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東西の電鉄会社が協働運行するラッピング列車で全国的なSDGsの認知度向上を後押し


この記事に該当する目標
7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 17 パートナーシップで目標を達成しよう
東西の電鉄会社が協働運行するラッピング列車で全国的なSDGsの認知度向上を後押し

持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」をリスナーとともに学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』の第6弾が9月21日に放送された。女優、剛力彩芽さんが聴取者とSDGsを学ぶ同番組。SDGs研究の第一人者として「ミスターSDGs」の愛称も持つ慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授をゲストに迎えた今回の放送では、まずSDGs推進につながる電鉄会社の取り組みが紹介された。

2020年3月に始まり、月1回のペースで放送されている番組は早くも6回目を迎えた。毎回、時間や曜日を定めない特別番組としての放送の形に「フリーアドレス、ノマドワーカーみたいな番組ですね。それはそれでカッコいい(笑)。それに、いろいろな人に聞いていただけるんじゃないかという期待もあります」と剛力さん。さらに、剛力さんはペットボトルの使用削減のため、ストロー付きのタンブラーを購入するなど、SDGsにつながる取り組みを始めていることも明かした。

そんな番組で、最初に紹介されたのがSDGs達成に向けたメッセージを発信するラッピング電車「SDGsトレイン2020」の運行が始まったとのニュース。阪急阪神ホールディングス株式会社と東急グループが、国や自治体・企業・市民団体等と連携して9月8日からスタートさせたもので、阪急電鉄・阪神電気鉄道・東急電鉄の最新の省エネ車両を使用し、走行にかかる電力を全て再生可能エネルギーとするなど、電車を通じて多くの人がSDGsを意識できる取り組みとなっている。

もともと阪急阪神HDは「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」としてSDGsへの取り組みを進めており、昨年5月には先立ってSDGsトレイン『未来のゆめ・まち号』を運行していた実績があった。この取り組みに、鉄道事業を基盤とした「持続的なまちづくり」を通じて社会課題の解決と事業成長の両立に取り組んできた東急グループが新たに加わり、ラッピング列車『美しい時代へ号』の運行を開始することになった。

ここで剛力さんが切り出したのは「再生可能エネルギーとは?」という素朴な疑問。番組に3度目の出演となった「ミスターSDGs」こと蟹江教授は、太陽光や風力など自然の力を利用したエネルギーを表していることを説明した上で「東西の電鉄会社が一緒に取り組むというのも、あまり聞かないことがないですし、それがSDGsでつながっているというのは楽しいことだなと思います」と続けた。共通テーマを掲げたラッピング列車を東西の同業他社が協働運行するのは確かに異例で、全国的なSDGsの認知度向上へ大きな後押しとなる取り組みといえる。

「輪が広がっていく。こういう電車乗れば、SDGsへの意識が高まる気がします」という剛力さんに、蟹江教授は「そうですね」と呼応、さらに「電車の外側だけではなく、電車内の広告にもSDGsの目標や小ネタが書いてあり、乗っている人が見ながら楽めるんです。実は、私もこの発表会に招待していただいたのですが、電車に乗るのは中高大学生ら若者も多いので、若者のアイデアを活かしていこうということで、うちの学生も吊り広告のポスターを描いたりとかする予定になっているんです。彼らはSNSを通じて発信するのもうまいので、それでどんどん広げていこうという考えもあります」と舞台裏や今後の展望を明かした。

電車は東急では東横・田園都市・世田谷の各線で運行。阪急では神戸・宝塚・京都の各線、阪神では本線となんば線を走る。「慶応大は東急線沿線にキャンパスがあり、駅と大学で一体となって何かできないかという話もあります」と蟹江教授。

東急沿線上には武蔵小杉駅近くに本拠地を置くバスケットボールB1川崎ブレイブサンダースなど、プロスポーツチームの拠点も多く「乗っているときは電車で、降りたときはスポーツでSDGsを感じてもらおうと一緒になって考えたりとかしています」と、“ラッピング列車”にとどまらず、さらに大きく広がっていく可能性にも言及。「学生は、すごくいろいろなアイデアを持っていて、どこまで実現できるかは分かりませんが、いろいろな方が参加する企画も考えていきたいなと思います」と期待は膨らむ。

また、こうした再生可能エネルギーを使った電車の運行は、社会への啓蒙の意味合いだけでなく、それ自体がSDGsの掲げる17の目標、169のターゲットにつながっていくものともいえる。

7番目の目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」には「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」とのターゲットが2番目に具体的に記されている。 目標13には「気候変動に具体的な対策を」が掲げられ、温室効果ガスの排出を原因とする地球温暖化現象が招く世界各地での気候変動やその影響を軽減することが求められている。

蟹江 「温暖化って、森林の減少であったり、山火事との関係が指摘されたりとか、いろいろなところに波及するんですね。今年の夏は酷暑のため、不要不急の外出を控えて冷房を付けることが推奨されましたが、冷房は命を守るには大事なことですが、実は冷房を付けると多くの家庭は温暖化ガスを発生させる電力を使っているので、今の命は守れるのだけど、温暖化はヒートアップさせてしまうという側面もあります。それを起こさないためには、再生可能エネルギーを使ったり、太陽光パネルを設置したりとか、そこまで考える必要が出てきているのではないかなと思います」

ただ、蟹江教授は「少しずつ」取り組んでいくことの重要性も強調した。

蟹江 「ペットボトルの問題もそうですよね。水分補給によって暑さから今の命を守れる一方で、それが未来に対して負担になってしまう。剛力さんが冒頭でおっしゃっていたように、マイボトルを持ち歩くのも一つの方法です。例えば、それを今日忘れても、明日持っていけば、半分は削減できます。そのくらいの気持ちで、あまりプレッシャーをかけず、少しずつやっていくことが大事だと思うんです。トレインの例もそうです。やっていれば、また次が見えてくるということですね」

持続可能な未来をつくるのは、日々の心掛け。「SDGsトレイン」という毎日の通勤通学で利用する電鉄会社の取り組みは、まさにそのきっかけになるものの一つと言えそうだ。