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「ヘンケル」海外支社で働く・疋田彩さんが感じたジェンダーギャップとリーダーとしての課題

「ヘンケル」海外支社で働く・疋田彩さんが感じたジェンダーギャップとリーダーとしての課題

#SHOW CASE
  • ジェンダー平等を実現しよう
  • 働きがいも経済成長も

3月8日の「国際女性デー」は、女性の経済的、政治的、そして社会的地位においてジェンダー平等を尊重する日として1975年に制定されました。女性のエンパワーメントとジェンダーの平等は、持続可能な開発を促進するうえで欠かせません。そこで今回は、1876年に創立したドイツの化学・消費財メーカー ヘンケル(日本法人:ヘンケルジャパン、本社:東京都品川区)シンガポール支社で、アプリケーションエンジニアとして働く日本人女性・疋田彩さんに、海外勤務の女性管理職だからこそ感じる日本とのギャップやキャリアの考え方についてお聞きしました。

疋田さんは大学院卒業後、日本の時計メーカー子会社「シチズン電子株式会社」に技術者として入社。その後、2012年にヘンケルジャパンに入社し、現在はシンガポール支社で勤務しています。男性が多い印象のある技術職を目指したきっかけを伺うと「大学と大学院で半導体の材料に関わる分野を学んでいたので、そこから興味を持つようになりました。父の赴任の関係で幼い頃アメリカに5年間住んでいたのですが、その頃から日本の製品やものづくりにずっと興味があったんです。日本で働いているうちに、電子部品として使う材料をもっと深く知りたいと思うようになり、ヘンケルがLEDに関わる電子材料を開発するためのエンジニアを募集していると知り、いつかは海外で働いてみたい気持ちがずっとあったので、結果主義で、なおかつ世界の人と話がしたいと思い、ヘンケルに入社しました。今は、主に東南アジアの車の部品になる半導体部品に関わる技術サポートや、シンガポールにあるラボでマレーシア人3名とシンガポール人1名のチームのマネージャーをしています」(疋田さん)

―グローバル企業で働くことで、どんなところに「多様性」を感じますか。
色々な国の人と意見を交換し、自分の意思をはっきり伝えることができる場が多いのはグローバル企業ならではだなと思います。文化の違う国の人と話すと『そういう考え方もあるんだ』と気づけるのは面白いですね。

―様々な国の人をまとめるチームリーダーとして、苦労もあったのでは?
初めはそれぞれの宗教への対応が慣れなかったです。ここではクリスチャン、仏教、イスラム教やヒンデュー教の方もいて、宗教によっては『この期間は宗教の関係で出張できない』と言われることも。日本ではなかなかなかったことだったので慣れるまで少し時間かかりましたが、今は人それぞれ事情があるので、個々を尊重し自分との違いを受け入れようと思っています。

―ヘンケルは、包括的なDiversity, Equity & Inclusion(多様性、公平性、一体性)を推進し、2025年までに全管理職でジェンダーバランスを目指す(2022年時点で女性管理職は39%)といった目標を掲げています。スイスの非営利団体「世界経済フォーラム」(World Economic Forum:WEF)が公表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書(2023)」によると、日本は146か国中125位と低い順位でした。この低さをどう捉えていますか?
理系や電子技術職業界に限って言えば、私が日本にいた頃はまだ男性社会が残っていて、当時私の職場で女性の管理職は1名しかいませんでした。今は日本でも女性の管理職の方は増えていますが、日本ではまだ理系や技術職を目指す女性が少ないと思うんです。東南アジアでは女性の技術者が多く、今の 私の上司もトップマネージメントの方も女性。実力と女性を支える福利厚生さえあれば女性が活躍できる環境があるなと思っています。

―女性リーダーとして心がけている事や苦労はありますか?
日本にいた時の一番の悩みはロールモデルが少ないことでした。当時の管理職の方は男性で、もちろん男性が上司なことで良いこともたくさんあるんですけど、同じようにできないことは当然あって、同権あっても同じではないんです。誰を参考にしていいかわからなかったので、早いうちに海外に出て『こんなやり方をしている女性もいるんだ』と参考にさせていただける方を何人も見つけられたのはとても大きかったですね。

私は昔から『リーダーって強くなきゃいけないのかな』と思っていたのですが、こちらで出会ったリーダーは、女性ならではのしなやかさや柔らかさは残しつつ、方向性をしっかり定めていて、そんな彼女の姿を見て『強くなきゃいけないわけではないんだ』ということを学びました。もちろん決断力を持つためには強さも必要ですが、それを表に見せる形ではなく、女性だからできる心配りも必要だなと感じました。

―忙しい日々を送っているかと思いますが、ワークライフバランスの確立は、SDGsの17の目標のひとつ「働きがいも経済成長も」に繋がります。今の職場はいかがですか?
ヘンケルはワークライフバランスがしっかりしている会社だなと思います。長期休暇も取りやすい環境ですし、18時頃には大体の人が帰宅するのもこちらではよく見掛ける光景です。みんな自分のプライベートの時間と働く時間を大切にしている雰囲気が全体にありますね。勤務形態もフレキシブルにできますが、達成しなければいけない目標は全員に定められているので、自由な社風に甘えることなく、やることはしっかりやっているというのもいいなと思います。

―今後の目標を教えてください。
この2、3年のうちに、自分の後を引き継いでくれるような人をどんどん育てていきたいなと思っています。もっと年齢を重ねたら、ボランティア活動もやってみたいです。女性が仕事をするということに対して興味を持ってもらうために、技術支援という形で女性がエンジニアとして仕事をするという道もあるんだよという、何か影響を与えられるような活動や教育に携わってみたいと思っています。

―最後に、やりたい事があっても中々踏み出せない人へのアドバイスをお願いします!
私からお伝えできることがあるとしたら『目標を持って決して諦めないこと』ですね。私も『海外で働いてみたい、グローバルな会社で働いてみたい』という気持ちをずっと抱いていました。それがなぜ実現したかと考えてみると、その夢をずっと持ち続けることにあるのかなと思います。あとは、その実現のためにどういう行動を起こすかということのも大事ですね。自分のやってみたいことを人に言っていると、不思議と協力者や味方が表れるんです。そこから糸口を見つけて、ぜひ皆さんの夢も実現してほしいなと思います。

インタビュー中、生き生きと話す姿が印象的な疋田さんですが、当初は海外での単身赴任生活に不安もあったそうで、知り合いもおらず、なかなか友達ができなかったのが不安でさみしかったそう。赴任して3年が経った今では、一緒に食事に行く友達ができたり、休日はサイクリングを楽しんだりと、充実した日々を送っているようです。

今回、疋田さんお話を聞いて、進む道や選択を自分で狭めずに、やってみたいことはどんどん口に出して、まずは行動してみることの大切さを改めて感じました。


取材・執筆/根津香菜子

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