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あなたはどう選ぶ?大きく異なる日本と米国のサプリメント、最新トレンドも

あなたはどう選ぶ?大きく異なる日本と米国のサプリメント、最新トレンドも

#SHOW CASE

サプリメントの世界的な市場は近年、成長を続けており、これからさらに成長することが予想されます 。使用目的は、疲労・体力回復、健康維持、栄養成分の補給、病気の治療や予防、体質改善、美容、ダイエットなど、人それぞれに異なり、目的別にビタミンやミネラル、植物、ハーブなど様々なカテゴリーの サプリメントが流通しています。

ただサプリメントに対する考え方は国によってさまざまで、日本では栄養補助食品としての位置づけが強いため、サプリメントで健康管理をするという考え方がまだ浸透しておらず、医薬品に頼る傾向があります。

一方、米国でのサプリメントに対する考え方は医薬品に近い位置づけで、米国国民の疾病予防意識も高く、積極的に日常生活にサプリメントを取り入れています。また、米国のサプリメントは品質基準も高く、世界で最も厳しく管理されています。 

今回は、医学・健康科学の博士である永田孝行氏監修のもと、最新のサプリメント市場の動向や日本と米国でのサプリメントに対する考え方、そして、米国サプリメントの品質基準と安全性の高さについて詳しくみていきましょう。正しくサプリメントを理解することが、より健康な毎日を送るためのヒントになるかもしれません。

コロナ禍で急成長した「ビタミン」市場、需要に大きな波があったが今ではほぼ横ばい

ビタミン関連の市場は長期間穏やかに安定した分野であり、健康食品業界において最も多くの売上を占めています。

Nutrition Business Journal(NBJ)が発行する 「Supplement Business Report2023」 によれば、2020年にはコロナ禍に直面した際にその手軽さから健康戦略としてビタミン剤を利用する人が増え、市場において22.3%、売上高にして32億4,000万ドルの増加に至りました。 しかし2022年にはビタミンの売上高が4億6,500万ドル低下。これは業界全体の売上高の成長率鈍化が原因の大部分を占めています。 

ビタミン市場縮小における原因の3分の1が『ビタミンC』です。免疫力を高めるビタミンとして消費者に 受け入れられ、2020年には58.1%の成長を遂げましたが、翌年には売上高が9.7%減少、さらに2022年に は7.6%減少。売上高としては3億5,700万ドル減少しました。 また、『ビタミンD』の2020年における売上は47.5%増で2位でしたが、2022年は『ビタミンC』の7.6%減少に対して、1.3%の減少にとどまっており、消費者が免疫を高めるよりも『ビタミンD』で得られる効果の方が価値があるものとして受け入れていることが分かりました。 

また、免疫力向上には限界があり『ビタミンC』や『ビタミンD』の減少はそれに関係していますが、サプリメント市場において45.1%を占めるマルチビタミンの売上高の成長率は2022年から低下。2023年には1.1%、その後0.5%の減少と横ばいが続いています。しかし2026年には1%の成長が予想され、ゆっくりとした回復が見込まれます。 

コロナ禍には一時免疫力を高めることを目的にビタミンの需要が急激に増加し、新型コロナの流行が落ち着くのとともにその需要も減少しましたが、流行病のあるなしに関わらず、健康な生活のためにやはりビタミンの摂取が必要だと考える人が徐々に増えてくると考えられます。

日本のサプリメントは「栄養補助食品」、厳格な規定のない日本のサプリメント市場

とは言え、大きな波が見られるほどサプリメントに積極的な需要があるのは米国での話。日本のサプリメントは「栄養補助食品」としての位置づけが強く、カプセル・顆粒・錠剤など形状は様々ですが、全て「食品」とみなされます。そのためサプリメントのパッケージや容器には内容成分だけでその含有量までは表示義務がなく、TVや雑誌などで話題となった成分が僅かでも含まれているだけで選ばれることもあります。
しかしこのような“健康ハロー効果”によってパッケージや広告効果に大きく左右され、 効果効能は二の次になってしまい、サプリメントを愛用する日本人の大多数は「体調が優れない時」や「 疲れが取れない時」あるいは「食生活に不安を感じる時」などと、飲用するタイミングを見計らっている場合が多く、健康予防のための常用派はあまり多くないと推察されます。

