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漫画で考える「死」そしてSDGsとの関係性。END展~死から問うあなたの人生の物語~に行ってみた

漫画で考える「死」そしてSDGsとの関係性。END展~死から問うあなたの人生の物語~に行ってみた

#EVENTS & SEMINARS #TREND
  • すべての人に健康と福祉を
  • 気候変動に具体的な対策を

5月某日、写真と共に投稿された1つのツイートが話題になりました。「自分の愛する存在の遺体を食べられますか」。一見ショッキングな内容が、なぜここまでに反響が大きかったのでしょうか。日本における社会問題の一つに、15~39歳という若い世代の自殺が挙げられます。この世代の死因として自殺が第一位となっているのは、先進国の中では日本のみ。加えて、最近目立つのが著名人の自殺報道です。経済・医療・教育、全てが水準を満たす国でなぜ死を選ぶことになったのか。非日常のようで日常であり、想像できそうで想像できない、「死」にSDGsの観点も踏まえて向き合ってみましょう。早速、ヒントを探るべく投稿の元となったEND展に行ってみました。

予約時点で感じる非日常

入場は無料ですが、事前予約が必要ということで前日に予約。続いて意味深な質問。お墓に入りたいか、その時は誰と入りたいか、など入力する数分の間に普段考えることの無い「死」というものを意識させる、まるで展示会までの心の下準備のような感覚。この時点で既にEND展の世界観にいざなわれるような演出にどきどきします。いよいよ当日。開催地である二子玉川駅はEND展の広告で埋め尽くされています。ポスターやサイネージにはフクロウがこちらを見つめるキービジュアルと緑一色に染まり異様な空間に。夜になるとライティングも相まって、一層雰囲気が出ていました。会場は駅から徒歩3分程度で見えてくる、蔦屋家電の前に佇む無機質なホール。

4ブースで表現するENDとは

改めて概要を確認すると、死をテーマに「マンガから始まる、大切な人と対話がしたくなる展覧会」。ブースは大きく以下の4つに分かれています。
1、魂のゆくえ
2、終わりの選び方
3、死者とわたし
4、老いること、生きること
もしかして「四(シ)=死」と関連しているのでは、と訪れた人の好奇心をそそります。各ブースごとに主な出展作品を簡単にご紹介します。

1、魂のゆくえ 「天才バカボン」赤塚不二夫

ある日、バカボンが占い師に命日を宣告されてしまいます。バカボンはそれまでは何をしても死なないと思い、あらゆる危険な行動に出ます。しかし実は占い師が日にちを間違えておりバカボンはあっけなく死んでしまうのです。死というものの不明瞭かつ不条理さを伝え、そして死は怖いものという凝り固まった私たちの思考を「これでいいのだ」とギャグ漫画として死を笑に変える。死後の世界観が大きく変わる作品。

2、終わりの選び方 「ゴールデンカムイ」野田サトル

アイヌ民族にフォーカスされた漫画。アイヌは万物すべてに魂がこもるとされ人間を取り巻くあらゆるもの(動物、樹木、石など)を「カムイ=神」として敬います。しかし、カムイとは環境なのではないか。死して地球環境となる動物や樹木、そして人間はどうか。人間のあり方や死に方を問われる描写が印象的な作品。

3、死者とわたし 「釣りキチ三平」矢口高雄

三平の師匠であり祖父、釣り竿職人の一平。親のいない三平の親として登場する一平の死は作中で200ページに及ぶ。その中での葬儀の様子は「釣友葬」というオリジナルの描写で参列者は皆いつもの釣りの装いで、竿を持って参列。故人がどんな人だったか、どんな葬儀を望んでいるのか、残された人の気持ちと故人両者の想いが重なり、印象的なシーン。

4、老いること、生きること 「海が走るエンドロール」たらちねジョン

『この漫画がすごい2022』のオンナ編で1位を獲得し話題の作品。主人公のうみ子は65歳。夫と死別し、好きだった映画を見に行った時に出会った美大生に触発され65歳から映画監督を目指すセカンドライフストーリー。美大に通い、再起奮闘する姿は老いることの意味、そしてこれからの生き方を考えさせる作品。

END展に行ってみて

ネタバレにもなりますので、代表的な作品のみを抜粋しましたが、他にもたくさんの作品が取り上げられています。作品ごとに描写された多角的な「死」は、改めて今の自分、そして世界を考えるきっかけになりました。
日本では自殺、世界では戦争、そしてヘイトクライムによる銃殺。世界には様々な死の形があります。SDGsの根底には地球を保護すること、そしてその行動によってすべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけています。飢餓や汚染、そして暴力。不条理な死を防ぐことはSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」ターゲット1「妊産婦の死亡率を下げよう」ターゲット4「正しい生活習慣を促し、早すぎる死亡を食い止めよう」のほか、やSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」ターゲット1「自然災害に対する対応力と回復力を高めよう」と深く関わりがあることが分かります。
展示会を通して、死を漫画という親しみやすいツールを使うことで分かりやすく、そして身近に考えることができます。そしてEND展が死を通して伝えたかったことは生についてだと感じました。生きることと死ぬことは切り離せず、死を考えることで生きることを考える。題材とは反して、とてもポジティブな影響を受けました。6月8日(水)まで開催していますので、気になる方は是非行ってみてください。

開催概要
END展~死から問うあなたの人生の物語~

会期 2022年5月27日(金) – 6月8日(水)
会場 iTSCOM STUDIO & HALL 二子玉川ライズ
住所 東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズ
(二子玉川駅より徒歩3分)Google Map
開館時間 平日 11:00~20:00/土日祝 10:00〜20:00(最終日は17:00まで)
入場料 無料(事前予約制/ご入場にはWEBサービス「Hiraql(ヒラクル)」への登録が必要です)

writing黒川/editer井口

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