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もう“副産物”じゃない! スキムミルクを使った高タンパクなパンをマッチョがアピール、美味しく食べることが未来の酪農を守る

もう“副産物”じゃない! スキムミルクを使った高タンパクなパンをマッチョがアピール、美味しく食べることが未来の酪農を守る

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任
  • 陸の豊かさも守ろう

低脂質高タンパクな「スキムミルク」を、健康な食卓にもっと活用してもらうため、スキムミルクをたっぷりと使った「マッスルパン」をマッチョが無料でプレゼントするパン屋さん「スキムミルク・デ・パンプアップ」が渋谷・恵比寿に1日限定でオープンしました。

マッチョにうれしい低脂質で高タンパクなスキムミルク

ここ最近は、円安や国際情勢などの影響により生乳生産に必要な飼料などの価格が高騰しており、酪農業界はかつてないほどの厳しい状況となっています。生乳の需要が高くない時期には保存の効くバターとスキムミルクに加工されますが、バターの需要は高いものの、スキムミルクの需要が低い傾向となっています。

スキムミルクは低脂肪高タンパク、カルシウムも豊富で、不足しがちな栄養素を手軽に補うことのできる優秀な食品です。低脂質高タンパクな食材をたくさん摂っている人と言えば、筋肉隆々のマッチョ! そこでマッチョな店員が筋肉を模したパンを提供し、そのおいしさと魅力を多くの人に知ってもらうべく今回のイベントが開催されました。

会場となった東京・渋谷区恵比寿のバンタン東京校2号館には、オープン前から行列ができるほどの人気ぶり。ホルスタイン柄のエプロンを身に着けたマッチョ店員が現れると、行列からは歓声が上がります。おいしそうなパンを手に、マッチョと記念撮影するなど、イベントは大きな盛り上がりを見せました。

余らせずに消費していくことが酪農を守る

JA全農 酪農部の深松聖也部長と、マッチョスタッフのひとりとして参加した、福島県鮫川村でつばさファームを経営する酪農家の清水大翼さんに、今回のイベントの狙いや感想についてお話をお聞きしました。

JA全農 酪農部の深松聖也部長(写真右)とつばさファームの清水大翼さん

まずお話していただいたのは、JA全農の深松部長。スキムミルクの需要を高めていくことは、酪農を守ることにも繋がると話します。

―スキムミルクを使ったマッチョパンという非常に面白い施策に取り組まれていますが、どのような理由から今回のイベントになったのでしょうか。
深松 現在、いろいろなもののコストが上がっていて、酪農に関しても飼料の高騰など非常に厳しい状況にあります。ですが、生き物を扱っている以上、コストがかかったとしても生産をやめてしまうことはできません。ですから、どうしても製品の価格を上げざるを得なかったのですが、そうなると需要も減少してしまう。近年はそんな良くないサイクルになってしまっていました。将来にわたって、安全でおいしい牛乳を作り続けるためにも、今の酪農産業を守っていかなければなりません。牛乳としての需要以外はバターとスキムミルクに加工するのですが、バターの需要は比較的堅調なものの、スキムミルクは余ってしまいがちなのが実情です。今回の取り組みが、みなさんにスキムミルクを活用していただくきっかけになればと考えています。

―スキムミルクの特徴や魅力を教えてください。
深松 牛乳や生クリームなどは生鮮食品なので賞味期限は非常に短いですが、スキムミルクになると非常に長く保存ができます。低脂肪で高タンパク、カルシウムも豊富なので、いろんな料理に食材としてご活用いただけるものです。栄養面において、健康な体づくりに非常に優れた食品だと思います。今回はパンでしたが、飲みものやスープなどお料理にも使っていただけます。今日、提供しているパンも試食したんですが、とってもおいしいんですよ。ご年配の方だと、給食での脱脂粉乳のイメージが強いかも知れませんが、当時よりも風味は非常に良くなっているので、ぜひご家庭に取り入れていただきたいですね。

―今後、酪農業界が目指すべき姿はどのようなものになるでしょうか。
深松 生産者だけでなく消費者も一緒になって、酪農の食材を使っていただけるようにしていくことが、非常に重要なことだと考えています。今回のように、生乳だけでなく、スキムミルクにも着目していただいて、おいしく消費していただくことが、酪農業界にとっても、将来にわたって自分たちの食べ物を守るためにも、非常に大切なこと。イベントをきっかけにスキムミルクを知っていただき、それが結果的に日本に酪農という産業を残していくことに繋がっていくと嬉しいです。

スキムミルクのおいしさを多くの人に知ってほしい

続いて、つばさファームの清水さんにお話しをお聞きしました。バターの副産物と思われがちなスキムミルクですが、生産者としては「おいしいものとしてたくさん食べてほしい」と願います。

―今回はスキムミルクを活用したイベントですが、酪農家にとってスキムミルクとはどのようなものなんでしょうか。
清水 スキムミルクって、酪農家としてはバターの副産物として出るものなんです。でも、同じ母牛から出た牛乳からできていて、栄養もたっぷりなもの。だから、もったいないからとかではなく、おいしいものとしてぜひ食べていただきたい。おいしい!と食べていただけることが酪農家としては一番の喜びなので、ごく普通に食卓に取り入れていただけると嬉しいです。おいしさを知って、どんどん食事に取り入れていただくことで、牛乳全体の消費が上がっていくと、なお嬉しいですね。

―酪農におけるSDGsな取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか。
清水 大きな環境を考えていくこともとても大切だと思いますが、自分たちでできることを見つけていくことも大切だと思っています。例えば、飼料としてビールかすや酒粕を使っている農家さんもいらっしゃいますね。牛にとってストレスのない環境を整えることも重要で、うちの農場でも牛にとって快適な環境づくりは意識していますし、フンなどを堆肥にして畑に戻すなどの循環型農業にも取り組んでいます。

―イベントでは、たくさんのお客さまがスキムミルクを使ったパンを召し上がっていましたが、ご覧になってみていかがですか。
清水 お客さんが喜んでいることがすごく嬉しいですね。そして、店員さんのマッチョ具合もすごい(笑)。私もスキムミルクを使ったパンを食べさせていただいたんですが、すごくおいしかったです。スキムミルクを全面に押し出したパンは初めてで、こんな使い方があるんだと発見できました。ぜひ、たくさんの人にスキムミルクのおいしさを知っていただきたいです!

スキムミルクで手軽においしく栄養をプラス

イベントでは、6種類のパンと3種類のスープ・ドリンクが用意されていました。スキムミルクを使うと、パンの焦げ目がきれいに出るため、艶やかなこげ茶色はまさにマッチョな筋肉。ムキムキの腹筋を模した「シックス・ブレッド」は、スキムミルク含有量が50gで、なんとタンパク質が17gも摂れるパンになっています。そのほかにも、大胸筋をイメージした「チェストプレスサンド」、三角筋をイメージした「肩メロンパン」など、筋肉をイメージしたパンの数々に、来場者は目移りしていました。

栄養価も高く、おいしいにもかかわらず今まで注目されていなかったスキムミルク。パンのほかにも、ラテなどのドリンクに加えたり、コーンスープやシチューに混ぜたりすることで、おいしく栄養もプラスできる万能食材です。常温で保管できるので、手軽に食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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