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“オレンジジュースショック”が深刻化!輸入大国・日本の食の未来を考える

“オレンジジュースショック”が深刻化!輸入大国・日本の食の未来を考える

#SHOW CASE
  • 飢餓をゼロに

身近な飲み物というイメージの「オレンジジュース」が今、スーパーから姿を消しつつある事態となっているのをご存じですか?

国内の大手飲料メーカー各社は2023年頃から、相次いでオレンジジュースの値上げや販売休止を発表しています。
先日、近所のスーパーの飲料コーナーを見てみたのですが、たしかに以前は数種類並んでいた紙パックタイプの100%オレンジジュースが見当たりませんでした。あったのは330mlのペットボトルタイプ1種類のみ!オレンジジュースはこのまま姿を消してしまうのでしょうか?!

なぜオレンジジュースが品薄に?

このオイルショックならぬ“オレンジジュースショック”は、世界各国のカンキツ類の生産地域で数年前から流行している病害「カンキツグリーニング病」が原因のひとつといわれています。加えてアメリカをはじめとする主要生産国を襲ったハリケーンなどの異常気象です。

生産量が減少し、加工用オレンジから作る「オレンジ果汁」の供給量が追いつかず、世界中で取引価格が高騰しています。日本はさらに円安によって追い打ちをかけられている状態です。

ちなみに、オレンジが苦くなって早くに枝から落ちてしまうというこの「カンキツグリーニング病」。感染してしまうと樹木は伐採処分するしか解決策はないようです。

「果実のオレンジ」と「オレンジ果汁」

オレンジは世界で一番生産されている柑橘類です。アメリカ原産のバレンシアと、ブラジル原産のネーブルが2大オレンジといわれています。日本が果実として輸入しているオレンジは主にアメリカとオーストラリアからですが、「オレンジ果汁」となると違ってきます。日本が輸入しているオレンジ果汁の約7割はブラジル産です。

公益社団法人中央果実協会によると、世界有数のオレンジ果汁輸出国であるブラジルは、世界で流通するオレンジ果汁の80%のシェアを持っており、オレンジジュース5杯のうち約4杯がブラジルで製造されている計算なのだそうです。

100%ジュースのパッケージに「濃縮還元」と書かれているのを目にしたことがありますよね。オレンジ果汁は、加熱するなどして、搾り取った果汁の水分を飛ばし「濃縮」した状態で輸入されます。カサが減る分、輸送コストを抑えられることや保存性が良いこと、抗菌効果などがメリットといわれています。日本に入ってきた濃縮果汁は、飲料工場で水を加えて「還元」された後にジュースとしてスーパーなどの店頭に並びます。

食料自給率の計算方法は2つあるって知ってた?食料自給率の低い日本の現状とは

国内で消費された食料のうち、どれだけが国内で生産されているのかを示すのが「食料自給率」です。現在日本の食料自給率は38%(2022年度)と、主要先進国の中で最低水準にあります。
農産物の輸入額よりも輸出額の方が上回っているカナダの食料自給率は221%、オーストラリアも173%と高水準です。

実は日本でも1960年頃の食料自給率は約80%を確保していました。その後「食生活の変化」や「農業の衰退」が原因で右肩下がりに。1985年に50%を割って以降、低い数字が続いている状況です。農林水産省によると、現在日本は“世界最大の農産物純輸入国”となってしまっています。

食料自給率の計算方法は、実は「カロリーベース総合食料自給率」と「生産額ベース総合食料自給率」の2通りがあります。

基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目した「カロリーベース総合食料自給率」は、一人が1日に食べる食料のすべての熱量を分母、国産食料だけの一人1日分の熱量を分子とする割り算によって求められます。令和4年度のカロリーベース総合食料自給率38%は次のようにして得られています。
カロリーベース総合食料自給率
=1人1日当たり国産供給熱量(850kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,260kcal)
=38%

一般的にカロリーベースの数字ほどは広まっていない「生産額ベース総合食料自給率」は、生産額をもとにして計算しており、同じ令和4年度では58%と少し高い数字になります。
生産額ベース総合食料自給率
=食料の国内生産額(10.3兆円)/食料の国内消費仕向額(17.7兆円)
=58%

農林水産省は毎年、この二通りの総合食料自給率を算出して発表しています。

食料の安定輸入が続くとは限らない!農産物純輸入国・日本が抱えるリスク

日本は食料の約60%を輸入に頼っています。地球温暖化にともなう異常気象の増加で、生産国の農業生産が打撃を受けると、今回のオレンジ果汁のようなことが他の作物で起こる可能性も十分あります。

また、世界人口の増加で、世界の食料需要が高まり食料生産が追いつかないことも懸念されています。価格が高騰すれば世界各地で食料の取り合いがはじまってしまうかもしれません。

日本の食料自給率は2000年代に入ってからは、カロリーベース、生産額ベース共に横ばい傾向にあります。国は2030年までに、食料自給率をカロリーベースで45%、生産額ベースで75%に高める目標を掲げています。

一人ひとりが身近なことから「食」を見直すきっかけを

協同乳業は、和歌山県産温州みかん果汁のみを使用した100%ジュース「農協果汁和歌山県産みかん100%」を4月1日から東日本限定で発売しています。
ちょうど近所のスーパーで見かけたので購入してみたところ、900mlで376円とちょっと高めでしたが、すっきりした甘みが美味しいみかんジュースでした。

日本の食料自給率アップに少しでもつながるように、地元産の直売所で野菜を買うなど地産地消を心がけてみてはいかがでしょうか


執筆/フリーライター こだま ゆき

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