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国民全員がお茶碗1杯分のまだ食べられる食品を毎日捨てている!?食品ロスの現状

国民全員がお茶碗1杯分のまだ食べられる食品を毎日捨てている!?食品ロスの現状

#SHOW CASE
  • つくる責任つかう責任

大阪・関西万博まで一年を切りましたね。2025年4月13日から184日間にわたって開催される大阪万博では、コンペで選ばれた若手建築家が、“SDGs達成につながる意欲的かつ大胆な提案”をもとに「休憩所」や「ギャラリー」、「トイレ」などの計20施設をそれぞれ担当することになっています。どんな建造物がお目見えするのか楽しみなところですが、なかでも注目を浴びているのが「ギャラリー」で使用される建材です。なんと食品廃棄物からできた新素材なのです。

ゴミを新しい素材として生まれ変わらせる「fabula」の新素材とは?

その新素材を開発したのは、東大発のベンチャー企業fabula株式会社です。fabula(ファーブラ)の新素材は、原材料となる食品廃棄物を「乾燥」したのち、ブレンダーなどで「粉砕」し粉末化、それを金型に入れて「熱圧縮」を加えて成形して作られます。コーヒーかすや抽出後のお茶の葉、廃棄されたみかん、コンビニ弁当など、基本的にほとんどの食材で製造することができるというからびっくりです。

画像出典:fabula 公式Facebook

白菜の廃棄物で作った素材は、一般的なコンクリートの約4倍の曲げ強度(曲げる際にどれだけ絶えられるか)をもち、厚さ5mmで30kgの荷重に耐えられるのだそうです。また、使った後に新たな製品に生まれ変わらせたり、土に還すこともできるのが特徴です。万博のような期間限定の建造物で使われるにはぴったりの建材だと思いませんか?

原料由来の色や香りを楽しむことができ、建材だけでなく、お皿やトレイなど、生活で使うさまざまなアイテムにも使われ始めています。

ラテン語で「物語」という意味を持つ「fabula」。捨てられるはずだった食品がどんなストーリーをもって万博会場で披露されるのか楽しみですね。そして今後は食品廃棄物処理の問題を解決する糸口にもなりそうです。

日本の「食品ロス」の現状

食品廃棄物の一部である「食品ロス」は、食べ残しや売れ残り、期限が近いなどの理由によって、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことをいいます。そして、食品ロスは「事業系」と「家庭系」の大きく2つにわけられます。

農林水産省の発表によると、令和3年度の日本全体の食品ロスの量は年間523万トンです。その内訳は事業系が約279万トン、家庭系が約244万トンにのぼるといわれています。大型トラック約1433台分の食品を毎日廃棄している計算です。

国民1人当たりの食品ロス量は約114g/日と、これはお茶碗に軽くごはん1杯分とほぼ同じ量になります。国民1人当たりの食品ロス量は、年間で約42kgにもなるといわれているのです。

“もったいないお化け”ならぬ「ろすのん」って知ってる?

みなさん、官民連携で展開している「食品ロス削減国民運動」のキャラクター“ろすのん”をご存じでしょうか。食品ロス削減に取り組む団体や企業が、簡単な申請で活用できるロゴマークのことです。

食品ロスをなくす(non)という意味から命名された“ろすのん”は、語尾に「のん」をつけるのが口ぐせの男の子で、食品ロスがなくなることが夢です。昭和世代に馴染みのある「もったいないお化け」の現代版のような存在でしょうか。

ちなみに、ろすのんの好きな食べ物は、私たちが普段残しがちな「刺し身のつま」と「パセリ」だそうです。今後はろすのんを思い出して、残さないようしっかり食べることを心掛けていきたいですね!

食品ロス問題への関心の高まりは世界各国でも

世界各国でも食品ロス削減に向けて、さまざまな取り組みがされています。

フランスでは、2016年2月に「食品廃棄禁止法」が施行されました。400平方メートル以上の敷地面積を持つ大型スーパーなどでは、賞味期限切れ食品の廃棄が禁止です。売れ残った食品は慈善団体などへ寄付するか、飼料や飼料として転用しなくてはいけないことになっています。

イギリスでは、食品廃棄物の削減を目的としたアプリ「Olio」が2015年にリリースされています。近所の人や地元のお店をつないで余った食料をシェアできるというもので、ユーザーは要らなくなった食品の写真をOlioにアップロードし、譲渡の日時や場所を投稿すると、欲しい人からリクエストが付くというものです。譲った対価はなく、あくまでも無料で提供するというのがフードシェアリングアプリ「Olio」の特徴です。

約3億3500万人の人口を抱えるアメリカにおいても、食品ロス問題は深刻です。2016年から「Food Loss and Waste 2030 Champions」という官民連携のプログラムを実施中で、2030 年までに米国内での食品ロスおよび廃棄量を50%削減することを公約した企業を紹介しています。ケロッグやウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート、アマゾンなど大手企業が参加企業に名を連ねています。

小さなことだけれど一人ひとりができることはたくさんある

食べられるものを捨てるのは、そもそも“もったいない”ことです。水分の多い食品は廃棄時の運搬や焼却で余分なCO2を排出するため、環境にも悪い影響を与えます。

消費者庁では、料理レシピのウェブサイト「クックパッド」で、「消費者庁のキッチン」を開設して、食品ロスを削減する際に参考になるレシピを紹介しています。例えば、残った半端な野菜などがあった際には、ここでレシピを探して活用してみてはいかがでしょうか。

最後に、“ろすのん”の好きな言葉をご紹介しましょう。

―「残り物には福がある」―

食料は私たちが生きていく上で必要不可欠なものです。だからこそ、一人ひとりが心の持ち方をちょっと変えるだけで全体として大きなアクションとなるのではないでしょうか。


執筆/フリーライター こだま ゆき

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