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剛力彩芽と学ぶジェンダー平等とSDGs「“森喜朗発言”から紐解く日本のジェンダー問題」

剛力彩芽と学ぶジェンダー平等とSDGs「“森喜朗発言”から紐解く日本のジェンダー問題」

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  • ジェンダー平等を実現しよう

持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」を学べるニッポン放送の特別番組『SDGs MAGAZINE』。2021年3月5日に放送された第12回はSDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」がテーマとなった。社会学者の上野千鶴子さんをゲストに迎え、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言など具体例を交えて、女優の剛力彩芽さん、“ミスターSDGs”こと慶応大学大学院の蟹江憲史教授とともに日本のジェンダー問題に切り込んでもらった。

昨今の日本におけるジェンダー問題として、避けては通れないのが“森喜朗発言”の問題だろう。「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」「(組織委員会の女性理事らは発言が短く)わきまえておられる」――。そんな女性を固定観念に縛る発言に抗議の声が止まらず、森前会長は辞任する結果となった。

改めて浮き彫りになったのは、日本社会や組織のジェンダー不平等だ。この現状を踏まえ、今回招かれたのが社会学者、東京大学名誉教授で女性学、ジェンダー研究を専門とする上野さん。4月からは女性をつなぐポータルサイト・認定 NPO 法人 「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)」の理事長に就任し、著書『近代家族の成立と終焉』でサントリー学芸賞を受賞するなど、この分野におけるパイオニアの一人だ。

剛力 「3月8日の国際女性デーを踏まえて、改めて昨今の日本のジェンダー問題からお話しできたらと思うのですが」

上野 「“森発言”を無視するわけにはいかないでしょう。大問題になりましたよね。ああいうおじさんが繰り返し出てくるのが問題なのですが、多くの女性はこれまで、ああいう発言が出たら見たくない、聞きたくない、またかという無力感に陥ってきました。ただ、今回は見逃せない動きがありました。恐らく、最初の頃は森会長ご本人も周囲も、もうちょっと甘く見ておられた、幕引きが簡単にできると思っておられたと思います。周りの方々は慰留までされていたし、ご本人もそのつもりで、謝ればすむだろうと思っておられたと思います。しかし、内外の世論が彼を辞任に追い込んだ。女の人の力だと思います。今回、オンラインアクティビズムで女の人の怒りが本当にすそ野に広がった。“わきまえない女”というハッシュタグが出ましたよね。女性が男性の集団の中に入っていって、頭数だけそろっても、“わきまえる女”ばかりだったら何も変わらない。ですから、私が今回変わったなと思ったのが、森さん個人の問題じゃない、組織委だけの問題じゃない、スポーツ界だけの問題じゃない、自分の足元にもあるじゃないかという女性の怒りの広がり方が大きかったことです」

そこで上野さんが続けたのが、SDGsにおけるジェンダー平等の位置付け。蟹江教授に対して「SDGsが定める17のゴールは、どれもが素晴らしいと思うのですが、あまりに総花的(関係者全部にまんべんなく恩恵を与えること)で批判のしようもないという感じもするんです。その中でジェンダー平等の優先順位ってすごく低いって思うのですが、どう思いますか」と尋ねた。

蟹江 「SDGsをつくった側にとって17のゴール、それぞれの優先順位は同じだと思うんですけど、ジェンダー平等のところは女性のことしか書いていないというのがありますね。本当はジェンダーですので、それ以外のもっと多様性を認める話があっても良いと思うんですけど、まず女性の話に集中せざるを得ないほど女性の地位が低い。そういう意味でちょっと物足りないところがあるのかなと思います」

上野 「企業の方たちはSDGsのバッジを付けていらっしゃいますが、ジェンダーについては優先順位が低い。男女平等も達成していないのに、ダイバーシティーなどと言って誤魔化してもらっちゃ困るよねという気持ちがすごくあります」

蟹江 「SDGsもそういう意味を込めて、ジェンダー平等の中に女性の問題を中心に入れているということだと思うんです。確かに、日本の中で取り上げられる割合は弱いなというのはおっしゃる通りだと思います」

