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人工中絶が禁止に?自由の国アメリカが抱える人権問題を文化的背景から考える

人工中絶が禁止に?自由の国アメリカが抱える人権問題を文化的背景から考える

#SHOW CASE

アメリカで人工妊娠中絶に関する論争が激化しているのをご存知でしょうか?
自由の国と称されるアメリカですが、今、女性の選択する権利を奪う法案が可決されようとしています。
事の発端は、5月2日にアメリカの連邦最高裁判所から、これまで合法だった人工中絶を禁止とする草案が流出したことがきっかけです。
この草案に対し最高裁は確定ではないというものの、流出した草案が本物であることを認め、アメリカの世論は大きく揺れ動いています。

条件があるものの選択肢として人工中絶がある日本人にとっては衝撃的かもしれませんが、アメリカでは人工中絶が禁止になるかもしれません。

理由はアメリカ国内の宗教的背景

アメリカに「国教」というものはありませんが、イギリスで迫害を受けていたプロテスタントが作った国であるということから、今でもキリスト教徒が過半数を占めています。
州によってもその割合は変わり、大統領選挙の際にはその割合によっても投票率が変わるため、アメリカの政治家は各州の宗教的思考を意識せざるを得ません。

日本では意識し難いかもしれませんが、キリスト教徒が作った国アメリカでは宗教的視点が政治でも重要な役割を果たします。
そのため国のトップに立つ人物の宗教的思考もかなり重要視されるのが今のアメリカの現状。
人工中絶の問題も宗教的背景が大きく関わっており、50年にも渡る間、容認派と反対派で国内を二分する論争になっています。反対派の多くは宗教保守派や福音派と言われる宗派の割合が高く、彼らの教えでは受精をした段階から生命として考えられているため、中絶を行うことは殺人と同等であるという主張があります。

現在、9人いる最高裁判事のうち保守派が6名、リベラル派は2名のみ。人工中絶が宗教的に殺人と同等であると考える宗派を有権者に持つ保守派の判事が多いため、一度は認められた女性の人工中絶の権利が覆される可能性が高いのではないかとアメリカメディアは報じています。

流出した草案の内容

1973年までアメリカ合衆国で違法とされていた人工中絶ですが、「ロー対ウェイド事件」判決をきっかけにアメリカ人女性も国内で人工妊娠中絶の治療を受ける権利を得ることができました。しかし、その結果に満足がいかない人々も多くいます。
流出した草案は、ミシシッピ州が妊娠15週以降の人工中絶を禁止したことが合憲かどうかを争う訴訟に関するものです。この法律が合憲とされると、実質的にミシシッピ州では人工中絶が禁止となり、また、強姦や近親相姦などの被害により妊娠した女性も例外ではないため、彼女たちを救う法律がなくなってしまいます。

すでに人工中絶禁止のテキサス州

この論争の渦中にいる州のひとつがテキサス州です。
テキサス州は約77%がキリスト教徒で、その中でも福音派が多数を占めています。
福音派が多いテキサス州では、2021年9月に「ハートビート法」と呼ばれる妊娠6週目以降の中絶を禁止する法律が施行されました。妊娠6週目とはほとんどのっ女性が妊娠に気づかない時期であり、レイプなどによる望まない妊娠の場合も例外ではありません。
また、中絶を行った医師や中絶をほう助した市民(中絶クリニックに女性を車で連れていってあげた人など)をテキサス州の市民が訴えることができる法律になっています。

中絶禁止がもたらす社会とは?

中絶に関する考え方は国や宗教により様々ですが、共通していえることは中絶は「女性の人生」にまつわる選択肢であるということ。
人工中絶という選択肢が女性にとってどのような存在であるのかを意識できるといいかもしれません。

様々な意見があり何が正解かを判断することは難しいですが、個人の生き方が尊重され、守られる社会ができるといいですね。

企画・ライター / マヤニコル
編集 / 内村

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