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医療スタッフの“自分らしさ”を大切に。男性専門美容クリニックが身だしなみルールを改定

医療スタッフの“自分らしさ”を大切に。男性専門美容クリニックが身だしなみルールを改定

#SHOW CASE
  • 働きがいも経済成長も

近年、個人の多様性や異なる価値観を尊重するため、従業員の身だしなみや服装のルールを改める企業が増えてきています。男性専門の総合美容クリニック「ゴリラクリニック」もそのひとつ。“理想の自分らしさを追い求める男性をサポートする”との理念に合わせ、働いているスタッフの多様性を認め合うため、2024年1月に身だしなみのルールを見直しました。

ピアス・イヤリングは「着用不可」。厳しかった従業員の身だしなみルール

ゴリラクリニックは「男性の美容という文化を創る」とのブランドミッションを掲げ、東京や大阪など全国に22院を展開する男性専門の美容クリニックです。医療用レーザーを使用した医療脱毛をはじめ、スキンケア治療やニキビ治療などさまざまな治療を展開しています。“男性美容のパイオニア”として注目されるクリニックでは元々、医療機関であるがゆえに従業員の身だしなみについて厳格なルールが定められていました。

例えば、ピアス・イヤリングは着用不可、指輪は結婚指輪のみ着用可、髪の色は「ヘアカラーチャートの8番まで」といったルールです。ルールが定められていた一番の理由は、医療機関としての安全面や衛生面を守るため。医療機関として、第一に安全性を考慮し施術などに支障を与えないこと、患者に不快感を与えないことを理由に、“当たり前のルール”として考えられていました。

しかし、自分らしい見た目を尊重することが、スタッフの心身ともに健やかな状態を保つことにつながり、ひいてはそれが個人の成長の助けに成りうるのでは――との考えのもと、ゴリラクリニックでは身だしなみ規定を改定することになりました。

「なりたい見た目になれずストレス…」スタッフへの意識調査で分かったこと

クリニックでは今回のルール改定に伴い、2023年12月15日から2024年1月9日の25日間、在籍する医師・看護師・カウンセラー292人を対象に、服務規程に関する意識調査を実施。調査の結果、「身だしなみ改定についてどう思うか」との問いに対して、8割以上のスタッフが「うれしい」と回答し、多くのスタッフが“自分らしい身だしなみ”を求めていることが分かりました。

また、身だしなみで苦労したエピソードを聞くと、「人生のイベント時に思ったような髪色にできなかった」「規定外の色やデザインにした際、患者さまからはかわいいネイルと言われたが、上司からは直すよう指導された」「髪の毛が黒いことにより気持ちが暗くなる、なりたい見た目になれないことで心のストレスがたまる」などの意見が寄せられたそうです。

「身だしなみの変化で気持ちの変化はあるか」との問いには7割以上のスタッフが「ある」と回答。外見が変わることで内面を前向きに変化していくことがうかがえました。そして「身だしなみ改定を受けて身だしなみを変えようと思うか」との問いにも7割が「変えたい」と答え、全体を通して服務規程の改定に対してポジティブな意見が大多数を占める結果となりました。

髪色やネイルを自由に。スタッフの“自分らしい”身だしなみを尊重する

こうしたスタッフたちの意見をもとにゴリラクリニックは、
①髪色制限の廃止②アクセサリー着用規定の一部緩和③ネイルの自由化(医師・看護師は一部制限付き
などの身だしなみルールの改定を行いました。この改定により、髪の毛にインナーカラーを入れたり、好きなデザインのネイルを楽しんだりするスタッフも増えているのだそう。

一方、「頭髪は不潔感を与えないように定期的にカラーリングする」「肩にかかる長さの場合は、バレッタまたはクリップでまとめる」「爪の長さは作業の妨げにならない長さで整える」といった決まりも設けられました。医療機関として安全面や衛生面を第一に考慮したうえで、スタッフの多様性を認め合うルールを実現し、クリニックには以前よりも明るい雰囲気が漂っているようです。

近年はスーパーやテーマパークなどを中心に、従業員の髪色やネイルのルールを大きく緩和する動きが広がっています。また接客業に限らず、オフィス内で働く業種においても女性の制服の廃止や服装の自由化などのルール改定が目立ちます。働き手の身だしなみや服装を自由化することで、多様な人材が集まるようになったという企業もあるようです。

自分が好きな自分、自分らしい見た目で働けることは、スタッフのモチベーションアップにつながり、さらに生産性の高い職場へと変わっていくことも期待できます。また、それぞれのスタッフの個性や多様な価値観を認め合うことで、自由でカラフルな雰囲気が生まれ、誰しもが働きやすい職場づくりにもつながるでしょう。それは、SDGsの目標のひとつである「働きがいも経済成長も」の実現にむけた一歩になるのではないでしょうか。


執筆/フリーライター 荘司 結有

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