上野 「何でジェンダー平等を達成しなきゃいけないのかというところに理解が届いていないんじゃないんじゃないですか」

蟹江 「SDGsには本来あるべき姿というのが17個並んでいて、常識的なことしか書かれていません。だけど、その常識的なことが分かっていないので、世界にこれだけの問題がある。その典型がこのジェンダーであり、女性の問題であるということだと思います」

上野 「今回の“森発言”で日本の常識は世界の非常識ということを世界に暴露しましたね」

蟹江 「そうですね」

そんな状況を踏まえ、紹介されたのが日本の「ジェンダー・ギャップ指数」について。「ジェンダー・ギャップ指数」とは、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータから各国における男女格差を測るもので、世界経済フォーラムが2019年12月に公表した「Global Gender Gap Report 2020」では日本の総合スコアは0.652(0が完全不平等、1が完全平等)、順位は153カ国中121位(前回は149カ国中110位)だった。剛力さんは「これだけ叫ばれている中、なぜ順位が後退しているのでしょうか」と疑問を投げかけた。

上野 「日本の状況がどんどん悪くなっているわけではないんです。変化がなさすぎる。他の諸国が男女平等に対していろいろな努力をして、変化をしてきているのに、日本があまりに変化しない。夫婦別姓、選択制すら実現できないんです。どんどん取り残されている。このコロナ不況で恐らく、さらに順位が下がるのではないかという悲しい予測も出ています。(1979年に国連総会で採択された)女性差別撤廃条約を(日本は85年に)批准し、その中に夫婦別姓のことも出てくるのですが、それさえもやっていない。議論さえできないのが現状です。『剛力』って素晴らしい、珍しい名前ですが、結婚で変わるのは嫌でしょ」

剛力 「嫌ですね。でも、現状だと婿養子などの形になってしまう・・・」

上野 「新戸籍にするというのもあるのですが、いずれにしても日本の女性は9割以上が夫の姓にする。それで、不利益を被っています。ただ、夫婦別姓は男女平等に反さないと最高裁が判決を出してしまいましたからね。どちらかにしろと強制はしていない・・・というのが理屈です」

剛力 「これは、どうしたら変えていけるんですか」

上野 「簡単です。夫婦別姓に反対している政治家の方たちを替えていただければいいんです。お名前を今挙げたいくらいです(笑)」

剛力 「選挙に、もっともっと意識を向けましょうということにもつながってくるわけですね」

蟹江 「SDGsを政府も推進すると言っているのですが、ジャパンSDGsアワード(日本政府が毎年開催するSDGsコンテスト)では、賞を渡す側が男ばかり、受ける側も男が多い。本当に、あれを見ていると酷い。この写真が世界に出れば、愕然とされるだろうなと思います」

上野 「菅内閣には女性の閣僚が2人だけしか入りませんでした。『2030』(03年に政府が掲げた「20年までに指導的地位の女性比率を30%に」との目標)といったのは政府ですよ。それを自分たちの政権がやっていないんです。実は、候補者男女均等法(国会や地方議会の選挙で、候補者の数をできるだけ男女で均等にするよう政党に努力を求めるもの。18年5月公布)というのができたのですが、直後にあった参院選で政権与党は全くそれを達成していません。理由は罰則がないからです。達成しなかったら政党助成金を削減するペナルティーでもつくればいいんですよ。助成金は私たちの税金ですからね」

剛力 「ジェンダー平等に関して、コロナ禍によって様々なことも変わってきている」

上野 「コロナの影響をいろいろな人が受けていますけれども、とりわけ失業した女性がすごく多い。しわ寄せは非正規労働者に来ています。非正規の女性の就労は、オンライン化できない対人サービス、コロナで打撃を受けた飲食業とか宿泊観光に集中している。しかも、そうした非正規の仕事についている人はシングルマザーが多い。日本の女の人はアメリカやEUより失業率が高くなっています」

