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文部科学省・広報戦略アドバイザー西川さんに聞く「教育と科学」のSDGs

文部科学省・広報戦略アドバイザー西川さんに聞く「教育と科学」のSDGs

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持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」をリスナーとともに学ぶニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』の第6弾が放送され、文部科学省・広報戦略アドバイザーの西川朋子さんが有識者ゲストとして出演。文科省のSDGsに対する取り組みを女優、剛力彩芽さんが、SDGs研究の第一人者として「ミスターSDGs」の愛称も持つ慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の蟹江憲史教授とともに聞いた。

今回の番組は「SDGs MAGAZINE」としては初めて深夜帯の放送となったため、剛力さんは「『若い世代のリスナーの方、学生の方も多いのでは?』ということで、教育現場でのSDGsについて、この方にお話を伺いたいと思います」と、文部科学省・広報戦略アドバイザーの西川さんを招き入れた。

広報戦略アドバイザーとは、西川さんによると「多岐にわたる文部科学省全般の広報施策を国民の方に分かりやすく伝えるためのアドバイシング」をする仕事で、「今回は教育の部分と科学技術の部分をお話しできれば」と切り出した。

西川 「教育の面では、恐らく皆さん聞いたことがないと思うのですが『ESD』というものがあります」

「ESD」とは「Education for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)」の略。環境、貧困、人権、平和といったさまざまな問題を抱える世界において、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動を指す。つまり、持続可能な社会をつくる担い手を育む教育が「ESD」というわけだ。

西川 「これはSDGsが始まる前から教育の中では取り組まれているテーマで、日本ユネスコ国内委員会(ユネスコ憲章に定められている国内協力団体として、日本における官民一体のユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査を行っている文科省の特別機関)を通じて全国の小中高校で取り組んでいるものです」

その中で重要な役割を果たしているのが「ユネスコスクール」。ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校のことで、文科省及び日本ユネスコ国内委員会は、このユネスコスクールを「ESD」の推進拠点として位置付けている。

西川 「『ユネスコスクール』に加盟した学校では『持続可能な世の中ってどういうものなんだろう』ということをワークショップや地域のコミュニティーと協働して一緒に学んだりとか、時にはワールドピースゲーム(1978年米国の小学校教師だったジョン・ハンター氏が考案した世界の課題解決型シミュレーションゲーム)を使ってみたりだとか、いろいろなものを通じて『国際的にみんなで仲良く共同しながら持続可能な世の中をつくっていきましょうね』ということを学ぶ教育を推進しています」

ユネスコは第二次世界大戦後に「二度と戦争を繰り返さないように」との願いを込めたつくられた国際連合の専門機関。その理念を表すユネスコ憲章には「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と記されている。文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育は、人間の尊厳に欠くことのできないものということだ。

西川 「そうした持続可能な開発のための教育をする学校のことを『ユネスコスクール』といっています。世界に1万1000校ほど、日本だけで1100校以上あり、日本は世界でも一番多いんです。いい形で広がっているかなとは思います」

蟹江 「SDGsを教育でやる人が、その前にESDに取り組んでいたというのは、よく聞く話ですね。教育の分野って、すごく持続可能性の話が進んでいるんです。教育の専門家は、SDGsのことに詳しかったりしますね」
西川 「文科省では、学習指導要領の中にも持続可能な開発のための教育をしっかりやっていきましょうと謳っています。ですので、全ての学校の先生が意識して取り組んでいるものなのではないかと思います」

続いて、西川さんが説明したのが「科学技術」の面でのSDGsに関連する文科省の取り組みだ。それが「STI for SDGs」で「STI」とはサイエンス、テクノロジー、イノベーションの頭文字。「科学技術イノベーションでSDGsを達成していこうよということです。日本って本当にいい技術をたくさん持っているのですが、研究室、研究機関、政府、民間企業、NPOなどがばらばらに取り組んでしまうと無駄があったりする。それを、しっかり文科省が横串でつないでいきましょうというのが第一にありつつ、特に大事なものに関しては予算を取り、重要なプロジェクトにしていこうということもやっています」

