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「和食」はユネスコ無形文化財、茶道家岩本宗涼×「YOU IN」代表岡田泰輔が語る日本の食文化と今後の展望

「和食」はユネスコ無形文化財、茶道家岩本宗涼×「YOU IN」代表岡田泰輔が語る日本の食文化と今後の展望

#SHOW CASE

読者の皆さん、和食が無形文化遺産に登録されていることをご存じでしたか?
世界に誇れる日本文化の一つに「食」が挙げられます。日本は世界から見ても食を大切にしており、季節に合わせた旬の食べ物、行事に合わせた料理など昔から根付いた食文化があります。日本の地形や天候から自然に恵まれたこともあり、日本食は自然を尊重した「食」であると言えます。しかし近年、このような素材を生かした味付け、粗食の良さを感じることができない、いわゆる味覚の低下が指摘されています。例えば、国産と外国産の食材の味の違いが分からない。ダシなのか、顆粒ダシなのか判断できない。このように味覚の機微に気付けないのは、現代社会における生活や習慣の変化が起因しているのではないでしょうか。

今回の記事では、株式会社TeaRoom代表取締役で、若き茶道家としても世界中を飛び回る岩本宗涼さんと、新しいお茶の価値観を生み出し、提供する「YOU IN」代表の岡田泰輔さんの対談を実現。「お茶を飲む」という日常のワンシーンから、失われつつある日本の食文化と、個人にもたらす影響についてお話を伺いました。

「おいしさ」を感じなくなる可能性

冒頭で触れた、「おいしさ」を感じる機能を司るのが「味蕾」といわれる細胞の集まり。

味蕾は舌や内頬に存在し、甘味・苦味・塩味・酸味などを感知し、人間においしいという信号を送る働きをしています。人間が成長し食べられるものが増えると味蕾は刺激され、味を感じるセンサーが鍛えられていきます。そして反対に、現代社会において起きている現象が味蕾の退化による嗜好の低下です。なぜ、嗜好の低下が起きているのか、茶道家の岩本さんにお話を伺いました。

岩本さん:
『嗜好の低下の原因として挙げられるのが、核家族化、都市化、そしてコンビニ食の流通です。一つ目の、核家族化で日本におけるご近所付き合いは大きく変わりました。古き良きおすそ分けの文化や、各家族間での交流が減少したことで味のバリエーションを知る機会が減りましたよね。次に都市化も関係していると思います。都市で一人暮らししている人がふえていますよね。単身者では食に対するプライオリティが低下し、ついついサクッと済ませてしまいます。そこで重宝されるのが、コンビニです。おいしく、健康を気遣った食品が増えているとはいえ、バリエーションも限られているので「おいしさ」を感じるセンサーは鈍ってしまいます。』

嗜好度の低下の弊害
では、このように嗜好の低下により何が起きているのか。

岩本さん:
『例えば、コーヒーやお茶に含まれるカフェイン。渋みや苦味があり過剰摂取は毒と言われるものも人間は好んで摂取してきました。ビールなどの発酵食品に関しては腐敗と隣り合わせではありますが食文化の中で嗜好品として成立しました。しかし、近年の日本ではカフェインレスコーヒーがメニューに増えているように、カフェイン離れが進み、好んで飲む方が減っているように感じます。』

このお話を受け、調べたところAGFの調査によると、若者世代はカフェインの苦味が苦手で、嗜好というよりも眠気覚ましの刺激物として摂取する傾向が確認されています。
例えば、急須で入れるお茶にも同じことが言えます。実家に帰ると、朝食後やおやつの時間にお茶が出てくることがありました。お茶の文化は習慣の中で嗜好が育ち、それが日本の文化になっている良い例でしょう。しかし嗜好という感覚が消え、習慣が変わり、1つの文化が途絶えるとも言えるでしょう。

お茶のアップデートを狙う「YOU IN」

文化や伝統を守ること、毎日の生活を丁寧に送ることが個人の豊かさにも繋がっていることが分かってきたところで、もう一人のゲストをご紹介します。グノシーが手掛けるお茶のD2Cブランド「YOU IN」の事業責任者 岡田泰輔さんです。「お茶」という文化を継承していくため、岩本さんをアドバイザーとして、共に開発を行っています。

「YOU IN」は、気分に合わせてお茶を選ぶ“ムードペアリングティー”という新ジャンルのお茶です。仕事中や一息つきたい時、リラックスしたい夜など気分に合わせてお茶を楽しむ。新しいお茶のあり方を現代社会に提供します。開発にあたって当時のお話を岡田さんに伺いました。

