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ビジュアルから考える家事をする男性が少ない理由

ビジュアルから考える家事をする男性が少ない理由

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  • ジェンダー平等を実現しよう

先月3月8日の国際女性デーでは、女性の活躍や、女性の社会進出にまつわるメッセージを様々な企業が積極的に発信していました。『男性が外で働き、女性が家を守る…』という伝統的な性別役割意識が世界と比べて根強く残っているといわれる日本でも、男女の垣根がようやく少しずつ薄れてきています。理由としては、女性の社会進出が進んだ、という側面もありますが、男性が家事や育児に取り組むことが、以前と比べて珍しくなくなってきたということも要因のひとつとして考えられます。
「専業主夫」という言葉が生まれ、家事テクニックを紹介しながら家事初心者の男性MCたちが料理や洗濯にトライしてみる番組が放送されていることも。2010年には、子育てや家事に積極的に取り組む男性を指す「イクメン」が「ユーキャン新語・流行語大賞」トップテンに選ばれました。また、メディアや社会の風潮を見ても、男性が家事や育児に取り組む姿勢やシーンは、より自然なものとして描かれるようになってきています。

具体的に「家庭における男女の家事や育児の役割分担」の実態がどのようになっているのか、データを見ていきたいと思います。2021年9月に発表された東京都の調査では興味深い結果が出ています。「令和3年度 男性の家事・育児参画状況実態調査」によると、対象の都内在住の男女計5000人のうち、未就学児をもつ子育て世代の男女各1000人の「1日あたりの家事・育児時間(週平均)」を集計したところ、女性は8時間54分、男性が3時間34分でした。コロナ禍以前だった2019年の調査と比較すると、女性は20分増加した一方で、男性は1分しか増えなかったのです。男女の差は5時間20分となり、2019年の前回調査(5時間1分)と比較して19分も拡大しています。

コロナ禍で在宅時間が長くなり家事の総量が増えても、男性の家事時間が変わっていない、というこの調査結果から、男性は仕事が忙しいから家事や育児ができないというより、時間ができたとしても必ずしも積極的に家事に取り組むとは限ら ないようです。 そもそも、家事にかかる時間の男女の差が5時間20分もあるというのもかなり驚きです。
2020年度の男性の育児休業の取得率は初めて1割を超え、ようやく過去最高の12.65%(「雇用均等基本調査」2021年7月 厚生労働省発表)を記録しました。男性が育児や家事に参加しやすくなる法律や制度設計を進めていくことも重要ですが、社会全体として、男性の家事や育児参画に向けた抜本的な意識改革が必要です。

ビジュアルから考える、家事をする男性が少ない理由

企業のマーケターなどにビジュアルコンテンツ(静止画・動画)を提供している、世界最大級のストックフォトサービスiStockでの画像ダウンロード傾向を見ると、日本では「子育てをしている」ビジュアルのうち、女性が登場するビジュアルは男性が登場するビジュアルより 2倍も多く選ばれていることが分かっています。 同様のデータで範囲を世界に広げてみると、女性のビジュアルは男性よりも1.36倍多く選ばれており、日本は世界的な水準と比較しても「子育て=女性」というステレオタイプがまだ強い傾向にあることがわかります。“男性の家庭進出”が進みにくい理由の一つとして、普段私たちが目にする企業の広告ビジュアルが影響していることも考えられるのではないでしょうか?

広告ビジュアルが無意識の偏見につながる可能性

女性のビジュアルは、家庭と職場両方で、ケアやサービスの役割に重きを置いて描かれていることも多くなっており、以下のような、シーン別の人気ビジュアルを見ると、女性が男性よりも多く登場していることが分かります。

・「家事」―男性より女性の方が112%多い。 
・「掃除」―男性より女性の方が129%多い。
・「在宅勤務と子育て」―男性より女性の方が51%多い。
・「ホームスクーリング」―男性より女性の方が131%多い。
・「サービス業」―男性より女性の方が123%多い。

<ステレオタイプなビジュアルの例>

1148659689,d3sign,GettyImages

このような家庭や職場でのジェンダーステレオタイプは、広告など日々目にするビジュアルから知らず知らずのうちに影響を受け 、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を形成してしまっている可能性もあるのです。男性が家事や育児に参加する姿がもっと当たり前になる世の中にしていくためには 、人々が目にするビジュアルを選ぶ側(企業や事業主)の意識を、まずは変えていく必要があるのかもしれません 。

ビジュアルにおいて女性を描く際のチェックポイント

iStockでは、「Visual GPS」に裏付けられた市場のニーズやトレンドをもとに、企業が多角的な視点を持ち、様々な文化や背景を理解して発信していくために、女性を描く際のチェックポイントをまとめています。

・あらゆるジェンダーアイデンティティの女性を検討したか。
・あらゆるボディサイズの女性を活き活きと表現できているか。
・男性と女性を描く際に、それぞれの役割に偏見がないか。
・障害のある女性が社会で活躍している様子を表現できているか。
・40歳以上の女性を活き活きと表現できているか。
・デジタル加工をしていないリアルなビジュアルかどうか。

iStockのチェックポイントに照らして、身の回りの広告ビジュアルに注目してみてください。例えば、若くて華奢で可愛らしい女性ばかりが並んでいるものや、いわゆる「良妻賢母」を連想させるシーンなど、偏って描かれた女性のイメージへの違和感に気づくかもしれません。ひとりひとりが意識していくことが重要です。
日々の小さな発見の積み重ねから、 自分がアンコンシャスバイアスやステレオタイプを持っていたことに気づくきっかけを作れるのではないでしょうか。
また、女性の社会進出はもちろん、“男性の家庭進出”について、ビジュアルという観点からも考えてみることで、 社会で活躍する女性の姿と同じくらい、家事や育児に取り組む男性の姿がより自然に、かつ身近な存在となる世の中にしていきたいですね。

ライター:水谷優里佳
サムネイル:1216522631,d3sign,GettyImages

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