蟹江 「STIって、わりと日本が世界に出そうとしている分野でもあって、国連のSDGsの会議でも5月くらいにSTIの会議があるのですが、そこは外務省も力を入れています。いろいろな取り組みが世界に向けて発信されていくようになっていますね」

西川 「例えば地球の温暖化などは一つの国が頑張っても達成できないので、衛星を打ち上げてデータを取ったりだとか、宇宙技術も生かしたりながら、取り組みをしています」

また、西川さんは2013年10月にスタートした文部科学省の官民協働キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」という海外留学を支援するプロジェクトのメンバーとして広報活動も担っている。返済不要の奨学金や事前事後研修など支援の仕組みにより、意欲ある学生の海外チャレンジを応援するもので、グローバルな人材の育成に大きな役割を果たしている。ただ、「今のコロナ禍で簡単に留学しようとは言えない状況」となり、新たに高校生がSDGsに関連する5つのテーマの探究学習をすることで得られる気づきや学びを発信するプロジェクト「#せかい部×SDGs探究」を開始することになった。

いつもの場所から越境体験! 高校生レポーター100人らがSDGsを発信する文科省主催の「#せかい部xSDGs探究」とは?
https://sdgsmagazine.jp/2020/09/09/481/

「若い人にもっと海外に行って学んでもらおうと、高校生だったら自分もぜひ応募したいと思うプロジェクトとして『トビタテ!留学JAPAN』に携わってきましたが、今年は海外に行けません。そこで社会課題、SDGsに貢献したいという子たちをまず育てて、自分が興味のあるテーマを探求することで、いつかコロナが落ち着いたら海外でさらに深めようと思ってもらいたいなと思い、今回の企画を考えました」

5つのテーマとは「貧困の解消」「ジェンダー平等の実現」「住み続けられるまちづくり」「気候変動への対応」「生物多様性の保全」。高校生にも身近なこの5つの社会課題からメインテーマを選び、レポーターに応募。 選出された100人高校生レポーターと先生レポーター5人は、各課題の専門家とオンラインで出会い、グローバルな視点でそれぞれの課題を探究できるという“バーチャル越境体験”ともいえる取り組みだ。

9月28日までレポーターを公式サイト(https://tobitate.mext.go.jp/sekaibu-SDGs/)で公募。学んだことや感じたことを自分のSNSなどで「#せかい部sdgs」のハッシュタグをつけて発信・レポートし、各テーマ1人、計5人がベストレポーターとして表彰を受ける。YouTuber・クリエイターとして若い世代に人気のkemioさんにイベントで学びの成果を話す権利も提供される予定だ。

西川 「あるアンケートの結果によると、高校生が一番興味を持っているSDGsのテーマが『ジェンダー平等の実現』ということなのですが、そのテーマのナビゲーターとして元総務相の野田聖子さんや女性の首相が誕生したニュージーランドの大使館の方も参加します。『トビタテ!留学JAPAN』は、ただアカデミックなものではなく、日本を元気にしていこうというプロジェクトで、熱意、独自性、好奇心のみを重視し、英語力、学校の成績とかは一切不問です。目的意識を持って、独自性を持って取り組むことで、これからの課題だらけの世の中でも、たくましくチャレンジしていく人材と育てたいという思いでやっています」

最後に西川さんは、SDGsがゴールに定める2030年を見据え、こう言葉に力を込めた。
「2020年は東京五輪が開催されて・・・と思っていたら、コロナの影響で大きく変わったように、私たちが今思い描いている2030年は、もしかしたら全然違うものになっているかもしれません。そんな中でも確実に言えるのが、いろいろな人と常に前向きに情報交換をして、協働していくことの大事さです。分断の時代と言われますが、世界と、みんなといいディスカッションをして、課題解決していくような若者を育てることがすごく大事なことなのかなと思っています」

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