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ローランズ代表取締役・福寿満希さんと考える障がい者雇用 後編 「働きがい」にもつながる取り組

ローランズ代表取締役・福寿満希さんと考える障がい者雇用 後編 「働きがい」にもつながる取り組

#RADIO
  • 働きがいも経済成長も

ニッポン放送でオンエア中のSDGsを楽しく分かりやすく学べるラジオ番組『SDGs MAGAZINE』。12月10日の放送回では、前週に続き、従業員のおよそ7割が心や体の障がいと向き合っているという株式会社ローランズの代表取締役・福寿満希さんをゲストに迎え、パーソナリティの新内眞衣さんが「働くこと」をテーマに話を聞いた。

目の不自由な人が安心して街を歩けるように「音の出る信号機」を設置する基金を募るチャリティ・キャンペーンの中心となる、ニッポン放送の24時間特別番組「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」の放送が迫る中、今回の放送テーマに選ばれたのが「障がい者雇用」。積極的な障がい者雇用を実現する仕組みを構築し、フラワー事業、緑化事業、フード事業などを展開する株式会社ローランズの福寿さんと、今回は「働くこと」について深く掘り下げた。

障がい者の共同雇用とは

新内 「今回は、『働くこと』についてお話を伺っていきたいと思います。というのも、SDGの目標の中には、目標8『働きがいも経済成長も』というものがあり、人間にとって『働く』というのは、『賃金を得る』以外にも『自分の居場所をつくる』『社会に認められる』『誰かの役に立つ』といった大きな意味も、その一つの理由として挙げられることがあります。福寿さんの会社ローランズでは、障がい者の雇用を広げるべく、国家戦略特区と一緒に『障がい者の共同雇用』というのも考えているとか。これは具体的にはどういったことなんでしょうか」

福寿 「通常の障がい者雇用は、企業が単独で取り組むものですが、日本の障がい者雇用にチームアップ手法というものを取り入れるために、2019年にウィズダイバーシティという組合を設立しました。これは何かというと、複数の企業がグループになって、会社10社があったとしたら、そのうちの障がい者雇用のための状態が整っている企業を一つ決めて、そこに仕事を集める。そこに雇用関係を集約してつくっていくことで、チームで効率化して、1社ではできないのだけど、障がい者雇用のノウハウがある企業にもそこのチームに入ってもらって、みんなで障がい者雇用をつくり出していきましょうというモデルになります」

新内 「そうなると、どういう良いことがあるんですか」

福寿 「今まで障がい者雇用を達成できていなかった企業が、ノウハウがある企業と一緒にグループになれるため、達成できるようになる仕組みです」

新内 「今ご説明いただいたことはすごく理解できたんですけども、実際に障がい者雇用を取り巻く環境や実状について思われることはありますか」

福寿 「日本の状況についてお伝えすると、日本には障がい者の法定雇用制度というものがあって、会社の従業員44人に対して1人ずつの障がい者雇用を行うということが企業の社会的義務として決められているんです。ただ、なかなかそれを達成することが難しい企業も多く、実際日本の50%以上の企業が達成できていないという状況があります。そうした企業の一番の悩みは何かというと、どんな業務を切り出していいか分からないということ。あとは、どういった配慮をしたらいいのか、どういった環境をつくってお迎えしたらいいのか、どうやって採用したらいいのか分からない・・・など、いろいろな『分からない』ことが多くて一歩前に進めないということがあるんです。ウィズダイバーシティの仕組みで、自分の会社でも雇用するための仕組みを0.5歩でもつくっていけるようなチームアップができると良いのかなと思っています」

新内 「そうした現状を伺うと、福寿さんのところにたくさん相談が来ているのでは、と思います」

福寿 「そうですね。チームでつくる障がい者雇用のやり方を聞きにいらっしゃる企業様もいらっしゃいますし、すごくご相談は多いです。とくに精神障がいの方が今、全国的にも増えていて、見えない障がいだからこそ、どう配慮していいか分からないという、またさらに『分からない』が増えてきてしまっています。でも、一回接点を持って接してみると、いろいろな起こりえないことを想像してしまっていた頭が一度リセットされて、イメージが変わっていくこともあると思うので、こういう仕組みの中で仕事を一緒にやるということが一つのきっかけになる。自分の会社ではなく、グループ関係にある会社の中での接点から、思い込みだったり、偏見だったりとかをなくしていける可能性はあると思います」

大事なのは、たくさんの「うれしい」を生み出す形

新内 「結構頭でっかちになってしまうといいますか、これはどうなんだろうみたいなことが、接点を持つことでなくなっていくというのはあるかもしれないですね。福寿さんはローランズで障がい者雇用7割を実現されているとお伺いしているのですが、向き合う上で気を付けていることとかはあるんですか」

福寿 「小さな幸せを一緒に見つけていくというか、それをたくさん見つけられるようにしています。例えば、業務設計のところからちょっと工夫を入れているんですけど、業務をやるときに1人のスタッフが1から10までをやるのが大体のパターンというか、一般的に求められることですが、その工程を20分解くらいして、その細分化された業務の一つに特化してお仕事をしてもらうということをしています。一つの業務のプロフェッショナルとして働くことで、できないことをやるよりも、できることに特化してやるので、すごく『ありがとう』と言われる回数が増えたり、自分が得意なことをやり遂げたことへの達成感を感じられたりとか、一つできるようになったらまた別のことに挑戦してみたいと思い、モチベーションを次の目標に設定していったりとかができる。1から10を一つのゴールとしてやってしまうと、とても果てしないことになってしまうんですけど、ゴールを小さく設定していくことで、たくさんのうれしい、良かったを得られる。そういった業務工程を細分化して、そのプロフェッショナルをつくるという仕事のやり方っていうのは会社の特徴的な取り組みかなと思います」