昨今、日本でもセルフメディケーションが浸透され始め、軽度の体調不良なら市販の薬剤を購入して快復 させようとする人も増えてきましたが、サプリメントで健康管理をするという考え方が乏しく医薬品に頼る傾向があり、予防策が充実していません。 また、日本のサプリメントは食品扱いゆえに厳格な規定がなく自由に製造販売できるので、健康に支障がない程度の極稀な粗悪品や欠陥品などが混入する可能性も否定できません。

日本のように規定のないサプリメント市場では、米国のように積極的に日常生活にサプリメントを取り入れる人が増えていくとはあまり考えられません。

世界一厳しい品質基準を設定!日本とは異なる、医薬品に近い位置づけの米国サプリメント

そもそも、米国のサプリメントは日本とは別物だと言っても過言ではありません。食品よりも医薬品寄りに位置づけられていて、日本ではまだ義務化されていない「GMP」と言う厳格な品質基準も義務付けられています。GMPは各国に設けられていますが、米国のFDAに定められている品質基準は「cGMP:current Good Manufacturing Practice」と表記されて最も厳しく定められています。GMPもcGMPも同じ品質基準ですが「c:current(現在の・最新の)」が付けられることで「安全・品質の基準は移り変わるので常に更新しなくてはならない」という考えの下で、GMPは常に最新基準で監視されるため、安心・安全が保たれています。

GMPとは適正製造規範(Good Manufacturing Practice)の略称で、原料の搬入から、製造・出荷までの全過程に於いて安全で一定基準の品質が保持されるように定められた厳格な規則であり、生産機器・設備・管理から品質システムの構築や品質リスクマネジメントの整備、販売後にも抜取検査で厳重に管理する規定があります。
このGMPの設定・管理は世界一厳しいと言われる米国のFDA(食品医薬品局:Food and Drug Administration)と言う日本での厚生労働省にあたる政府機関が担っていて、安全・承認の最終審査を経てDSHEA(ダイエタリー・サプリメント健康教育法:Dietary Supplement Health and Education Act)に登録された後にサプリメントとして市販されます。

全てのサプリメントには内容・成分値の表示が義務付けられていますので、ラベル表示を確認することで苦手な成分やアレルギー及び宗教上の理由などによっても適正なサプリメントを選ぶことができます。

健康維持や、日々のメンテナンスをどうしていくか、自分で考えて手段を選択することのできる時代です。日本にいても、サプリメントを選ぶ時は米国基準のものを選ぶなど、自分なりの基準を持つことで、より健やかな暮らしを手に入れることができそうです。

監修者:
博士(医学・健康科学)/株式会社TNヘルスプロジェクト代表取締役 永田孝行(ながたたかゆき)氏
株式会社TNヘルスプロジェクト(TNHP)代表取締役
一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会(JDSA)理事長

ACSM(米国スポーツ医学会)認定EP(Certified Exercise Physiologist)
一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会(JDSA)理事長
研究分野は「肥満と代謝」で、生活習慣病予防と改善の為の食事療法としてGI値 (グリセミック・インデックス) に着目して実験・研究を重ねた後、2001年に「低インシュリンダイエット」を提唱、関連書籍は国内外で 64 冊、総販売部数 500 万部を突破している。

主な活動としては、健康・ダイエット関連の指導者養成、各企業の健康・保健指導や生活習慣病予防と改善対策、薬機法・景品表示法等に於けるアドバイスやコンサルタントを実施している。


執筆/フリーライター Yuki Katagiri

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