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日本初!男性カップルの住民票の続柄に「夫(未届)」日本の同性婚議論は進むのか


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5 ジェンダー平等を実現しよう
日本初!男性カップルの住民票の続柄に「夫(未届)」日本の同性婚議論は進むのか

先月、男性同士のカップルに対して、続柄の欄が「夫(未届)」と記載した住民票を長崎県大村市が交付していたというニュースが話題となりました。同性婚が認められていない日本では異例の措置とされています。
今回は、全国の自治体に広まりつつあるパートナーシップ制度や、日本では認められていない同性婚などについて考えてみましょう。

住民票の「続柄」の表記はケースによってさまざま

居住地の市町村に、住所や家族構成などを登録して、その居住関係を明らかにする制度を「住民登録」といいます。国民年金や国民健康保険など、さまざまな行政サービスを受けるために必要なものですよね。
その住民登録に基づく公簿が「住民票」です。住民票の写しには、氏名や生年月日、性別、世帯主との続柄などが記載されます。

戸籍上の夫婦である「法律婚」では、住民票の続柄の記載は、夫が世帯主の場合、男性の欄に「世帯主」、女性の欄に「妻」と記載されます。
一方で、役所に婚姻届を提出していない「事実婚(内縁)」の場合、住民票の続柄は「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載されます。

では、同性パートナー同士の住民票はどうなのでしょうか。 男性カップル同士の場合、世帯主からみてパートナーの続柄には「同居人」や「縁故者」という記載が一般的です。

長崎県大村市は今回、男性カップルの申し出に対して、“男女間の事実婚と同じ” 「夫(未届)」と記載した住民票を交付しており、これは全国初ではないかといわれています。
公的機関の書類において、「未届」とはいえ、大切なパートナーの続柄を「同居人」ではなく「夫」と表記してもらえたということは、当人にとってどれだけ意味のあることか想像してみてください。
住民票交付を受けた同市に住む30代の男性カップルは会見で「(パートナーを)“夫”と書いてもらった書類は今まで一つもなかったので本当にうれしかった」と喜びのコメントをしています。

“多様な性”への理解を深めるためのパートナーシップ制度

現在、日本では法律上(戸籍上)の性別が同性どうしであるカップルは結婚することができません。そんななか、2015年に渋谷区と世田谷区で開始したのが「同性パートナーシップ制度」です。

画像出典:東京都総務局人事部

パートナーシップ制度とは、地方自治体が同性のカップルに対して、婚姻と同等の関係を承認する制度です。導入している自治体は急速に増えており、2023年6月時点で328自治体にもなります。東京都も2022年11月1日に東京都パートナーシップ宣誓制度をスタートしています。

画像出典:NIJI BRIDGE

長崎県大村市も2023年に「パートナーシップ宣誓制度」を導入しており、同市の「パートナーシップ宣誓制度」に関するチラシには、
“一方または双方が性的マイノリティであるお二人が、日常生活において、互いを人生のパートナーとして支え協力しあう関係であることを市に宣誓する制度”であり、要件を満たす宣誓に、市がパートナーシップ宣誓書受領証を交付します。
とあります。今回の男性カップルはこの制度を利用していることが背景にあるのです。

ちなみに、大村市が本制度を開始した10月11日は「国際カミングアウトデー」です。多様性を認め合う社会において、さまざまな形でカミングアウトする人たちを祝福したいという思いからこの日を選んだとしています。

どんなに長く一緒に暮らしても法律上は「他人」の同性カップル

性的マイノリティの人たちに寄り添うパートナーシップ制度ですが、あくまで“その自治体のなかで二人の関係を認めますよ”という制度であって、法的な効力はありません。
同性婚が認められていない日本の同性カップルは、「結婚」できないことで、お互いの「配偶者」になれず、遺産相続や健康保険の扶養家族など、法律婚なら当たり前に付与されるさまざまな法的保護が受けられません。

法律婚に定められた最大の特権が「相続」といわれています。ドラマ「きのう何食べた?season2」の8話で登場した、テツさん&ヨシくんカップルのエピソードを思い出す人もいるのではないでしょうか。ヨシくんに自分の財産をすべて相続したいと願うテツさんは、養子縁組をしてまで“家族”になろうとしていました。

同性カップルの場合、どちらか一方が急病やケガなどで入院した場合に、法的に「家族」とは認められないため、医師から症状の説明を受けることができなかったり、面会させてもらえないケースもあるといいます。
一方で、異性カップルの場合は事実婚であっても、限定的ですが法律婚カップルと同じ法的効果が与えられています。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟

2001年に世界で初めてオランダで同性同士の法律上の結婚が実現して以降、ヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアなど世界各国で同性婚が可能となっています。アジアでは2019年に台湾で同性婚ができるようになりました。

日本で同性同士が法律婚できないのは違憲だとして、2019年に東京、大阪、札幌、名古屋、福岡の各地方裁判所で提訴した集団訴訟が「結婚の自由をすべての人に」訴訟です。
これまで、札幌や大阪、名古屋など地方裁判所で判決が言い渡され、大阪地方裁判所以外の判決で「憲法違反」または「違憲状態」であるとの判断がなされてきました。そして今年3月14日、東京地方裁判所、札幌高等裁判所においても、同性婚が認められないのは違憲だとの判決がでています。現在、日本は国での法改正の議論を待つ段階にきています。

長崎県大村市のニュースから数日後、同性カップルに事実婚と同じ表記の住民票を交付する取り組みは、鳥取県倉吉市でも導入していることがわかり、さらに栃木県鹿沼市でも7月から導入予定との報道がありました。このような自治体が増えていくことは、なかなか進まない同性婚の議論が大きく進展するきっかけになるかもしれませんね。


執筆/フリーライター こだまゆき