新内 「できないことができるようになるって、すごくうれしいですし、それを一緒に分かち合えたらもっとうれしいですもんね」

福寿 「そのうれしいがたくさん生まれていくように、工程づくりで貢献し、そこの環境をいかにつくれるかというのが管理者の仕事になってくるかなと思います」

新内 「細分化することで効率も上がりそうですしね」

福寿 「そうなんです。好きな仕事、得意なものってどんどん前のめりでやれる一方、苦手なものって後まわしにしがちで、苦手なことのボリュームが多いと、全体的に効率が悪いよねと言われたりしてしまうんです。でも、好きなことに特化すると、業務効率も、スピードも速いので、そういう得意ジャンルをうまく組み合わせると、トータル的にすごく効率化されるという利点があります」

“はまる場所”を見つける

新内 「すごく素敵な仕組みだなと思うんですけど、それぞれの良さを引き出す秘訣、工夫はありますか」

福寿 「“はまり場所”を見つければいいだけなのかなと思います。花の仕事をやりたくて挑戦したんだけど、花の仕事では自分の持っている得意分野が活きなかった。じゃあ、カフェの仕事をやってみたら、実は食器を洗うこと、すごくきれいにすることに特化してできる。それってすごいことじゃないですか。別の人がやったら油の汚れが落ちていないのに、AさんからBさんに代わると油の汚れが一切残っていない、やり直しがなくなって、業務効率が良くなる。今は、はまっていなくても、そして次もはまらなくても、もう一回次のところに行けばはまるかもしれない。それこそ今、障がい者雇用の文脈で話をしましたけど、一つのところで自分が活躍できる場所が見つからなくても大丈夫、何度でも挑戦して見つかるところで見つかるから・・・というふうに思っています」

新内 「それは、聞いている皆さんでもしみる方、結構な数いらっしゃるんじゃないかなと思います」

福寿 「ちょうど、この言葉がしみるような体験が何か・・・」

新内 「ありますね。こういうお仕事をしていると正解がない。この言い回しは良くなかったかもしれないとか考えだすと、止まらなかったりとかしますし、一方ですごく自由にしゃべって楽しかったというときもある。自分の“はまるもの”って何なんだろうと模索している最中でもあるのかなと思うと、それが駄目でも、これが駄目でも、また次に成功するものがあるかもしれないと思えれば、もうちょっと頑張れる気がしました」

福寿 「良かったです」

新内 「自分が諦めそうになった時でも、周りの人が諦めないでくれていると、すごく心強いなって思いますし、家庭とかお友達関係以外で、お仕事の現場で自分の居場所を見つけられるって、本当に素敵だなと思うので」

福寿 「はい、それはすごく感じます。そういったメッセージが伝えられるような商品をこれからもつくっていきたいなと思っています」

新内 「ありがとうございます。私の心もすごく軽くなった気がします」

そして、番組恒例の質問。新内さんは福寿さんに「今私たちができること=未来への提言」をたずねた。

福寿 「すごく悩んだんですけど、今私たちは既にとても豊かであるということに気付くことからスタートすることが大事なんじゃないかなと思います。いろいろな欲って出てきてしまうと思うんです。自分にないものを求めて、もっともっとってなってしまいがちですけど、実はたくさんのものを既に持っていて、それに気付けるともっともっとというのがすごく求めすぎないんじゃないかと思うことに気が付いていけるのかなと思います。水が飲みたいと思った時に蛇口をひねれば出る水がある。既に私たちは、たくさんのものを持っていて、当たり前だと思っていることが当たり前じゃない人たちもいる。そういう状況があることを知っていると、すごく小さなことを幸せに感じていける、幸せに気付けるようになるなと思うので、『なんで自分はこんなに恵まれていないんだろう』とか『つらいことばかり起こるんだろう』と思った時こそ、ぜひ何が自分の周りにあるのか、持っているものって何なのかということを見直してみてほしいんです。そうすることで、つらい気持ちから解放されることがあるんじゃないかなと思います。既に自分が豊かであるというところに気付いていただくところから始めていただけたら、うれしいなと思います」

新内 「私も、今日はこの言葉を胸に、幸せに眠ろうと思います。ありがとうございました」

福寿 「ありがとうございました」

障がい者雇用から、「働く」ということの意味や、向き合い方という大きなテーマにまで話が及んだ今回の放送。新内さんは「本当にいいお話を聞けましたし、私もハッとすることがたくさんありました」と、強く胸に刺さるものがあったことを明かし、「周りにあるものに目を向けないって、そんな愚かなことはないですよね。ちゃんと目を向けていなかったりとか、向き合っていなかったりというのも、私にとって課題だなと思ったので、福寿さんをゲストにお招きして、いろいろとお話しできて良かったなと思います。忙しい日々の中で、ちょっと一旦立ち止まって、何か気持ちの整理だったりとか、新しい気持ちで挑めるように身の回りのあるものを探してみたりするっていうのもいいんじゃないかなと思いました」とうなずいた。

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