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体外受精で生まれた子どもは11人に一人。お金のことで諦める必要はない?

体外受精で生まれた子どもは11人に一人。お金のことで諦める必要はない?

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少子化が叫ばれるようになってからだいぶ月日が経ちますが、実際にどのくらい少なくなってしまったのでしょうか。第二次ベビーブームと言われる1970年代前半は年間の出生数が200万人を超えていました。しかし、2022年では80万人を下回り、7年連続減少しています。こうしたなか、国内で2021年に行われた体外受精によって生まれた子どもは、前年より9416人多い6万9797人で11・6人に1人となり、過去最多となったことが日本産科婦人科学会の調査で分かったことが報じられました。今回は、いま選ばれている体外受精についてSDGsの観点で考えていきましょう。

どうして体外受精をする人が増えているの?

体外受精を行う人が増えている理由としては、ひとえに、体外受精による不妊治療が2022年4月から公的医療保険の対象となり、経済的負担の軽減されたことが大きいと言えます。高額な医療費がかかる不妊治療ですが、どのようなものなのでしょうか。まずは、不妊を引き起こしている原因を調べる検査をします。原因となる身体的な疾患が分かるとそれに応じて治療を行うのですが、中には明らかな疾患が特定できないものもあります。その場合は、一般不妊治療といわれるタイミング法、人工授精、生殖補助医療といわれる体外受精、顕微授精、射精が困難な男性不妊の手術を試していくのですが、これらはこれまで保険適用外となっていました。このため、不妊治療を諦める人も多かったのです。

保険適用になった体外受精!具体的な範囲と注意点は?

少しでも多くの人に性と生殖に関する保健サービスを受けてもらえるようにハードルが下がった体外受精ですが、どのようなものが対象になるのでしょうか。具体的には、採卵・採精→体外受精・顕微授精→受精卵・胚培養→胚凍結保存→胚移植までの一連の流れがすべて保険内(クリニックによっては保険適用外になる可能性もあるため、詳細についてはクリニックにお聞きください)でできるようになりました。ただし、これにはいくつかの制限があります。治療開始時に女性の年齢が43歳未満であること。回数制限としては、初めての治療開始時に女性の年齢が40歳未満の場合、通算6回まで(1子ごと)、40歳以上は通算3回まで(1子ごと)となります。そのため計画的に進めていくことが必要です。

体外受精はいくらかかる?保険適用ではどのくらい安くなる?

実際に体外受精をすると予算はどのくらい必要なのでしょうか。とあるクリニックを例にみてみましょう。保険を使わずに自費で行った場合は、診察、薬、検査代など含めて約72万円がかかっていたところ、上記の内容と全く同じ内容を保険適用で行うと、約20万円になるそうです。50万円もお得になるので、かなり経済的にも負担が軽減されることが分かります。また、治療が高額になってくる場合に使える「高額療養費制度」を利用することも可能。所得によって上限が変わりますが、年収約370〜770万円の場合だと1か月あたりの上限目安は約87,000円。それ以上は支払わなくていいことになります。また、2年以内であれば過去の分も払い戻しを受けることができます。この制度を活用すれば、高額なために体外受精ができなかった夫婦も挑戦しやすくなったといえるでしょう。

体外受精で仕事を休む必要がある?職場の対応は?

治療法によっても違いはありますが、通常、体外受精の治療では最低でも採卵の日と胚移植をする日の2日間は病院に通う必要があり、この日は仕事を休む必要があります。また、排卵誘発をする過程で卵巣やホルモンへの刺激が強くなり、安静にしていなければならない場合もあるそうです。2017年の厚生労働省のデータでは、不妊治療を行っている従業員を対象とした取組を実施していない企業は全体の80%でした。多くの企業が不妊治療に対して配慮ができていない状況だったのです。これを受けて2022年4月厚生労働省は、不妊治療のために利用可能な休暇制度・両立支援制度を導入した企業に対し、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)を設置しました。これにより、休暇制度、短時間勤務、フレックスタイム、テレワークなどの柔軟な働きかたが不妊治療を受ける人に対して提供されることが期待されています。こうした取組をする中小企業が増えていけば、さらにハードルが下がり、不妊治療をしていることが当たり前な世の中になっていきそうですね。

日本産科婦人科学会調査によると、ART(体外受精や顕微授精)にかかる週数が最も長い年齢が、39歳で次いで、41歳、42歳となっています。このように年齢によって治療期間が長くなる場合にも、費用や治療法が一般的になることで心理的に受診しやすい環境がこれからさらに整っていくことでしょう。日本では、「3.すべての人に健康と福祉を」というゴールの中に、「2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする」とターゲットが設定されています。これを現実のものにするためにもこうした情報を多くの人に届けられると嬉しいです。

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