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使用済み食用油が飛行機の燃料に!廃食用油の再利用とは

使用済み食用油が飛行機の燃料に!廃食用油の再利用とは

#SHOW CASE
  • エネルギーをみんなにそしてクリーンに

皆さんの家庭では、使い終わった食用油の処理、どうしていますか?古紙や古布に染み込ませたり、凝固剤で固めて捨てているという人が多いのではないでしょうか。油の量が多いときなどは正直ちょっと面倒なイメージがありますよね。

実はこの使い終わった油、適切に処理すれば石鹸やインクの原料、さらには航空機の再生燃料の原料として使うことができるのです。
「揚げ物に使った後の油が、飛行機の燃料に?!」と、びっくりですよね。

捨てるなんてもったいない!脱炭素を目指す次世代の資源として、日本だけでなく世界中で注目されてる「廃食用油」について考えてみましょう。

「廃食用油」は二次的な有効資源

日本では年間どれくらいの食用油が使われ廃棄されているのでしょうか。全国油脂事業協同組合連合会によると、食用油の国内年間消費量は約248万トン。そのうち約50万トンが廃棄されているといいます。

廃食用油の多くは飲食店や食品工場など事業系から出ています。しかしそのほとんどは、鶏や豚などの畜産飼料の添加物に生まれ変わったり、石鹸やタイヤ・塗料などの原料としてリサイクルされています。

例えば、東京スカイツリータウン内の商業施設「東京ソラマチ」では、飲食店舗から出る廃食油を活用してバイオ燃料(生物資源を原料とする燃料)にする資源循環の取り組みが実施されています。

これは、東京ソラマチ内の約40店舗から回収された使用済みの廃食用油をバイオディーゼル燃料「B100」に再生し、それを「とうきょうスカイツリー駅」周辺の連続立体交差事業の工事現場で発電機に再利用するというもの。B100を約4000リットル使用することで、およそ10トンのCO2削減効果が見込まれています。再生エネルギーの回収から再利用までを同一地域でまかなう、新しい形の地産地消型資源循環モデルとして期待されています。

一方、家庭から出る使い終わった油は年間10万トンといわれており、それらはリサイクルされることなく、約9割が廃棄されているのが現状です。

自治体によっては、廃食用油を資源ごみとして回収しているところもあります。例えば練馬区では、サラダ油やごま油、オリーブオイルなどの植物性の油を対象に、“充分に冷ました状態でペットボトルに入れ、キャップをしっかり閉め、各施設の指定日時に設置される回収用コンテナに出す”となっています。

私の住んでいる町は?と気になったので調べてみると、油は「新聞紙・ボロ布などに染み込ませて出してください」となっていて「燃やせるごみ」の扱いでした。
皆さんも一度お住まいの自治体のHPなどで確認してみてはいかがでしょうか。

少量だからオーケーではない!油は下水道に流しちゃダメ!

やってはいけないのが、料理で使った油をそのままキッチンの排水口に流してしまうことです。一般的な家庭で使用されている動植物油は、微生物による分解が可能とはいえ、分解速度は非常に遅いのだそう。大さじ1杯の油を排水口に流した場合、浄化するのに湯船17杯分の水が必要ともいわれています。

流出した油が川や海に流れ込むことで、分解しきれない油が時間の経過とともに酸化され、水中の酸素を消費します。魚や水鳥などの生態系に少なからず影響することは言わずもがなですよね。フライパンやお皿に残った油は、なるべくキッチンペーパーなどに染み込ませて捨てるようにしましょう。

次世代の航空燃料「SAF(サフ)」って?

「SAF」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。SAFは、Sustainable Aviation Fuelの略で「持続可能な航空燃料」のことをいいます。

SAFも、植物などのバイオマス由来原料や廃棄物・廃食油に含まれる炭素などから製造されるバイオ燃料のひとつです。従来の航空燃料である化石燃料と比べて温室効果ガスを削減できるため、次世代の航空燃料として注目されています。

国は30年までに国内航空会社が使う燃料の10%をSAFにする目標を掲げており、段階的ですが、すでに使用している航空会社もあります。

SAFは従来の航空燃料と比べて製造コストが高いことがデメリットといわれています。しかし、輸入に頼るしかなかった従来の航空燃料とは違い、廃食用油などのSAF原料は国内でもまかなえるという点がポイントです。国産SAFの生産実現に向けた動きが今後さらに活発化するとみられています。

JALと横浜市、廃食用油を航空燃料の原料に活用

航空業界では国際的な目標として、2050年までにカーボンニュートラル(CO2排出ゼロ)を目指しており、国内大手航空会社もSAFの調達や使用に積極的に取り組んでいます。

そんななかJAL(日本航空)はこの3月から、横浜市とタッグを組んで、家庭から出る使用済みの食用油を回収する取り組みをスタートしました。

第一弾として、横浜市緑区のイオンフードスタイル鴨居店に回収ボックスを設置しました。市民は専用回収ボトルに廃食油を入れて持参し、回収ボックスに注ぎ入れます。なお、空になったボトルは自宅に持ち帰って再利用が可能です。
店舗で回収した食用油が一定量溜まると、廃食油回収事業者が回収し、SAFなどの製造工場に運ばれる仕組みです。

JALグループは、「全燃料搭載量のうち、2025年度に1%、2030年度に10%をSAFに置き換える」という目標の達成に向けて、国内SAFの製造と商用化を目指すとしています。

航空機はほかの交通機関に比べて輸送単位あたりのCO2の排出量が多いことから、2019年にはヨーロッパを中心に「フライトシェイム(flight shame)」=「飛び恥」という言葉まで生まれました。脱炭素に向けた動きは世界中で加速中です。カーボンニュートラルなフライトを目指して、航空業界をはじめ世界は大きく変わろうとしています。
「使い終わったあとも大切な資源!」私たちはそのことを頭に入れて、環境に負担をかけず、美味しく上手に「油」をリサイクルしたいものですね。


執筆/フリーライター こだまゆき

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