“SDGs”と“企業”をもっと近づける!SDGs MAGAGINE

6度目の生物大量絶滅!日本ではもう見ることができない「フォッサ」とは

6度目の生物大量絶滅!日本ではもう見ることができない「フォッサ」とは

#SHOW CASE
  • 陸の豊かさも守ろう

先月、上野動物園で飼育されていた「フォッサ」が死んだという悲しいニュースがありました。死因は誤嚥による窒息と発表されています。日本でフォッサを飼育する動物園は上野動物園のみだったため、これによって国内ではフォッサを見ることはできなくなってしまいました。

日本で上野動物園にしかいなかった「フォッサ」ってどんな動物?

今回死んでしまったのは、オスの「ベザ」(18歳)です。メスの「アンバー」とともに2010年に上野動物園に来園しました。日本でのフォッサの公開はこのときが初めてで、西園にある「アイアイのすむ森」で見ることができました。
ペアでやってきた2匹でしたが、残念ながら繁殖にはいたらず、2017年にアンバーが死亡して以降、ベザは日本で唯一のフォッサとして飼育されていました。

フォッサは、インド洋に浮かぶマダガスカル島だけに生息する固有種です。正面を向いた大きな目が特徴で、体長は60~80センチ。体長よりも長いしっぽを持っており、樹上生活に適した体つきです。マダガスカル島では最大の肉食獣で食物連鎖の頂点に君臨します。

生命のバロメーター「IUCNレッドリスト」とは?

“現在、絶滅が心配されている生物”のことを「絶滅危惧種」といいます。国際自然保護連合(IUCN)では、絶滅しそうな動物をまとめた「レッドリスト」を作って保護を呼びかけています。レッドリストでは、種の絶滅危険度を「絶滅」、「野生絶滅」、「深刻な危機」、「危機」、「危急」、「準絶滅危惧」、「低懸念」などの9カテゴリーに分類しています。

2023年12月に発表された最新版IUCNレッドリストでは、15万7千種以上が評価され、そのうち4万4千種以上の生物が絶滅の危機に瀕していると報告されました。その数は過去最大となっています。

ちなみにフォッサは家畜を襲うこともあることから、マダガスカルでは駆除の対象になっている動物。そのため近年は急速に数が減っており、レッドリストでは「危急」に分類されています。

世界と日本の絶滅危惧種

フォッサ以外にもマダガスカルには多くの絶滅危惧種が生息しています。実はマダガスカルは絶滅危惧種の多い国の第1位で、その数は3757種。2位はエクアドル、3位にメキシコと続きます。

マダガスカルには、横っ飛びで地上を移動するユニークな姿で有名な「ベローシファカ」というサルの絶滅危惧種がいます。エクアドルは「ウミイグアナ」、メキシコは「メキシコサンショウウオ」が、それぞれ代表的な絶滅危惧種となっています。

「日本の絶滅のおそれのある野生生物」は、日本版レッドリストとして環境省が取りまとめています。日本の絶滅危惧種には、どんな動物がいると思いますか?中学校の理科の教科書に載っていたのを思い出してみてください。

ほ乳類ではイリオモテヤマネコやツシマヤマネコ、ニホンアシカなどが“ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの(絶滅危惧IA類)”となっています。鳥類ではトキやヤンバルクイナ、シマフクロウなどが同じ分類です。

人間の活動による「大量絶滅」の危機

「絶滅」とは、ひとつの生物の種が完全に滅びて地球上からいなくなることをいいます。
ベーリング海に生息していたステラーカイギュウや、シマウマの一種クアッガ、飛べない鳥ドードーなどは絶滅してしまった生き物たちです。

日本では、明治期末まで生息していたといわれるニホンオオカミ、1979年を最後に姿を見なくなったというニホンカワウソなどが、もう二度とその姿を見ることができない絶滅動物です。

地球の長い歴史をさかのぼってみると、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅する「大量絶滅」が、過去に5回あったと考えられています。隕石や大規模な火山活動によって引き起こされた異常気象など、自然環境の変化によるものです。

そして現在、6回目の「大量絶滅」の危機にあるといわれています。森林破壊などによる生息環境の消失、食用目的の密猟や必要以上の乱獲、ほかから持ち込まれた外来種による在来種の減少などが原因といわれています。過去の自然発生的な大量絶滅と違って、その要因は人間由来なのです。

なぜ生き物を絶滅させてはいけないの?

地球上には大小さまざまな生き物が存在し、すべてがお互いに関係しあって生きています。それを生物多様性といいます。ある生き物が絶滅すると、つながり合う生き物すべてが何らかの影響を受けることになります。

「食べる」・「食べられる」という関係の「食物連鎖」がいい例です。絶滅を食い止めることは、私たち人間が生き残っていくためでもあるのです。

上野動物園のフォッサのニュースから一週間も経たないつい先日、今度は神戸市立王子動物園のジャイアントパンダ「タンタン」が病死したというニュースが流れてきました。人間でいうと100歳近い高齢でした。

このジャイアントパンダ、実は数年前に危機ランクが「絶滅危惧種(EN)」から「危急種(VU)」に一つ下がっています。生息地・中国での保全活動が実を結び、個体数が増加していることが評価されたといわれています。とはいえ、地球温暖化による気候変動で、彼らの主食である「竹」が激減することが懸念されています。

50年後、100年後の子どもたちがジャイアントパンダを動物園で見ることができるように、私たちが「今すべきこと」は、まだまだたくさんあるような気がしませんか。


執筆/フリーライター こだまゆき

アバター画像

WRITTEN BYSDGs MAGAZINE

カテゴリーの新着記事

新着記事

Page Top