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国産の木材を持続可能な材料として見出した展示什器が話題|日本科学未来館

国産の木材を持続可能な材料として見出した展示什器が話題|日本科学未来館

#SHOW CASE
  • エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 住み続けられるまちづくりを
  • つくる責任つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を

日本科学未来館(略称:未来館)で2023年11月22日(水)より開始したサステナブルな展示づくりとして注目されている「地球環境」をテーマにした常設展示「プラネタリー・クライシス -これからもこの地球でくらすために」。
この展示では、国産の木材を使い2種類のユニットを組み合わせて什器を作成。製作過程ででた端材を余すことなく使用したり、展示終了後は什器をバラしてほかの用途にも使ったりすることができるサステナブルな仕様になっています。

今回は日本科学未来館の「プラネタリー・クライシス」プロジェクトマネージャーの山田さんに案内頂きました。

また、未来館では2024年1月24日(水)よりアート作品を通じて科学技術について考える常設展示「零壱庵」において、「太陽の通り道 ― 霧のNFTがたどる永遠」もスタートしました。霧や泡などの物理現象とデジタル技術を掛け合わせた、新しい体験方法を探る体験型NFT(非代替性トークン)アート作品ですので、合わせてぜひ体験してみてください。

プラネタリー・クライシス -これからもこの地球でくらすために

「プラネタリー・クライシス -これからもこの地球でくらすために」の展示は4つのゾーンからなっています。

<ゾーン1:地球の旅に出る>では、大型シアターで現在海面上昇などの気候変動の影響を受けているフィジー共和国のくらしを紹介。床が振動したり、風や熱を感じたりしながら、実際に自分がそこに立っているかのような体験を通して「自分ごと」として体感することができます。

<ゾーン2:変わる地球の今に触れる>では、地球の温暖化についての問題提起をしています。近年気温が急上昇していることがわかるグラフや10の国や地域を対象に一人あたりや国ごとの二酸化炭素排出量の違いを一目で理解できる展示がされています。二酸化炭素排出量は木のボールの大きさと量で体感できるよう工夫されていて、目が不自由な方でも触って確かめられたり、子どもも楽しみながら学んだりできるようになっています。

また、私たちが努力した場合と何もしなかった場合の海面上昇がどのくらいになるのかをARコンテンツによってインタラクティブに体験することもできます。

ひとりひとりが排出する二酸化炭素の排出が少なくても、人口が多ければ国ごとに排出される量がこんなにも違うということが分かりやすい展示になっています。

<ゾーン3:くらしと地球を見つめる>では、私たちの食卓と地球環境問題がどう関わっているのかを音声や映像を体験しながら知ることができます(組み合わせは7つ以上)。

例えば「牛肉1kg生産するために必要なエサは約25kg。それにプラスして膨大な土地が必要」「人間の活動によって発生する温室効果ガスのうち15%が家畜によるものと言われている」など、普段どのように環境に影響することをしているかを学べる体験コーナーとなっています。

<ゾーン4:これからもこの地球でくらす>では、私たちが地球環境に及ぼしているさまざまな影響に対し、解決に取り組んでいる方々の取り組みを紹介しています。

また、実際に起こっている環境問題について考え、自身のアイデアを声や絵にして投稿することができます。

ほかの方の投稿も見られるようになっており、なるほど! と考えさせられる投稿もあり新鮮でした。

「皆さんの取り組みやアイデアを表示する木の枠と吹き出しはちょっと変わったかたちですが、同じ木材から無駄なく切り出しているからなんです。またプロジェクションで皆さんのアイデアを表示することで、投稿によって紙などのごみをつくらないように心がけています」と山田さん。

ちなみに未来館で使用する電力は、2022年から再生可能エネルギー100%でまかなわれているそうです。

この展示の特徴である国産の木材を使った展示什器

会場に着いて目につくのがこの大きな木の什器。直線のボックスとカーブが付いたボックスの2つのユニットを組み合わせて椅子としてつかったり、ゲートにしたり、展示物を置くことができるようになっています。
鳥取県で仕入れた丸太を県内の木材工場で製材し、広島と滋賀で木材をカットし、大阪で組み立て未来館に運ばれました。

組み立ては環境配慮のため、接着剤をなるべく使わず、ほぞ組と呼ばれる凸凹を組み合わせてネジで止めています。

ネジを外すとバラバラになるため、この展示が終わったあとご家庭で本棚として使ったり、ほかの展示物を飾る棚として使ったりすることができます。

また、展示が終わった後どのように使うか、端材で作った1/7サイズのミニチュア什器をつかって子どもたちに自由な視点で組み合わせパターンを作るワークショップも行われました。

「リユースを考えると言うと少し堅苦しいですが、積み木で手を動かしながら考えることで、参加してくれたお子さんたちは什器を遊具に使ったり、回転させながら遊んだりといったいろんなアイディアを出してくれました。」と山田さん。

通常の家具としては使いにくい木も工夫次第でつかえるように

昔は薪を作るために頻繁に枝を切って使われていたとみられるカシの木の根。このような木材は通常、細かくしてチップとして燃やすなど、あまり使い道がありません。

東京都の檜原村で林業をされている方からご提供いただきました。テーブルにして未来館で使ってみようという話が上がった際、「複雑なかたちや樹皮がついていることで、服が汚れるなど来館者のみなさんの反応を心配していました。みなさん自然に使ってくださっています」と山田さん。

休憩する場所として使ったり、校外学習の生徒がワークシートを書く台として来館者が使ったりしているそうです。

こういった二股になってしまった木も通常は使いにくい材料とされています。
使い道がなかった木がこのように使われるのは嬉しいことです。

国産の木材を使ったサステナブルな展示に触れて

木を伐採することがもしかしたら悪いことと感じる方もいるかもしれませんが、必ずしも環境破壊を引き起こすわけではありません。
日本は森林資源が豊富な国で、かつては木を植える、育てる、伐採するというサイクルの中で木材が再生され、持続可能な材料として暮らしの中で使われ続けてきました。

山田さんは今回の展示づくりを通じて「今回のように、展示で使うといった国産の木材の新しい用途を見出していくことで、森林を保ちながら私たちの生活も持続できるようになっていくといいなと思います」とおっしゃっていました。


執筆/フリーライター 藍沢美香

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