴って、その数は年々増え続けているため早急に対策が必要となっています。というのも打ち上げられたロケットや衛星にスペースデブリがぶつかりダメージや事故となったり、スペースデブリと隕石がぶつかり双方が散らばったりと大きなトラブルにもなり得るからです。現在、飛んでいる衛星へのダメージともなると、天気予報や災害検知、世界各地の衛星画像、更には普段使っているデジタル機器にも影響を及ぼす可能性があります。

このように、スペースデブリは地上にいる人にとってはあまり知られていない課題ですが、人ごとではなく大きな問題となっています。また、宇宙開発というのは人の手によって行われていることです。そしてSDGsでは目標12に「つくる責任つかう責任」が設定されています。これは人間がロケットなどの宇宙に携わるモノをつくる中で、つかう責任を果たし宇宙を汚さないという環境保護と同等の責任にもあたるのです。

スペースデブリを調査・回収するプロジェクトが始動している

このような中、スペースデブリの状況をより深く理解し、持続可能な宇宙環境の確保に貢献しようとしているのが日本発のグローバル企業、アストロスケールです。”将来の世代の利益のための安全で持続可能な宇宙開発"をビジョンに掲げています。そしてこのスペースデブリの調査や回収する事業、プロジェクトを進行中。スペースデブリは問題視されているものの、現状は開発段階です。

なぜなら、スペースデブリは低軌道では秒速7Kmと高速スピードで移動しているため、陸地にあるゴミのように簡単に拾うことができないからです。そのためスペースデブリを捕獲・除去する前に、まずは対象となる物体を見つけて接近し、劣化状態や回転速度などその状態を把握するというプロセスが必要です。スペースデブリのスピードと一緒に動きながら形状、スピード、重さなどを撮影・確認することはなかなか大変な技術。例えるなら超高速のレーシングカーの運転手と握手するようなものと言えます。

「ADRAS-J」ミッションが未来の宇宙を変える?

アストロスケールが進行中のプロジェクトに「ADRAS-J」があります。アストロスケールは、大型デブリ除去等の技術実証を目指すJAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズⅠの契約相手方として選定、契約を受けて、「ADRAS-J」を開発しました。ADRAS-J ミッションは、実際のスペースデブリへの安全な接近を行い、スペースデブリの状況を明確に調査する世界初の試みです。スペースデブリという非協力物体への接近には無重力の宇宙空間で近づくためのに必要な距離や位置関係を把握するためのʻʼ目ʻʼ、進むべき道を計算するʻʼ脳ʻʼ、移動するためのʻʼ足ʻʼが必要になります。 調査のためには先ずは軌道上のスピードにのっかり、スピードと回転を合わせながらスペースデブリと距離を詰めていかなければならず、このRPO(ランデブ・近傍運用)技術も進めているプロジェクトで実証しようとしています。

「ADRAS-J」にはRPOミッション成功の鍵となるナビゲーションセンサやランデブー機能など、強化された技術を搭載。RPOや航法(ナビゲーション)に最適化したセンサーおよびカメラを、超長距離を含む複数の距離範囲で使用します。また、センサー郡のシームレスな切り替えも、ミッション成功のための重要な要素です。これは例えると、高速で移動する乗り物に乗りながら、特定の物体を望遠鏡、双眼鏡、虫眼鏡を切り替えて観察するようなものです。

宇宙のサステナブルな取り組みが未来の可能性を広げる

このプロジェクトを進めることで今後のスペースデブリ除去だけでなく、宇宙における観測・点検の基盤となり、以下のような4つの軌道上のサービスにも繋がります。

EOL(End-of-Life Service )
衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス
※寿命を迎えた衛星は大気圏の中で燃えて消滅するようになっていますが、燃え尽きなかった時に宇宙ゴミ化しないようにするなどのサポート

ADR(Active Debris Removal)
先に説明した既存のスペースデブリ除去サービス

LEX(Life Extension Service)
寿命延長サービス
※現在飛んでいるロケットや衛星への燃料の補填など

ISSA(In-situ Space Situational Awareness)
故障機や物体の観測・点検サービス

このプロジェクトは宇宙のサステナビリティだけでなく、その後に影響を及ぼす地球上のサスティナビリティにも繋がり、未来の可能性に向けた壮大な取り組みです。

また、宇宙は国境がないため、どこで誰が何を担うかという部分が曖昧になるためルールづくりも重要です。このルールがSDGsの目標12に「つくる責任つかう責任」にも大きく影響を及ぼします。アストロスケールはデブリ低減に向けた国際的な法規制の議論への参加等に取り組むこともミッションに置いており、世界中を巻き込みながら進行中です。

地球は宇宙の中の1つの星であり、宇宙のバランスの中で成り立つ星です。身近なところで言うと太陽光や月光など、多くの恩恵も受けています。そのような宇宙への汚染が人間の手で行われているのは大問題です。何百年先、何千年先も美しい宇宙と共に歩んでいけるように宇宙へのサスティナビリティや課題にもしっかりと目を向けていく時代ではないでしょうか。

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