岡田さん:
『ムードペアリングでお茶を開発するにあたり、まず皆さんの生活パターンを調査しましたね。現代の日本人のタイムラインというか、この時間は何をしているかというのを土日や平日、家族構成でも分けて調査して。最初は12パターンだったのですが、パターンが多すぎると分散してしまうのでニーズが最も集中するところで9パターンに絞りました。やってみて面白いのが売れ筋は「IPPUKU」「SLOW NIGHT」「LOVE YOUR BODY」なんです。ちょっと皆さん疲れているのかもしれませんね。ムードペアリングを通して、そうした心理市場を知れるのも面白いですし、消費者の方にも自分の気持ちへの気付きというか自覚してもらうきっかけを作れる。もっと「WAKI-AI-AI」のように明るいお茶も手に取ってもらえるように頑張ります。』と今だから言える苦労話を交えて語ってくれました。

お茶の歴史と課題

今、お茶は味ではなく気分から選ぶのが最新のお茶事情。
茶道家からみる、お茶のあり方の変化とこれからについても聞いてみました。

岩本さん:
『お茶が消費されてきた歴史としては、家庭で急須でお茶を淹れたり、お茶は無料で飲むものという感覚がある時代から、缶入りやペットボトルのお茶が普及する時代に変わり、そのあと、高価格帯のお茶や、「特茶」などの機能性に優れるもの、サステナブル要素のあるものなどが注目を集めるようになる、といった変化がありました。実はお茶って飲むシーンが固定されていないという課題があります。コーヒーなら朝起きて挽きたてを入れたり、ビールのように一杯目に、などもない。文化の継承のためにも「意識的にお茶を飲むシーンを固定するプレイヤー」が必要になってくると思うんですよね。
そこをターゲットに開発されたのがムードペアリングという観点。この気分の時はこのお茶を。という、新しいお茶のあり方を皆さんにも見つけてほしいです。』と「YOU IN」の可能性とこれからのお茶のあり方を語りました。

最後に対談を聞いていて「IPPUKU」「SLOW NIGHT」「LOVE YOUR BODY」が売れ筋ということで気になって調べてみました。

「IPPUKU」煎茶×アールグレイ 1,490円 ムード:休憩したい時に
森林浴をしているような安らぎを与える煎茶ベースのアールグレイティーです。ゆっくり一息つきたい時に。

「SLOW NIGHT」カモミール×アップル 1,490円 ムード:ゆったり過ごしたい夜に
カモミールのふわっとした優しい香りに、アップルのジューシーな甘味と酸味がマッチ。ゆったり読書などを楽しみたい夜に。

「LOVE YOUR BODY」ルイボス×ローズヒップ 1,490円 ムード:自分を愛したい時に
ローズヒップとルイボスティーを軽やかにブレンド。セルフメンテナンスの後など、あなたの身体を愛でたい時に。

こうして実際に見てみると、岡田さんが面白いと言っていた意味が分かります。商品のメッセージ性にも魅力を感じ、パッケージもかわいいのでついついムードのマッチングをしてしまいます。

SDGsには、世界遺産を守るという目標がありますが、続いてきた文化を守ることも重要なファクターなのではないかと、今回のお話を通じて改めて考えさせられました。
また、岩本さんが25歳、岡田さんは31歳と、伝統を継承する側の若いお二人が日本文化を守るために奮闘している姿に同世代として刺激を受けました。日本文化の継承、発展と言われると尻込みしてしまいますが、自分が興味を持ったことや好きな事なら生活に取り入れやすいですよね。

「YOU IN」の取り組むサステナブルについて
今回ご紹介した「YOU IN」はSDGsの取り組みとして、お茶農家と消費者両方に対し豊かで、持続可能な未来を目指しています。

以下、YOU INのホームページより抜粋
「YOU IN」は、サステナブルなブランドを目指しています。
初めから完璧にはいかなくても、できることから一歩ずつ、着実に。
素晴らしい大地の恵みと、産業に関わる人たちの人生が持続可能なものであるように、力を合わせて取り組んでいきたいと考えています。
①日本のお茶文化と農園を守るため、積極的に日本の茶園から原料を調達します。
②食品廃棄物による有機肥料を用いた茶葉の採用や、農薬管理された茶葉のみを使用します。
③使用している原料は、極力生産者から直接買い付けることでサプライチェーンにおけるコストを最大限減らし、その分良質な原料調達に充てています。
④リサイクル可能な資源や、FSC認証の取れた資源を活用していきます。

アフタートーク 『 知ってた?お茶の豆知識 』

お茶と砂糖は、古くから強い結びつきがありました。日本では砂糖が使われた和菓子と一緒にお茶を飲み、イギリスでは、砂糖はエネルギー源として、産業革命時代に労働者階級に砂糖入りの紅茶など甘い飲み物として親しまれ広まっていったと言われている。東南アジア諸国では今でもその歴史の名残がみられます。砂糖たっぷりの紅茶やコーヒーは文化だったんですね。
アフタヌーンティーの発祥であるイギリスでも、お茶の需要が上昇すると砂糖の需要も上昇したり、たくさんの砂糖が使われているお菓子と一緒にお茶が飲まれていました。
このように、一概にお茶といっても歴史を辿るとそれぞれの国によって文化があり、様々な飲み方をされている事がわかります。

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