“SDGs”と“企業”をもっと近づける!SDGs MAGAGINE

カーボンオフセットしたパソコンの提供を開始したVAIO、環境にやさしい製品づくりとは?

カーボンオフセットしたパソコンの提供を開始したVAIO、環境にやさしい製品づくりとは?

#SHOW CASE
  • 陸の豊かさも守ろう

水と緑豊かな長野県安曇野市に位置するパソコンメーカー「VAIO」。ここVAIOでは、2014年の設立以来、一貫して環境に配慮した取り組みを推進しているそうです。一体どんな取り組みを行い、製品やサービスに反映しているのか?温室効果ガス削減プロジェクトに焦点を当てて、ご紹介していきます。

長野県内企業として初の取り組みを主導

今回ピックアップするのは、「安曇野市新田の水田中干し期間延長による温室効果ガス削減プロジェクト」という取り組みです。

まず、中干しとは、田んぼから水を抜いて、土がひび割れるくらいまで乾燥させる作業のことを指しています。酸素を土中に取り込めるため、稲の根に良い影響を与えるのだとか。根腐れしないで、強く根を張れるようになるのです。同時にこの作業を通して、土に含まれている有害なメタンガスの発生を減らすことが可能に。稲の発育、温室効果ガス削減それぞれの観点から見ても、SDGs17の目標の中で触れられる「陸の豊かさ」に貢献していると言えるでしょう。
なお、農林水産省によれば(※1)、中干し期間を7日間延長すると、メタン発生量が3割抑えられることも確認されています。この結果から、J-クレジット(※2)において、新たな方法論として承認されるに至りました。

※1:農林水産省のサイトより
※2:温室効果ガスの排出削減量を、国が「クレジット」として認証。このクレジットを売買して、取引が可能となる。

そして、このJ-クレジットに着目したVAIOが、実験的な立ち位置で先導しているのが「安曇野市新田の水田中干し期間延長による温室効果ガス削減プロジェクト」というわけです。この取り組みはVAIOの本社近くにある水田を活用して行われています。ちなみに、長野県内企業が同県内の水田でプロジェクトを実施し、J-クレジット制度の申請を行うことは初めての試みでもあるとのこと。一貫した環境への配慮を目指しているVAIOらしい挑戦です。

J-クレジットによりカーボンオフセットしたPCを提供

さて、ここまでは、VAIOにとってゆくゆくはカーボンインセット(※3)を目指す取り組みについてご紹介してきました。続いては、ここで認証されたJ-クレジットの幅広い活用方法を見ていきましょう。
※3:自社のサプライチェーン内で温室効果ガス削減に関するプロジェクトに直接投資する仕組み。

VAIOでは、このプロジェクトで承認されたJ-クレジットをパソコンに付与、そして2024年5月よりその製品の提供を開始しました。こうすることで、温室効果ガスを削減した価値を含むパソコンとして認識されるのです。環境に配慮した製品を購入した側は、カーボンオフセット(※4)の恩恵を受けられると言えるでしょう。つくる責任を強く自覚し、それに加えて、受け手の環境への意識を刺激する……そんな一連の流れが完成していますね。なお、第1弾の提供先は既に決定しており、また今後も引き続きこの施策を行っていく見通しを、VAIOは語っています。

※4:自社で温室効果ガス削減の取り組みを実施したうえで、対策することができなかった排出量があったとする。その分を他社が創出した削減量で埋め合わせて、相殺する仕組み。

2030年度へ向けてコツコツと今できることを

今回は水田を利用した温室効果ガス削減のプロジェクトを中心に、製品の作り手、受け手双方の環境への意識を改めるようなきっかけづくりについて探りました。
特にここで取り上げたのはパソコンづくりに関するトピックでしたね。デジタル社会においてかなり身近な存在であるアイテムが、環境に配慮した要素を持ち合わせているとなると、SDGsへの関心もギュッと縮まりそうな予感がします。使い手側としては、キーボードを叩くたび、このプロジェクトが思い起こされそうです。

なお、改めて調べてみると、パソコンに限らず、電子機器が私たちの手元に製品となって届くまでにはエネルギーを消費することが分かります。二酸化炭素を排出することは免れません。また、実使用においても、電気を使うので、二酸化炭素を排出し続けることになるしょう。だからこそ、こうした背景から考えたとき、製品を通じて私たちの生活を豊かにするために使用されるエネルギーに感謝することはもちろん、売り手と買い手が一体となって二酸化炭素の排出を極力抑える努力をさまざまな形で行うことの大切さを実感します。加えて、単にJ-クレジットを購入して済ますのではなく、自社のプロジェクトとして、地域と共同で温室効果ガスの削減に取り組んでいく様子からは、特に地域への社会的責任を意識する姿勢が感じられました。
ちなみにVAIOとしては、2023年度時点で50%の温室効果ガス削減(2018年度比)を方針として掲げているそうです。たくさんの自然に囲まれた場所で、その近くの田んぼからコツコツとプロジェクトを進める姿を知ると、私たちの行動も変わってくるのではないでしょうか。例えば今の生活の中で何が変えられて、何が変えられないのか。変えられない部分は、ほかの要素で置き換えられるのか。VAIOの取り組みから、何かヒントが得られるかもしれません。


執筆/フリーライター 黒川すい

アバター画像

WRITTEN BYSDGs MAGAZINE

カテゴリーの新着記事

新着記事

Page Top