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大都会・六本木で昔ながらの田植え体験!進化する屋上庭園の活用方法とは?

大都会・六本木で昔ながらの田植え体験!進化する屋上庭園の活用方法とは?

#SHOW CASE
  • 飢餓をゼロに
  • 陸の豊かさも守ろう

地上約45m都心に位置する六本木ヒルズの屋上庭園をご存知でしょうか。水田・菜園を備え、四季折々の樹木が生育する、日本の原風景を再現したこの場所は、通常だと非公開のエリアなのだそう。しかしながら、毎年初夏を迎える時期になると、水田を解放して田植えイベントが行われています。今年でなんと20回目となった本イベントには、今回も近隣居住者や六本木ヒルズのワーカーなど約160名が参加しました。なお、今までの累計参加者数は約2000名にのぼるほどです。普段、土いじりとはなかなか縁がない大都会・東京の六本木で味わえる伝統的な稲作体験とは?屋上庭園を有効活用しているこの取り組みをご紹介します。

近代的な森ビルを背に昔ながらの田植えを体験

2003年の六本木ヒルズ開業以来、開催されているこのイベント。コロナ禍に陥っても関係者のみで行うなど、大切に守られてきた行事です。田植えのほかにも、稲刈りや餅つきというように、季節に応じた活動が展開されています。こうした屋上庭園の活用は、緑化対策はもちろんのこと、食育、地産地消など様々な面で役立っていると言えるでしょう。

さて、今回用意されたお米の品種は、鳥取生まれの「星空舞(ほしぞらまい)」でした。地方文化を発信していくために、地方自治体とのコラボレーションにも力を入れているのだとか。この取り組みも今年で19回目と、長年に渡り続いているようです。この「星空舞」は2021年に続き二度目の登場です。自然の美しさが感じられるその名にちなんで、星形に苗を植えていきます。

ビルに囲まれ、意識しないとなかなか自然を感じられない東京。だからこそ、この庭園に着いた瞬間に鼻を抜ける力強い土や草の匂い、素足になって踏み入れるぬかるみの感触、水の心地よい冷たさ、手に持つ苗の鮮やかな緑色……そのどれもが新鮮に五感に響き渡ります。さらに耳に届くのは蛙の鳴き声。ほかにも小さな魚が田んぼですいすい泳いでいる様子などが確認でき、様々な生き物に出会える自然の面白さを体感できました。

自分たちで食べる食材の苗を植えて緑を増やすこと、水辺付近に暮らす生態系を見て知ること、これらを通して陸の豊かさを肌で学ぶことに繋がるのではないでしょうか。

街のコミュニティをつなぐ場づくりとしての意味

そして、このイベントは地域の人々と行うことで、地域活性化としての役割も大きく果たしていますよね。担当の森ビル タウンマネジメント事業部 栗原 豪平さんが、稲作体験を実施することへの思いを語りました。

「この庭園はもともと都心の再開発のために計画されました。日本の原風景を再現することがコンセプトとしてあったのですが、景観上の庭園として終わるのではなく、街のコミュニティをつなぐ場づくりとして運営していきたいと考え、このようなイベントに至っています。」
この答えの通り、参加者同士で交流が生まれていたのが印象的でした。会話の内容に耳を傾けると、田植えを実際にやってみて感じたこと、田んぼの隣に位置する池で見つけた生き物のことなど、自然を考えるきっかけになるようなことも多く、環境への意識と地域創生の密接な繋がりが窺えるようです。なお、屋上庭園の取り組みのほかにも、街をきれいにする清掃ボランティア活動や、けやき坂にある花壇の手入れなどを地域の人々と協力して行っているそう。自分が暮らす街に関心をもち、より良くしていこうと思えるきっかけが、たくさん散りばめられています。

経験を思い出すたびに意識が変わる

今回行われた田植えをはじめ、これからも季節に応じて様々な体験が楽しめる、六本木ヒルズでの稲作。これから先にまだまだ体験があることで、たとえば「今あの苗はどうなっているのかな」「収穫が待ち遠しいな」と、この日の経験に思いを馳せることもきっとあるでしょう。そのたびに五感で味わった自然の豊かさ・面白さが蘇り、普段の生活から環境を守りたいという気持ちが芽生えるかもしれません。
また、このイベントの終了後は、300g入りの「星空舞」がお土産として1人ずつ配られました。もちろん今回植えたものの収穫はもう少し先になりますが、実際に同じ品種のお米をいただくことで、より体験の記憶が鮮やかに色づきそう。日本で暮らしていると、飢餓に直面する不安を感じる場面自体は少ないかと思います。しかし実際は、他国からの輸入に頼っている面も大きいです。自分たちで作ったものを、自分たちで食べる。何気ないことかもしれませんが、食事の尊さやありがたみを改めて実感できる機会になりそうですね。
インターネットで調べたり、本を読んだりして環境問題を考えることも有効ですが、六本木ヒルズの体験型学習のような形も今後増やしていくことが必要ではないでしょうか。


執筆/フリーライター 黒川すい

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