剛力 「なんで、そういうことに・・・」

上野 「企業が安く雇用したいからです。別に非正規で一日に6時間だけ働きたいとか、それ自体は悪いことじゃないのですが、外国と日本の決定的な違いは、正規労働者と非正規労働者の賃金格差が大きすぎることです。どう考えても、机を並べて同じ仕事をやっているのに、賃金格差が生じる。そこに合理的理由はありません。雇用区分は身分差別というしかない。それが私たち研究者の共通の見解です。その身分差別の中に女という身分が入っているんです。それをどうすればいいのかといえば、同一労働同一賃金は実現してくれないといけない。あとは最低賃金を1500円にしてくれれば日本の労働者は平均2000時間働いているので、年収にして300万円になる。そうしたら食べていけますからね。でも、それをやってくれない」

蟹江 「そこの体質が変わらないと、世の中変わらないということですよね」

上野 「男女平等の進まない最大の理由に男女の賃金格差があるんです。格差が縮まらない背景には、基本的に女は男の脇役、職場でも家庭でも補助役をやっていればいい、女性の給料は家計補助でいい、夫に依存していたらいいという考え方が根っこにあるのだと思うんですが、今何が変わったかといえば非婚の人がこれだけ増えた。そして、離婚する人も増えた。非正規労働者の大きな問題は家計を自分で支えている女の人が増えことです。その人たちは低賃金で、シングルマザーだったら子供まで養わなければいけない。そうした人たちがコロナでダメージを受けて、その上子供が学校に行かなくなったら誰が世話するのか。二重、三重にしわ寄せがきています」

蟹江 「ジェンダーの問題って、いろいろなことに横断的に影響してくると思うんです。貧困の問題も、働き方の問題も。そういう意味ではコロナをきっかけに代わっていくチャンスもあるんじゃないかなと思うんです。例えば、テレワークが段々増えてきたり、働き方を少し変えていこうという動きが出てきたりとか。その辺りから現状を変える糸口がつかめそうな気もするのですが、その辺りはいかがですか」

上野 「確かに変化は起きているのですが、オンライン化できる仕事とできない仕事がありますし、オンライン化できない仕事をされている方々をエッセンシャルワーカーと呼んで、対人サービス業が多いのですが、コロナになったからと言ってエッセンシャルワーカーの労働条件が良くなるということは起きていないわけです」

剛力 「そうした変化に、政治のやっていることが合わなくなってくるのも間違いないですね」

上野 「おっしゃる通りです。現実の世界や世論の変化に政治が対応していない。でも、あの政治家を国会に送り込んでいるのは国民ですからね。そして、女性の政治家が増えていないのがジェンダー・ギャップ指数の理由の一つですが、何で女性の政治家が増えないのか。その理由は分かっています。女性の候補者が増えないからです。候補者が増えないから選択肢が増えない。なぜ女性の候補者が増えないのか。一人区制、小選挙区制にしたのが問題だとか、地域の利益代表はおじさんになりがちとかもありますが、もう一つの大きな理由に女性が立候補しようとしたときに家庭内抵抗勢力があるということもいわれています」

蟹江 「なるほど」

上野 「夫と親族が抵抗するんです。夫より妻が前に出ることに抵抗がある。女性候補者を増やすためのプロモーションをやっている私の友人がいるのですが、女性が立候補を決意する時、家族に相談しない、一人で決める、家族には事後通告する。それが秘訣だと言っていました。夫がやりたいことを妻は応援するのに、妻がやりたい事を応援するよと夫は言ってくれないんですかね」

蟹江 「ただ、それは世代によって変わってきているかなと思います」

上野 「男性の世代間格差は大きいと思います。“森発言”に共感できない男性の方はたくさんいるはずです。私はやはり、あの発言の際に周りの人が笑った、笑ったことで同調したというのが嫌なんです。ホモソーシャル(同性間の結びつきや関係性を意味する社会学の用語)な組織文化が、その場で再生産されるわけですよね。あの場で、誰かが『ちょっと待った』と、なぜ言ってくれないんだろう、と。残念だけれど、男の言うことを男はよく聞くんです。だからその場にいる男性が『ちょっと待った』と“イエローカード”を出してほしかった。男性に傍観者になってほしくないと本当に思います」

最後に剛力さんがSDGsの達成期限である2030年への思いやメッセージを求めると、上野さんはこう言葉に力を込めた。

「政府は『2030』を言いましたが、昨年30%は達成できませんでした。2030年には『3050』になってもらいたいです」

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